過去を知る敵
ついに覚醒への第一歩踏み出します。
※10/15 修正
今にも放たれそうになった瞬間、山賊の頭の前に翔が現れる。
そして、美咲の近くにいた翔が消える。
残像だ。
なにやら順番に違和感があるが、残像が消える前に翔が現れたのだ。
それほどの速さ。
それを見て、魔術を放つのを一瞬ためらった敵。
そして、敵は聞く少年の呟き、死の宣告を。
「雷公」
翔の手に刀が現れる。
次の瞬間、翔の手がぶれたかと思うと敵は物言わぬ肉片と化した。
そして、自ら生み出した炎に焼かれ灰となった。
翔が刀を消すと同時に、その灰はどこからともなくあらわれた風に吹かれて飛んでいった。
反応できなかった美咲と千花は、実践が初めてではなかったが、いや、むしろ初めてではなかったからこそ、翔に戦慄を覚えた。
あの刃が自分たちに向いていたならば、気づかないうちに死んでいただろう。
と、翔に二人が目をやると、崩れ落ちていくところだった。
二人は駆け寄る。
「大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
と、聞く。
「敵は、どうしたの?」
と、意味わからないことをたずねてきた。
「あんたが倒したんでしょ。」
「いや、俺、戦い方覚えてないから戦えない。」
「覚えていないの?」
と、美咲は呟く。
「二人が危ないと思ったら、意識なくなって、戦いの最中にごめん。」
いきなり拍手が聞こえる。
「なかなか面白い余興でした。」
美咲と千花が、武器を構える。
現れたのは、黒いスーツを着た老紳士。
美咲は、驚いている。
「いくらこっちに気をとられていたからって、私が気づかないなんて。」
美咲は、戦う術をほとんど持ち合わせていないため、敵を避ける感覚が鋭いのだ。
美咲のことは、意に介さず男は言う。
「どうだね。初めて、人を切った感触は。もっとも、今の翔という人格でだがね。それより、さっきのは嘘だろう。」
と、一拍おいてから言う。
「君に意識がなかったというのは。」
翔は瞠目した。
それを、見た男は話を続ける。
「君は、気づいたんだろう。どうすれば、相手を倒せるか、効率よく殺せるかを。」
「あんたは誰だ。お前は、こいつの何を知っている。」
と、敵意全開に美咲が問う。
「失礼、レディが二人もいるのに名乗らないのは、紳士の恥でしたな。私の名は、血桜と申します。
以後、お見知りおきを。それと、質問の答えですか、それは翔の今までの過去すべてですな。細かいことは知りませんが。」
「……!」
名前を聞いた美咲の顔がさらに険しくなる。
過去を知っているという言葉に翔は驚愕する。
「特A級殺人ギルド『天の杯』。鮮血の紳士。」
「一部では、そうも呼ばれていますが、殺人ギルドとはひどいですな。天に送って差し上げているというのに。」
「戯言を……。失せろ。」
美咲が口調が変わるほど激昂している。
「いいでしょう。今回の目的は達成されましたから。」
血桜が何か呟くと煙が起こり、煙が消えたときにはいなくなっていた。
俺は、美咲が起こっている理由を聞けるほどちかしくはなく、尋ねられるほど愚かでもなく、無視してあげられるほど優しくもなかった。
ただでさえ、俺はさっき嘘をついていたのだから。
美咲が、理由について語るにせよ語らないにせよ。
この状況を変えるために話をするのは、俺や千花の役割ではない。
そして、美咲は、意を決したように言った。
王都へ向かいながら話すわ、と・・・。
毎回思わせぶりな感じで終わっています。
性格悪っ!とか言わないで、次を待ってください。
多分短いけど。
2011/10/15 特A警戒殺人ギルド→特A級殺人ギルド
2012/01/29 文章改正
次回は、美咲の過去です。多分