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神とともに歩む者  作者: mikibo
国外渡航編
70/98

湖上の…… 2/4

おお、でかい。


島って言うからもっと小さいものだと思っていたが。



「王都より広いんじゃないか?」

「ええ、王都の約4倍よ。私も数回来たことしかないけど、中心のヤルマ山を囲むようにして都市が形成されているわ」

「へえ。で、まず着いたら何するんだ?」

「ここは魚料理がおいしいのよ。まずは……」

「美咲」

「わかってるわよ。出国許可証はチケットで代用できるけど、入国許可証は4国の共同運営ギルド『旅路の境界』が発行しているわ」


へえ、そんなギルドもあったんだな。


ん?


「前に俺たちはそれが免除される数少ないギルドに所属しているって言ってなかったか?」


ここで明が会話に参加する。


「今回はギルドを通した仕事ではありませんし、柚木君は『全人の門』ではありませんから」

「それに、国家間の問題をギルドに持ち込むのはご法度よ。ましてや、4国すべてにギルドのあるこのギルドではなおさらね」

「そうか」

「ま、何かあったらそっちへ行くようにって言う手紙ももらったわ」

「いつ?」

「封筒が二重でその中にね。多分、分厚さから考えて、何重かにしてあるわ」

「昨日も聞いたが何故?」


時間がなく聞けていないので、理由がわからん。


「おそらく、これは5重ね。ひとつは、私たちにあてた手紙だから」

「まあ、そうなるわな」

「次は、入国管理で身体検査があるから」

「出すときに封筒から出せば違う色の封筒ってことか?」

「そういうこと」

「3つ目は?」

「多分、向こうの学園に入るときの持ち物検査」


え?


「そこまで厳しいのか?」

「向こうの学園にも帝国出身の人はいるわよ」

「希さんや悠君のようにですね」


なるほどな。


「っていうか、学園ってあそこだけかと思ってたぞ」

「何事も本場で学ぶのが一番ってことよ」

「法か?」

「そ、あらゆる法律はあそこからできる。国際法なんかはむこうの校長が最終的な決定権を持っているわ」

「ん……?そしたら、向こうの国が有利になるような法律ばかり作れるんじゃないのか?」

「そこは、ギルドとほかの学園の校長の出番ですよ」

「ん? っていうか、今の状況ってどうなってんだ?」

「何が?」

「帝国が戦争をするのに教国と王国が手を組むのは国際法だっけか?……それ的にはどうなんだ?」

「ありよ。4国で承認もされている。だから、この手紙を狙いにくるのよ……昨日のようにね」

「なるほど……で、理由はそれを奪えば、足並みがそろわないからってか?」

「そういうことよ。いくら武の国っていって2つの国を相手取るのは至難の業よ。なら、1つずつ相手にするのが上策。しかも、それによって不仲が生じれば儲けものってことよ」


っていうか……邪魔しに来るぐらいなら、初めから戦争しようとか考えるなよ。

いや、2つの国を相手取るって言われてもあれだが。



「もう着くぞ!!早く降りねえとすぐに出るからな!!」


船長が叫ぶ。

何とも、元気な人だ。

っていうか、そんなことしたら国から怒られるような気がするぞ?


「まあ、あれだな。特に逆らう理由もないし早く荷物持ってくるか」


4つ目と5つ目の封筒の理由は聞けなかったが聞くまでもないだろう。


客室の一室の隅で死に掛かっているやつが1人。


「おい、大丈夫か?」

「……だい……じょう……ぶ……だ」


どこがだ! って突っ込んでいいか?


「もう陸地だ。よかったな」

「おお、助かった」


変わり身、早っ!


「っていうか、何で転移のときの気分の悪さは大丈夫なのに、船は駄目なんだ?」

「知らん……うぇ……」

「ベッドにいればいいのに」

「いや……水が飲みたくてな……」

「はあ、どうぞ」


水をコップに入れて渡す。


「助かった……3日も乗ってればましだな」

「そうだな、1日目はほとんど動けなかったもんな」

「今と……ほとんど……大差ないけどな……」


息も絶え絶えである。


「2日目の謎の嵐に比べたらましだろうけどな。」

「……ああ、そうだな」


船に乗った次の日、つまりは昨日、俺たちは忙しかった。



来訪者の歓迎に……。


が、そんなことは言わない。

無理にでも戦闘に参加しようとするだろう。

だが、それは御免こうむる。

これから、到着するバンデン島から教国へ行くのも船なのだから。









昨夜。


「おいおい、マジかよ」

『お客さんらしいのう』


船にたたきつけられる雨の音と渚の声がそれを肯定する。

また、それとは別にベッドの下からはうめき声があがる。


『連れて行ったらまずいよな?』

『愚問じゃな』


できるだけ、足音を殺しながら部屋を出る。

人影が3人。


「来ましたね」

「普通、起きるだろ? 年中、穏やかな湖って出航前に言われていたのが荒れてるんだぜ?」

「高い確率で魔術ですね」

「狙われてるのか? 無差別か? それとも、別口か?」

「高確率で、狙われていますね。校長室に出たスパイなどをかんがみるに」

「顔は割れてないが、スパイの消失には気づいたから……で、後は手当たり次第か?」

「おそらく」


こちらに向かって走ってくる音。


数は2人。

美咲の手がひらめく。


「私と明で甲板に上がる階段を押さえるわ」

「ですね、私たちは嵐との相性が悪すぎるようですから」


飛び道具だもんな。

別に明は殴ればいいのだろうがな。


「千花ちゃんは、船長室をお願い」

「はい」


滅多に来ない嵐だ。

今頃、船長室も荒れているに違いない。


マントをかぶり顔を隠す。


「顔さらしたらまずいよな」

「そうね」


逆に俺たちが怪しい集団だ。


「それにしても、乗客の中には戦えるやつはいないのか?」

「私たちの騒動に巻き込むわけにも行かないから、眠り薬を飲ませてきたわ」


そうか……。

大丈夫か?

出会った当初に飲まされた、まずくて気絶するほどの薬が思い出される。


「何か、考えた?」

「……いや、何にも」


怖い、怖いよ。





さて、出るか。

扉を開けると体に衝撃がたたきつけられる。

攻撃? 否、圧倒的質量の雨である。


水との接触で威力が上がりすぎて爆発するので、『紫電』は使えない。

逆に、雨によって威力が下がるので、『紅蓮』も使えない。

どっちも全開で使えば船が灰になる。


さて、入学式から約2ヶ月。

この時期が何を意味するか。


それは……

飛んできた暗器に向かって


「『海渡』」


水で弾き飛ばす。

それによって発生する飛沫しぶき


『氷泉』ひょうせん


雨が凍り、それがまた、凍った甲板に落ちて砕ける音が響く。


「これって雨の日使うと楽しいな」

『主よ、来るぞ』


俺の言葉が忠告で返される。

相手からは雷の魔術が飛来する。


俺と相手の違いは魔術か自然か。

その違いはあまりにも大きい。


指向を持たない自然の雷とは違って、魔術は外的要因からある程度は守られている。

途中で曲がるということはない。


「『破魔』……前から思ってたが『紫電』って高速に移動する以外は不便だな」

『主も余裕じゃのう』


敵は無言だ。

相当の手練だろう。


校長室にいたレベルのやつらだ。

数がわからん。


『『天羽』……6人か?』

『どうじゃろうな。ここまで、雨が激しいと大気も揺らぐからのう』


はあ、不意打ちされないようにしないとな。

気配を察知し、後ろに跳び退ると、暗器が追ってくる。


美咲と同じダガーナイフか。


氷の塊を放ち迎撃する。


『さて、1つ疑問だ』

『何じゃ? 2対1のこの状況を打開する案かのう?』


ぎりぎりかわしているが敵のいる場所がおおよそにしかつかめない。

正直言って、手立てがない。


『いや、そうじゃない。疑問だ。なぜ、奴らはこの船を沈めない?』

『さっきもおぬしらが話しておったじゃろ? 手当たり次第なんじゃ』

『だったら、どうなる?』

『はずれを引いたらどうなるじゃろうか?』

『はずれって、俺たちが乗ってない船を沈めたらってことだろ?』

『察しが悪いのう。そんなことが起きたら、国が動けるようになるんじゃよ』


ん?

いまいちつかめない。


『国が湖賊討伐で軍を出すじゃろう』

『はあ』

『昔からこの湖の上はどこの国のものでもないんじゃ』


ふーん。

ん?

なんか引っかかった。


『……ってことは、事件がおきたら……4国が動かなければならない?』

『そういうことじゃ。じゃから、向こうも派手なことはしてこないということになるじゃろうな』

『だから、向こうも即死レベルの魔術は使ってこないのか』

『あくまでも、今の主は戦える一般人の扱いじゃからな』


じゃあ、始めようか。

手加減してて勝てる程、甘くは無い。


刺客の術式に渚を振る。


「『天破』」


2人だ。

背後から、炎が飛んでくる。


「『破魔』」


大気が驚愕に少し揺らぐ。

一般人がここまで粘るのは驚異だろうしな。


『この嵐は魔術だよな?』

『そうじゃな、まあ、術式そのものを破壊しない事にはどうしようもないじゃろうがな』

『術者が誰かわからん……!? 敵が増えた。12!?』

『人とは限らないんじゃよ』

『ゴーレムか』


後ろから振り下ろされた水の腕。


「すげぇ、ゴーレムって水でも作れたんだな」

『珍しい術じゃし、かなりの魔術の操作力じゃな。 基本的に使途は捕縛用じゃ。 水で捕らえて窒息させ昏倒させるものじゃよ』

『捕まったらやばいって事か』


もう一度振り下ろされた腕をかわして渚で斬り落と……せなかった。

斬ってもすり抜けるだけで、手ごたえが無い。


「『天破』」


ゴーレムを吹き飛ばす。


「ふう」


次のに向かって渚を振……


『主、避けるんじゃ!』

「わっと!?……おい、消し飛ばしても復活とか、ありえねえだろ!」

『水と魔力がある限り、何度でも復活可能じゃよ』


まずいな、ゴーレムは倒せない、術者は見つからない。

相手はが大技を使えないと言う点では、一見有利に見えるが、俺たちもその条件は一緒だ。

自分が乗ってる船を沈めるわけにはいかない。



……俺、馬鹿だろ。

技使う必要なかったじゃねえか。

『氷泉』なら……砕ける。


「『氷の鎧』」


水の羽衣とは違い、純粋な硬さを秘めている。

が、問題なのは硬さじゃなく、触れたら凍る。


そして一歩目……こけた。


制御が甘く、自分の右足が雨でぬれた甲板に張り付いたのだ。


地味に痛い……。



そこに水のゴーレムが覆いかぶさる。

その隙に客室に向かうやつらが2人。

だけど行かせない。


「待てよ」


水の中から声をかける。


「『氷泉の具現化』」


渚の柄にあるのは鈴。

水の中にもかかわらず、そのは響く。


同時に、ゴーレムが凍り内側から砕け散る。


さらに、降る雨が和らぐ……否、雪と化す。

降り注いでいた雨が凍って落ち、それを追うかのように降る雪。


これならいける。


「凍れ!」


『天羽』によって見つけ出されたゴーレムの術者に『氷泉』の冷気が襲う。

うわ、寒そう。


砕け散ったゴーレムの再生が途中で止まり、水となって甲板をぬらす。

もうびしょびしょだが。


雪も止まり、敵がこちらに投げてくる。

目くらまし!?

追うためにそれを打ち返そうとする。


だが、それは

爆音弾であった。


無論、衝撃に耐えられるわけもなく


……その場で炸裂した。


非殺傷の爆音弾。


『被害が出てないから、訴えることも出来ないんだな?』

『そうじゃな』


はあ、なんとはた迷惑なやつらだ。





「おい! 何ボーっとしてるんだ? とっとと降りるぞ! 早く地面のある場所へ」

「……そうだな」


俺も荷物を持って、甲板に上がるのであった。









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