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神とともに歩む者  作者: mikibo
学園入学編
68/98

再びサバイバルの罠を張ろう

この学園は基本的に生徒には不干渉であるが、その中でも強制参加型の行事が存在する。

その数少ない、行事の一つが





サバイバル訓練である。





目的は緊急時の避難の迅速化と最低限の自衛である。

強制とは言えある水準を満たしている人は免除される。


俺も免除されている。



そして、その3日間の行事中は学校が休みである。



が、

その浮ついた気持ちを粉砕する一言が校長から下る。


「君たちには、お仕事をやってほしいのです」





というわけで、またもやあの山で罠を張っている。


しかも、前よりも明らかに危険性のないやつである。



「これって退屈だよな?」

「仕方ないですよ。あくまで、訓練のためなんですから」

「訓練するのに何故罠を張らないといけないのかはなはだ疑問だ。だって、自衛だろう?」

「まあ、僕が考えたことではないのでわかりませんよ」

「そりゃそうだわな」


そこから黙々と作業を続ける。


しばらくして俺が考え付いたことを明に言う。




「この残りの罠全部組み合わせてすごいの作らないか?」




これが、訓練参加者の悲劇を巻き起こすことになろうとは

……思いもしなかった。

『そこまで想像できとるんじゃからその言い訳は通用せんじゃろ』

『お前にしかわからないからいいんだよ』


そうばれなきゃいいのさ。


『そんなこと言っておるとまた心読まれるぞい』

『確かに……副校長とか千花とか月夜とか……あれ?』

『どうしたんじゃ?』


聞き返してくる渚に最近よく思うことを告げる。


『俺の心にプライバシーという概念はないんだろうか?』

『…………大丈夫じゃろ』

『その台詞は沈黙をなくしてから言え!』

『大丈夫じゃろ』

『今、言い直しても駄目だろ』

『全く、注文が多いのう』

『誰のせいだ!』


そんな無益な応酬をよそに明が口を開く。


「面白そうですね」

「やるか?」

「ええ」


かくして、トラップの森は完成した。

ちなみに、渡された罠だけでは個数が足りなかったので、周りの木などで自作した。


要した時間は3時間。

すっかり昼も過ぎている。


「飯にするか?」

「ですね」


買ってきた弁当を食べる。


「全く美咲が全部食うとか笑えないんだが」

「しょうがないですよ。初対面とかの人にはしないと思いますし」

「されたら明らかに俺たちのほうが被害被るからな」

「それもまた面白いですね。そのときは高みの見物をさせていただきます」

「おい」

「冗談ですよ」

「ぜんぜん冗談に聞こえないんだが?」

「まあ、事実ですから」


おい。


「冗談じゃなかったのかよ」


笑顔を返された。

いや、俺にどうしろと?


弁当を食い終わり片付ける。


「帰るか?」

「一度先生たちに合流して、報告しないといけませんよ?」

「そうだったな」



「先生、終わりました」

「ご苦労様」

「2人とも余計なことはしてないだろうな?」


でた、このボス(副校長)

っていうかなんで来てんだよ。

「副校長の仕事だからね」


あっさり心読まれたんですけど!?


「で、余計なことはしてない?」

「してません。(面白いことはしましたが)言われたとおり罠は張ってきましたよ。(過剰ですが)」


大事な部分はオブラートで何重にも包む。

さすが、明。

面白さのために命を張るとか驚き通り越して、もはや謎だ。

一緒にやった俺が言うのもなんだがな。



あそこにかけた罠は、落とし穴や捕獲ネットのようなものだ。

これらは配られたものだが、訓練になるのかどうか危うい。

周りと色が明らかに違ったり罠の仕掛けの発動する範囲が狭いのだ。


そして、俺たちが作ったのは罠ではない。

罠も作ったが、そこに誘導するための仕掛けのほうが多い。

何故か、前に山で仕掛けた罠を明が持っていたのでそれをさらに流用する。


まあ、素人がそんなところ行くと大変なことになるので立て札も作った。




素人禁止

ここより先は

危険です




と、これが逆効果になるとも知らずに……。

『そこまで想像できとるんじゃからその言い訳は通用せんじゃろと、さっきから言っておるのに』

『駄目か?』

『逃げる準備だけしておくんじゃな』


「さて、戻るか」

「そうですね」


と、言う俺たちの後ろから声がかかる。


「あんたたちも終わったのね?」

「ああ、お前ら以外と遅かったんだな」

「……そう?普通よ」


なら、その気になる沈黙を消せよ!


「千花?」

「ひゃう!?やってませんよ!私は殺傷系の罠なんて作ってないですよ!」

「「……。」」


俺たちは沈黙のまま美咲に眼をやる。


「ちょっと千花ちゃん!?落ち着いて!」


って言うか、殺傷系って……。

「僕たちは、捕縛系ですから大丈夫……ですよ」


だからその沈黙いらないから!

余計に不安になるだけだから!


どんなの作ったんだろう?


「ねえ、千花?」

夕甜花(ゆうてんか)の毒なんて使ってません」

「夕甜花?」

「蜜は甘くて砂糖のようなものですが、その花の葉についてる粉末は無味無臭で少量に死に至るんですよ」

「はあ」

「ちなみに使えばそれなりの処罰が下りますね」

「おい」


俺たちの視線がまた、美咲に向く。


「だ、大丈夫よ。あれは、燐雪草(りんせつそう)の根の粉末を混ぜると薬になるから」

「それじゃあ、なんで千花はあんなに取り乱しているんだ?」

「言ってないからよ。ちょっと驚かせようとね」

「言えよ!」


突っ込んだ俺は正しいのではないか?


何とか、千花をなだめる。


要した時間は4時間。

おい、罠かけるよりも時間かかるってどういうことだよ。

日は暮れかけ。



どうするか?


野宿だな。


「明日までここで待機だな」

「そうね」

「ごめんなさい」

「気にするな全部美咲が悪いからな」


今日の料理当番は明。


「できましたよ」


そこら辺の野生の鳥を捕まえてきたらしい。

日がくれてるのによく見つけたな。


さて、星の降る空を見上げる。


「雨は降らないんだな」

「この時期はまだ晴れてますよ。ここから後です。雨が振り続けるのは」


そんな千花の説明を聞く。


ま、雨なんて気が滅入るような気がするだけだ。

俺が倒れたときもそういや雨が降ってたな。






とりとめもないことを考えるうちに。


深く、深く、意識は潜り。


深遠へと俺を誘うのであった。












余計なことではあるが


次の日に生み出された悲鳴と怒号の嵐。


それとともに俺たちの記憶が副校長の前で途切れていたことは言うまでもないだろう。



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