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神とともに歩む者  作者: mikibo
学園入学編
62/98

騒がしき馬鹿ども 上

春の日差しが暖かく起きるのはかなりの労力を要する。

ましてや、ふかふかのベッドなど起きることができようはずも無い。


というわけで、俺は寝ていたのだが。


明に起こされた……殺気で。


「少し時間も早めなので、体を動かしませんか?」

「それだけのために殺気とか怖いぞ」

「すいません。それでどうします?」

「行く」


明に誘われて、部屋を出る。




それにしてもこの屋敷はやっぱり広かった。

砦の客用の2人部屋をはるかに上回る大きさである。

まあ、砦の機能面と客室の必要度で考えれば当然のことだが。





昨日までの依頼で、『紅蓮』はほぼ完全に使えるようになった。


『次はどうするんじゃ?』

『属性的には土と木と氷か?後は光と闇と空と時もあったな』

『速度という点では光じゃな』

『ところで、防御に向くやつあるか?』

『断然、空じゃな』

『それってすぐにできるか?』

『無理じゃな……記憶が戻らんと時間がかかりすぎるでな』


やはり記憶か……。


森での1回だけ、それ以降は何も起きていない。


『じゃから、防御ではじめるならまずは土じゃ。最も空中ではあまり使えんのじゃがな』


土が近くないと使えないってか?


「試してみないとわからないな」

「どうかしましたか?」

「なんでもない」


扉を開け、外に出る。

開いた扉に驚いたのか、近くにいた鳥たちが飛び去る。


体を伸ばして、息を吸う。



「いい朝だな」

「ですね」


その言葉と同時に後ろに飛ぶ。

前の仕返し……



そう



「『天破』!」



先制攻撃ふいうちである。


明はこの攻撃に対して、思いもよらぬ行動に出た。

地面を……そう、地面を気で・・殴ったのである。


「『地砕』!」

「なっ!」


壁となった地面が天破で砕ける。


「……まさか自分の技で返されるとは思っていなかったぞ」

「伊達に毎日戦ってませんよ」

「まったく、ずるい。そっちの技術は俺のに反映しにくいってのにな」

「すいませんねッ!」


今度は円月輪が飛んでくる。


「なあ、ふと思ったんだが、探知系に幻って効くのか?……月夜と琴音さんあいつらの以外で」


かわしながら聞く。


「そうですね。直接意識に作用すれば行けますけど、前にも言ったようにあれと同じような魔術は……」

「一瞬の不意をつくもの……か」

「そういうことです」


また円月輪が追加される。

当然のごとく見切ってかわす。

ここまではただの予定調和。

なんら変わらない準備運動。



しかし、



加速する。




視界に入っていた円月輪の速度があがる。

さっきまでの遅めの速度に慣れていた目が、一瞬捕らえきれなくなる。


が、

俺だって別に遊んでいたわけではない。

目が見えなくとも気配でかわす。


そして、


「『砂塵』」


砂が俺を覆い、斬撃から守ってくれる。


『72点』


渚の評価が聞こえる。

何を基準にしているかわからない。


「その刀すごいですね」


今度は明が話しかけてくる。


「何がだ?」

「魔剣とかは大抵1つの属性しか使えないのですが、もうすでに5つ目です」

「風、雷、水、火、土、確かにな。ま、この刀が自称神と呼ぶくらいだからな。それぐらい当然だろ」


『自称ではないと言っておるじゃろ』

『今気づいたが病院じゃないな……鍛冶屋行くか?』


「人格を持っているのは眉唾物ですが、それを信じるとしてもです」

「なんか不思議なことか?」

「神器ですら、人格は持っていません。当然、その刀がとんでもないものであると言うことは明白です」

「なるほど。俺にはわからんが、偶然の産物とかじゃないのか?」


こう話をしている間も攻防は続いている。


「わかりませんが、あまり派手にやるとその刀は狙われるかもしれません」

「確かにな。業物程度くらいだと思ってくれていると助かるんだけどな」

「もうすでにいろいろとやってますからね」


……なら。


「これでどうだ」


雷を放つ。

が、切り裂かれる。


「魔術は使えなかったのでは?」

「魔術じゃないな。俺が個人で使える技だ」

「異能……でしたね」

「詳しくは話してなかったっけな」


自然と戦う速度が収まっていく。

まだ、時間があるので、話しておく。


「なるほど、現象をそのままですか」

「渚が無いとかなり疲れるけどな」

「翔さんが自分で使えるなら、刀とは関係ないんじゃないですか?」



…………



……





あ。


「そういうことになるな。当然気づいていたさ。いたとも」

「そういうことにしておきましょう」


あれ?

もしかして、もしかしなくとも千花と月夜と美咲と明の中で1番フォローしてくれるのは明か?


月夜と美咲は論外だ。

あいつらはフォローするどころかけなしにくるだろう。

これは間違いない。

10回やったら10回ともけなすだろう。


千花はもっと駄目だ。

天然であいつらの上を行くだろう。

気づかず、傷口をえぐってくるだろう……しかも、的確に。




「ありがとう」

「どういたしまして?」




不思議そうな表情を浮かべた明とともに屋敷に戻る。

それと、同時に時計台が7時を告げる。


朝食を終える。

1人足りない。


8時過ぎになって、扉の開く音がする。


「顔が見えないと思ってたら、そうか仕事か。すっかり忘れていた」


納得する。


「ただいま戻りました」

「お帰りなさいませ、希様」


玄関から声が聞こえる。


「お疲れ様」


部屋に入ってきた希に適当に声をかけておく。


「姉ちゃんお帰り」


と、言って抱きついている。

そこから目を離し明に話しかける。


「なあ、明?」

「はい?」

「明日から時間のある日の朝に軽い依頼でも受けないか?」

「いいですね」


そんな俺たちの会話に別の声が参加してくる。


「私も行っていいですか?」

「千花が行くほど、難しい依頼をするつもりも無いけどな」

「第一ランクのせいで受けることもできませんしね」


明に言われて気づく。

知識があるのに使えてない……何のための記憶力だよ。

少し落ち込む。


「どうかしましたか?」


明の声に意識がかえってくる。


「すまん。ボーっとしてた」

「どうしますか?私は依頼なら最初は採集系がいいと思います」

「僕もそう思います」

「どうしてだ?」


2人のそこへ至った理由がわからない。


「別に討伐系でもいいのですが、薬を材料持っていくと作ってくれるんです」

「依頼で取れすぎたのを自分らで使うと言うことか?」

「そうです。いつでも、美咲さんがいるということはありませんからね」


確かにな。


「備える分には困らない」

「そういうことですね」

「今日はさすがに無理そうですが」

「だな」


部屋に戻ろうとしたときに九十九さんに呼び止められる。


「皆さんは収納するものをお持ちですか?」


収納リュックを持っているのは俺だけである。

無論、俺たちのではあるが。


「先程、光さんから新人ギルド員に届けられたのでお配りします」



千花のは、指輪型。



明のは、腰につけるポシェット型。


「四肢を駆使して戦う明のがポシェットなのはわかる。ナックルや円月輪を使うからな」

「まあ、そうですね」



美咲のは、二の腕につけるバンド型。


「機動を駆使して戦う美咲のがバンドなのもわかる。ダガーが収納できるからな」

「たくさん入るわ」

「ほどほどにしろよ」



希と悠には、ブレスレッド型。


「希と悠がおそろいでブレスレッドなのもわかる。魔術で戦うからデザインに凝ったのだろう」

「確かに、私たちが武器を振り回すのはまだ早いですからね」

「でも、剣、振ってるよ」

「だから、調節できるようになってるだろ」

「それ自体も模様に同化してますから、わかりにくいかもしれないですが」

「すごいよ。姉ちゃん」

「本当ね」



「千花のが指輪なのは、麻奈花が麻奈花たるゆえんだろう」

「…………」

「え?それで終わりですか?」

「それ以外に何かあるのか?」

「……悔しいけど無いわね」

「美咲さんまで……」


俺のは、


……服型。


しかも、真っ黒のドレス。


「な、なぜだ……?」

「麻奈花さんの麻奈花さんたるゆえんよ。あきらめなさい」

「浅黄さんですね!」

「俺の黒歴史だ……っていうか。後で麻奈花の刑な」


青ざめていく千花。


「あれ?何だこれ?」


取り出したのは紙。


「これはもしかして……」


前みたいな手紙か?


『正解。呼ばれて出てくる麻奈花です』

「帰れ、今すぐ帰れ、呼んでないから帰れ」

『手紙にそんなこと言っても無駄よ!』

「絶対聞こえてるだろ!」

『この服は特殊な繊維で作ってるから』

「おい、無視するなよ!」

『いろんな服に変わるわよ』

「おお、よかった。早速、まともな服に……」

『ドレスとかドレスとかドレスとかワンピースとかその他諸々』

「おい、男物の服は?」

『そんなものあるわけ無いでしょ!』

「なぜ、こっちが怒られる!?っていうか話通じてるじゃねえか!」

『男物なんて作って誰が喜ぶのよ』

「絶対燃やす。今すぐ燃やす」


『紅蓮』を出そうとしたところを明に羽交い絞めにされる。

狙いがつけられない。


「放せ、あれは燃やす!」

『ローブがあるわよ』

「何?」

『白のローブと真っ白のローブと純白のローブ。かわいくできたんだけどどれがいい?』

「『紅蓮』!」

『ちょっと!?え!?本当に撃つの?冗談よ、冗談』

「次は爆発しそうだ」

『わかったわよ。ドレスとかはオプション。いわば、おまけよ』

「どういうこと?」

『あんたは九十九さんの知名度をなめているわね』

「はあ」

「そんな大したものでは」

『あなたのそのジャケット。九十九さんのだという付加価値がつけば……そうね、聖王貨5枚ね』

「は?」

『普通に暮らす一般家庭なら200年ってところかしら』



「「……ええええええぇぇぇぇぇ!」」


俺と希の驚きの声が響く。


「やっぱりそんなものですね」

「道場の数年分の維持費って所でしょうか?」

「食費3年分ね」

「それってお菓子どれくらい買えるのかな?」


お金の価値を知っているのが2人。

食欲魔人が1人。

お金の価値が大きすぎて想像できてないのが1人。


その他の内訳はこのとおりだ。


「私のは無いのですか?」

『誕生日に贈ったのがあるから』

「そうですか」


見るからに落胆している。


『あるけど、それは外出許可取れたらの話よ』

「……えっと、無理じゃないですか?」

『簡単に言うと神楽姫が王位を継げばね』

「……えっと、不可能じゃないですか?」

『その上で、子供ができたらね』

「……えっと、言外に諦めろと言ってませんか?」

『大丈夫よ……多分』

「多分なんですか?」

『きっと大丈夫よ!』

「安心できません!」

『懸想している子がいるから大丈夫よ』

「だ、誰ですか!?」


いきなりの話展開にあせる月夜。

何故か、千花と美咲の視線が明に向かう。


『当然じゃな』

『どういうことだ?』

『わからんじゃろ』


答えずに消える渚。


『あ、どうでもいいけど時計見たほうがいいわよ』


時間の感覚が狂っていたらしい。




只今の時刻


9:50


「嘘だろ?」

「初日にして遅刻になるのかしら?」

「まずいわよ。副校長厳しいから」

「いっちゃんそれ先言ってください」

「急がないといけませんね」

「間に合うの」

「翔兄、前みたいに飛べないの?」

「無理、捕まる」

「……ってことはあれね」

「そうだな。全員……」







「走れ!!!」


学校へは次です

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