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神とともに歩む者  作者: mikibo
学園入学編
59/98

学園へ行こう

日も傾きだし、刻一刻と夜に向かって日が動き始めている。


俺たちは王都に帰ってきた。

一週間程度しか経っていないので、前ほどの感慨はない。



「よし、学園に行くか」

「ですね。早く行かないと閉まって……しまうのでしょうか?」

「私も知らないです」

「私のほう見られてもわかんないわよ」

「じゃあ、とっと行くぞ」


これまた一週間ぶりの学園である。

……?


「なぁ……」

「えぇ……」

「僕が前に見たときと形が変わってますね」

「こんなに大きくありませんでしたよね?」


中に入って受付に話しかける。

と、空間がゆがんだ。


「は?」


「いらっしゃいですよ~。はぅ、痛いです。殴らないでくださいです」

「あれから何度も言いましたよね! 受付と校長室を入れ替えるなと!」

「反省してますです」

「そうですか、罰として食後のプリンは無しにします」

「そ、それは非人道的なのですよ」

「いっても聞かない子にはこれくらいの罰が必要なんですよ」


え……どういう展開?


「面倒なので跳んで来ちゃったぜ」

「おぉ!」


隣に少し身長の高い男が現れる。

気配無かったぞ。


「柚木君なのです」

「あなたも何度言わせれば気が済むんですか!」

「げ!」

「あなたは入学したら、まずは面談をしましょう」

「こ、校長!」


助けを求める。

その先にはプルプルと震える小さい女の子。


「おぉ、神は我を見捨てたもうた」

『わしはそんなことにかまってる暇は無いんじゃ』

『言っても聞こえないんだから突っ込まなくてもよくないか?』

『言っても聞こえないからぐちっとるんじゃよ!』


なるほど、それも一理あるな。


扉の開く音がする。


「失礼します」

「あなたも彼らを見習いなさい」

「ええ~」

「いいでしょう。入学したら生徒指導室へ来なさい」

「うげ」


そして、また校長を見る。




ループした。




「これが学生証なのです」

「ギルドカードに重ねるといいですよ」


---------------------------


   名前:翔

   種族:???

  ランク:E

所属ギルド:全人の門

   戦闘:魔刀使い

   備考:記憶喪失

      学生(クラスF)



我らはこの者が我がギルドに

所属する事を認める。


---------------------------


クラスが表示されている。


「さて、帰るか」

「ねぇ、君って何組?」

「え……」

「柚木でいいぜ」

「Fだが?」

「あの最弱とかおちこぼれって言われてる?」

「そういうお前こそ何組なんだ?」

「Fだぜ!」



…………



……






「沈黙が痛い、刺さる。沈黙がこんなに痛いものだったなんて知らなかったぜ」


なぜか、既視感を覚える。

いや、前に来たときのあれか……。


「というわけでよろしく……」

「翔だ」

「よろしくな、翔。って、男なのか?」

「殴っていいか?」

「冗談だ、冗談、軽く行こうぜ」

「はぁ、じゃ、帰るわ」

「そうですね」

「明日からですからね」

「俺も帰るぜ」


消えた。


「転移ですか」

「すげぇ」


だから、気配が無かったのか。


「あの後3人の分はどうしたのでしょう?」

「昨日に取りに来てましたよ。まぁ、月夜様は在学生でしたので更新しただけですが」


そうか、そういえばあいつもう生徒だったな。


「ありがとうございました」

「またなのです」

「失礼します」


俺たちは校長室を後にした。


そして、今は屋敷に向かって歩いている。



今更なのだが、住むところないよな?

あそこを追い出されたら、宿屋暮らしか?

そういえば格安で、ギルドの寮があった気がする。

つらつら考えながら、屋敷の門をくぐる。


「翔さん、どうしたのかは知りませんが迷ってしまいますよ?」

「気にしなくても大丈夫よ。どうせ、大したこと考えてないわよ」


ひどい。

少しへこみながら、生垣を抜ける。



「お帰りなさいませ」


ぬわッ!

生垣抜けた瞬間に横から挨拶とか怖ッ!

しかも、気配消してるとか……

実は遊んでるのか?


「そんなことはございません」


でた、特殊能力読心術。

ってか、誰も帰ることを伝えてないよな?


「悠様は、向こうで剣を振っております。希様は……」


九十九さんが続けようとすると後ろからは軽快な足音。

九十九さんの合図に、皆が隠れる。


見覚えのある女の子に皆が


『お帰りなさいませ』


「ひゃ!ひゃひゃいまです」


驚きのあまりへたり込みながらも律儀に答える希。


「ろれつが回ってないぞ」


腰が抜けて立てないようなので、手を貸す。


「しゅいません」


お姉さんらしさにあるまじき失態をくりひろげている。

いつもの冷静さはどこへ?


しばらくして、

「お仕事お疲れ様です」


と、口を開く。

落ち着いたようだ。


「希ちゃんも仕事はどうだったの?」

「とても楽しいです。今日も受付の人がほめてくださったんです」

「この一週間でだいぶ、大きくなったな」

「……そう思います?」

「あ……ぐぇ!」


視界がスライドする。

美咲の蹴りが顔面に直撃。


「デリカシーのかけらも無いわね!」

「いや、普通に考えてこの年齢で前までの痩せ具合はありえなかっただろ!」

「むぐっ」

「だいたい、俺は体重が……なんて一言も言ってねぇだろ!」

「うっ」

「むしろお前のほうが太らないの……」




意識暗転。




痛みは……無かった。








目が覚める。

すぐに、俺は叫んだ。



「この館に俺は呪われている!!!」



……別に叫ぶ必要は無かったな。


「うるさいわね変態」


ひどい。

この館、呪いのアフターケアとかもあるんじゃないのか?

今なら、呪いが解けても、もうひとつおつけいたしますので大変お買い得です!

見たいな感じで。


「何よ、変態。ぶつぶついってるなんてホント変態ね」


呪いはおかわり自由です。

じゃなくて、今何時だ?


棚に乗っている時計に目をやる。


7:23


「ご飯よ、早く来なさい」

「わるいな」


何も言わずに先に行ってしまった。

どうするんだこれ?


そして、今更気づいた。

『天羽』使えばいいんじゃないか?


扉を開けて、『天羽』の風で探索していく。






あまりの簡単さに笑いしか出ない。

目の前には食堂の扉。

何で今まで思いつかなかったのか不思議なくらいだ。

開けようと手を伸ばすと勝手に扉が開いた。


「どうぞお入りください」


中に入る。




食事を終えて、みんなが会話を始める。


「これは2人の分。これはお前の分だそうだ」

「ありがとうございます」

「ありがとう」


俺は姉弟からの礼と


「……?誰からよ?」


姫からの疑いをもらった。

疑いを晴らすために説明をしておく。


「お前の義姉からだな」

「え……ずるいわ! 私は外に出かけられないのに!」

「いや、俺に言われても……っていうか、いきなり斬りかかってこないように言っといてくれ」


月夜が頭をおさえている。

あぁ、ご愁傷様。

外に出られないのは、九十九さんと陽菜さんのメイド執事コンビのせいだな。

……あきらめろと言うほかはない。


「これってどうやって使うんですか?」


……あれ?


「そうだな、そういえばどうやって使うんだ」

「え?知らないんですか?」

「すまん」


記憶にないものは使えない。


「簡単よ。空魔術『断空リジェクション』! 触ってみなさい」


美咲を包んでいる何かに接触する。


「おぉ」

「これは位置固定じゃなくて、術者固定だから、基本的に自分以外は守れないわよ」

「そういえば、もう1つのやつはなんだ?」

「ちょっと手を出しなさい」

「こうか?」

「明もお願い」

「はい」


手のひらを上にして手を出す。


「……っ! 何を!」


斬られた。


「光魔術『聖域サンクチュアリ』!」


光のオーラがドーム上に俺たちを包む。

そして、癒されるのを待つ。




……………




………




……?



「傷が治んないけど?」

「当然でしょ。これは傷を癒すものじゃないもの」

「は?」

「そこに居てね」


明と美咲が離れていく。


「明はここで」

「はい」


ズキズキする。


「いくわよ!」

「明と俺を離す意味は?」


これでは行って戻ってしないといけない。


「水魔術『快癒ヒール』!」


あれ?

離れてるのに傷がふさがっていくんだが。


「わかった? これは範囲指定と座標指定ができるんだけど、この『聖域(サンクチュアリ)』内にいるものは回復魔術の恩恵を受けるの」

「何の意味があるんだ?」

「患者に触れることなく治療が行えるのよ」


感染防止とか管理の簡易化……か。


じゃなくて、

「明、斬られる意味なかったんじゃないのか?」

「私はこれを使わなくても遠距離で回復できるから、わかりにくいでしょ」

「はぁ……」


次に


「一応、僕のも見せておきます。火魔術『陽炎ミラージュ』」


ん?

……え?

明が2人?


「うわぁ!明兄が2人だ」

「これは僕の幻です……と言いたい所ですが、はっきり言いますと、ただの目くらましです」

「どういうこと?」

「これは僕と同じような事をしていますが、攻撃が放てるわけでも防げるわけでもありません」

「触ってもいいですか?」

「どうぞ」


希が恐る恐る明に触れ……られなかった。


「あれ? 向こうに手がすり抜けてしまうんですね」


そりゃ、防げないか。


「それに、僕と同じ動きしかできませんし」


2本の右手が上がる。

戻す。

2本の左足が上がる。

戻す。


「こんな具合です」

「使いどころあるのか?」

「そうですね」


室内なのにいきなり円月輪を投げてきた。


「ちょっと……!」


弾こうと思ったやつは、突然戻っていく。


「……?……!」


後ろに渚を振る。

金属音と共に火花が散る。


「1つしか投げてないのに火魔術『陽炎ミラージュ』を本体とずれた位置に作る事で誤認させるって事か」

「そういうことになりますね」

「なるほど……で、なぜ2人は俺を実験台にする」

「いえ、特に理由は」

「別にいいじゃない。減るものじゃないんだし」

「減るだろ! 血液とか寿命とかその他もろもろが!」

「そんな細かいこと気にするやつは嫌われるわよ」

「え? これは俺が悪いのか? 違うよな、どう考えても俺悪くねぇだろ!」


はぁはぁ、叫んだらしんどくなってきた。


「みなさん、明日は早いですよ」


そうか、明日は学園か……。

何事もないといいな。


「私たちは間違いなく厄介事に巻き込まれるわよ」

「やっぱりそうだよな……っていうか、心を読むな!」


月夜も琴音も……いや、琴音さんも無遠慮だろ!

……あぶないあぶない、不注意で死ぬところだった。


で、

「具体的にはどんなのに巻き込まれるんだ?」

「権力争いとか、おちこぼれとか、派閥とか……諸々よ」


面倒だな。

旅と言う理由で逃げるか……。


「私が自由にさせるとでも思う? 義姉は諦めたけどあんたたちは逃がさないわよ」

「お嬢様、これから、一時間ほど振る舞いについて学び直しましょう」

「あ……待って、直すから。誰か……」


連れて行かれてしまった。

ご愁傷様。


「さて、明日に向けて準備するか」


とは言っても、単に道具の中身を確認しておくだけなのだが。

だって、渚、手入れしなくても錆びないし。


『手入れぐらいせんかい!』

『面倒だな。大体、最近抜いてすらいないぞ』

『鎌と戦ったときには抜いっておったじゃろうに』

『かすりもしなかったけどな』


ま、拭いてあげるぐらいはするか。







部屋から見た空に星が瞬く。

流れた星に願うは





平和と記憶を……



エピローグっぽいですがプロローグです

いや、むしろ閑話というべきなのでしょうか


兎にも角にも

読んでくださってありがとうございます

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