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神とともに歩む者  作者: mikibo
王都外出編
52/98

お腹空かして向かうは・・・・・・

「腹減った……」

「悪かったわよ!」

「非常食食べます?」

「今、非常じゃないだろ?ご飯満足に食べられないのは、覚悟してたさ……もちろん、山に入ってからだけどな」

「だから、悪かったって言ってるでしょ!いつまでも根にもってると嫌われるわよ!」

「お前が言うな、お前が……」



山の麓まで後数分。



思ったより距離がある。

お腹が空いているからかもしれないが。


渚に乗れば速いか?

天羽を適応して……


『そんなことしたら、振り落とすぞよ』

『そういうと思ったよ。余計な魔力使うわけにも行かないし、そもそも空飛んだらまずいんだからな』

『我は神の使いとでも言っておけば誤魔化せるのではないか?』

『それでも調べられるから、面倒だ』

『確かにのぅ』




麓の森が見えてきた。



鬱蒼とした森だ。


「虫が来たら、退治してよね。私、ダガーだから。虫とは川があるところでしか戦いたくないわ」

「非常時は戦えよ」

「わかってるわよ」


でも、確かに虫の体液のついたものを身につけるのはぞっとする。

生理的嫌悪ってやつだろうか?


「風使うぞ。『風陣』」


風で全員を包む。


一対一のときは、無言でもかまわない。

だが、相手に術を使うときは、何か言っておく必要がある。

何されているかわからないのでは動きようがないからだ。


魔術の名前は一種の記号である。

それを知るものの中で共通の認識を得られるもの。

火魔術『火球ファイアーボール』と聞いて、水が来るとは誰も思わない。

そういうものだからである。


訓練中、九十九さんは無詠唱ができるにもかかわらず、魔術の名前だけは口に出していた。


だけど、

俺の場合は、魔術ではないから前置きがいる、それだけの話。


「虫除け程度にはなるだろうよ」

「意外とやるわね」

「なんかむかつくぞ。その言い方は」

「な、何よ!人がせっかくほめたって言うのに!」


「この森なんか気をつけることあるか?」

「ないわよ。魔力溜りがあって、魔物が少し強いくらいよ」

「了解」


行くか……あ!


別に面倒なことしなくても。


「『天羽』」


感知すれば……うん。


「どうだったの?」

「多すぎてわからん」

「え?」

「数は1000超えてる。俺の把握能力じゃ無理!」

「1000ですか?あの兵士たちは大丈夫なのでしょうか?」

「僕たちでどれだけ減らせるかが鍵だろうね」

「しかもこれ。形はわかるんだが魔力が感知できない」

『鍛錬がたらんのよのぅ』

『わかってる』

「それじゃあ、意味ないわね。で、どこに溜まってる?」

「ここから南西に行ったところに巣があって、そこに300」

「そこだけ……なわけないですよね」

「あぁ、その奥に600」


後は

「ここから南東に400」

「それだけですか?」

「巣はこれだけだ。途中に向かうまでの間にも何匹か」

「どうします?数からしたら、私1人でも行けますけど?」


さらっと爆弾発言。


「私はダガーが足りないわね」


問題はそっちなのか?


「僕も増えればいけますよ」

「俺はどうすれば?」

「ここで待っていてください」

「そうですね。翔さんは範囲が広すぎます」


『天羽』で旋風。

『紫電』で落雷。

『海渡』で雪崩。

『紅蓮』で火事。




……すいません、自然破壊で。



そして、2人はあっという間にいなくなる。


訓練の賜物……あれ?


全滅させたらまずいってことはわかってんだよな?





「はぁ」

「何よ?」

「いや何にも。単に暇だなと思っただけ」

「仕方ないでしょ」

「あ。そういえば、前から気になっていたんだが」

「何?」

「お前って魔術が使えないんだよな?」

「その言い方は少し適当じゃないけど概ね合ってるわ」

「髪の色ってその色じゃないんだろ?でも、それを変えていたのは魔術だろ」

「そうね。私の魔術は再生と同時に減退を司っているの。癒しと破壊は紙一重ってやつね」

「で?」

「髪の色素を活性化させたり、減衰させることによって見た目を変えることが出来るのよ」

「それだと、他の魔術で見破られたりすることはない?」

「そうね。実際に色を変えているのだから、当然といえば当然なんだけどね」


なるほどね。


「さっきも、再生と減退って言ったけど、それも微妙に違うの」

「どういうことだ?」

「休息の民を象徴するのはこのギルドと同じよ」

「……調和」

「そう。癒しもその一環。これをずっと使うと使われた方は赤子に戻るか、老人になる。これが同時に減退や破壊を意味する」


なんかむちゃくちゃな能力だな。


「知識の民を象徴するのは審判。あらゆることを判断するための頭脳をもつことから知識の民という名前来てるんだけどね。誤解がないように言っておくけど、知識はあっても魔術が使えないこともあるわ。あんたみたいに」

「もしかして、俺は……」

「ない!あんたみたいな馬鹿が頭良いんだったら、この世も終わりよ」

「冗談のつもりだったんだが……」


っていうか、これってあの本にはなかった気がするんだが。


「次行くわよ。細工の民を象徴するのは操作。道具を使う力、作る力。最たるものは偏屈爺ね」


いい加減そう呼ぶのやめてあげ……あれ?

俺あの人の名前知らないんだが?


それよりも、

「麻奈花は違うのか?」

「違うわ。本人もそう言ってたし、私たちには分かるからね」

「誰か他のやつに会ったのか?」

「……なんで?」

「いや、たち・・、って言ってるから」

「そんなわけないでしょ。いい間違いよ」


なんか言い方が嘘っぽいが……まぁいい。



「続きは?」


先を促す。


「剛力の民を象徴するのは、自由。放浪する人が多いって聞くけど多分、このせいよ。自由って言うのは、束縛を受けない。つまり、限界がないってことなの。主に肉体面でだけど」


うわ、それって……最強?


「龍炎さんは?」

「違うわ、だいたい。束縛が嫌いなのに、このギルドに入ってるわけないでしょ」

「それもそうか」


「守護の民を象徴するのは、約束。契約や誓いをかならず守るというところから来ているらしいわ」

「どういうこと?要人警護とかに向いてるんじゃなかったのか?」

「そういった能力もないこともないわ。でも、根本的に交わした約束を守る。例えば、あんたを剣から守ってと言ったら、槍とかは防がないけど剣だけは絶対に通さない。そんな力よ」


でも、それって……


「そう、約束を守るためなら、なんでもしちゃう。だからこそ、彼らは無言を貫き通すか……」


なるほど。

話さなければ、問題ないわけだ。


……?


「か?」

「……私たちの休息の民は調和。つまり、約束と対価を天秤にかけることで、正当な契約を結ぶ」

「ってことは、かなり重要な感じ?」

「そうね」


それから、

と話は続く。


「調和や審判に自由と約束、それから、操作。これらはみんな繋がりあっているの」

「もう一つは?」

「もう一つ?あぁ、それは違うの。私たちではその下に属するものは感じることはできても、神を感じることはできない。それを感じることができる人のことを神とともに歩む者って呼ぶのよ」


美咲が感じることのできない者か……。


『おい!自称神』

『自称じゃないと言うておろうが!』

『自称神って言われて反応している時点でお前の負けだ』

『ま、まさかそんなところに罠があったじゃと!』


崩れ落ちる瞬間が目に浮かぶ。


『病院行け……いや、鍛冶屋か』


追い討ちをかけてみた。


『わしは泣くぞ』

『どうぞご自由に。そんなことよりも』

『そんなことよりも、とは何じゃ!?』

『神とともに歩む者って、お前なんか知らないか?』

『ふん。知ってても答えてやらんわい』


しまった。

つい、いじり過ぎた。


諦めよう。


「で、何でこんなこと俺に話したんだ?まさか!この後、俺は殺されるのか……」

「そんなわけないでしょ!ただ、なんとなくよ!べ、別にあんたを信頼しているわけじゃないんだからね!」




こ、このパターンは!



……記憶がないから判断できない。


記憶喪失って厄介だな。





「天月ってどうしてんだ?」

「ねぇ、ギルドカードってどういう仕チームみか知ってる?」


おい、俺の質問は?

まぁいい。

後で聞こ。


「知らん」

「私のカードは見たでしょ?」


確かに見たな。


「それが?」

「見てて、『情報開示』」


---------------------------


   名前:美咲

   種族:神の涙を注ぐもの

  ランク:c

所属ギルド:全人の門

   戦闘:癒し手

   備考:学生(クラス?)

      ???


我らはこの者が我がギルドに

所属する事を認める。


---------------------------


「おぉ!種族が表示された。でも???は消えないな」

「あんたにもあるでしょ?」

「ああ」

「これには別の表示があるの」


そういって未表示の部分に手を触れる。


---------------------------

未表示部分開示条件


聖獣の召喚

巫女

迷える者






---------------------------



何だこれは?


早速自分ので試す。


---------------------------

未表示部分開示条件


記憶







---------------------------



「……マジかよ。で?それがどうしたんだ?」

「天月来て」


懐かしい銀狼が姿をあらわす。


「開示条件の巫女って……まさか?」

「そう、私よ。あの民の中でも聖獣を従うことができるのは私だけ」


うわー、どうしよ?

実感ないんだが。


「で、迷える者は……記憶のない俺?」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわ」


確証はないということか。


「未表示部分の開示」

「ジョウケンヲショウニン」

「カードがしゃべった?」

「あれ?」


---------------------------


   名前:美咲

   種族:神の涙を注ぐもの

  ランク:c

所属ギルド:全人の門

   戦闘:癒し手

   備考:学生(クラス?)

      巫女たる使命


我らはこの者が我がギルドに

所属する事を認める。


---------------------------


「……これだけ?」

「そうみたいね。って、詳しい説明は一切なしなの?」

「いや、俺に聞かれても……」

「そ、そうね。天月、ありがとう」


顔を擦り付けて帰っていく。


「使命?使命って何のことよ?」


呟く美咲の声。

……結局、謎が増えただけってか?





沈黙。





考え込む美咲。





何もできない俺。






そして、沈黙は続く。






「『紅蓮』」


仕方ないので鍛錬を始める。

とは言っても、ある程度の火力で燃やし続けるだけなのだが。

持っていると訓練にならないから、渚は横においてある。


「『天羽』」


火を風で煽る。


「行けるか?」


渚を手に取る。


「『火の鳥』」


『天の雷』とは違い、二つを同時に使ったところで速度が上がるというわけではないらしい。


ただ、

風を球体状にして放つと……



大気が爆ぜた。



「何やってんのよ!耳が聞こえなくなるじゃないのよ!」


うん、確かに聴覚が麻痺してよく聞こえない。


「っていうか、熱っ!『海渡』!」


爆風とともに火のついた地面に水をまく。


「危なかった……」

「それはこっちのセリフよ!」

「悪かった」


さて、

気を取り直して。


「『紅蓮の具現化』」


目の前に見える美咲に炎が見える。


『この火は何だ?』

『……具現化に成功したのか?早いのぅ』


すねたのは直ったみたいだ。


『あの地獄の中にいて、紅蓮しか得られるものがなかったら、残念すぎるだろ』

『まぁ、確かにのぅ。我の言った3倍の訓練量とは思わなかったぞ』

『で、あれは何だ?』

『命の炎とでも言っておこうか?』

『それは寿命が見えるということか?』

『まぁ、無理とは言わんが、至難の業じゃな』

『じゃあ、何が見えているというんだ?』

『相手の調子くらいじゃな。今の体調や魔力の消費具合、疲労といったものが判断できる』

『なるほど。じゃあ、何で草木は見えないんだ?行きてるだろ?』

『見えないんじゃないんじゃ。草木はこの星とつながっておる。じゃから、その炎は大地、ひいてはこの星全体で共有されておる』


星を見れば見えるってか?


『……話がでかすぎる』

『そう。でかすぎるが故に山から吹き出たり、大地が揺らいだりする。まぁ、神の怒りではないということじゃな』


へぇ!


『いつもなら、我の怒りというかと思ったけど?』

『我はこんなことでは怒らん!』

『病院いけば?……じゃなくて、『火の鳥』はなんだ?』

『寿命と引き換えに、肉体を再生するんじゃよ』

『……使えるのか使えないのかが微妙だな』

『使わないに越したことはないからのぅ』

『確かにな』




ドーン!



爆発音とともに山の一部が崩壊する。


「な、なんだ?」


走ってくる人影。


「サンドワームが出ました。どうやら、向こう側から来たようです」

「向こうにいたゴブリンがこっちに流れてきていたんだ。予想外だよ」

「で、倒す算段は?」

「いえ、倒してきました」

「だろうと思ったわよ。千花ちゃんが神器で吊り上げて、一発ってところかしら?」

「よくわかりましたね。その通りですよ」


Cランクも伊達じゃないか。


「サンドワームは高魔力を放つものに向かう習性があるの。神器や魔力の宿った武具や道具の周りによくいるトレジャーハンター泣かせの魔物よ」


そうなのか?

一撃って聞いたが?


「サンドワームはおなかが弱点なのですがダンジョンや洞窟などの狭い場所では、ひっくり返すのは至難の業です」

「でも、なんでこんなところに?」

「魔力溜りでしょう。先ほど、奥のほうで見つけました」

「報告しないとね」

「ふさげないのか?」

「できるわよ?」


……え?

何故ふさがない?


「魔力溜りがたまたまそこにできただけよ。珍しいことじゃないわ。むしろいいことよ」

「どういうことだ」

「私が説明します。魔力溜りというのは、星が保有できる魔力の余剰分を大気に還元しているだけなのです。そして、星の魔力保有量も世界の魔力量も変わることはありません。さて、私たちの魔力は生まれてくる際に星から分け与えられたものであるというのが正しい認識です。しかし、それは私たちだけでなく動物も魔物も一緒です。また、大半の魔物が南大陸に生息していることもその魔物が魔力を得る量によって強さが変わることも皆さんも知っての通りでしゅね……うぅ」

「その通りでしゅね」


あ、千花が涙目。

美咲もにらむなよ。


「すまん、悪かった。続けてくれ」

「うぅ……魔力溜りが、私たちの手で管理できればどうなると思いますか?」

「どうって……魔物の発生が抑えられるということか?」

「そういうことです。どこにあるかを把握できるので、討伐も簡単です」

「南大陸に多いのはどうしてだ?」

「北大陸の溜り場を危険だという理由から全部閉じてしまったため、南大陸に移ってしまったんです」

「迷信ってやつか?」

「違います。魔物が生まれる場所を封じる至極当然な行動です。ですがそれが……」

「全部裏目に出た?」

「そういうことです」


なるほどな。


「で、どうだったんだ?依頼のほうは?」

「僕のほうは粗方やりましたよ。残っていても、せいぜい50くらいでしょうか?」

「私のほうは一番強いと思われるゴブリンを倒して、残りは350くらいでしょうか?逃げてしまったものも多いので」

「合わせて400か……訓練するのは3部隊から、各100名の新人とベテランで1人当たり1体から2体か?狩りすぎたんじゃないか?」

「サンドワームや他の魔物も多くいるでしょうし、問題ないと僕は思いますよ。まぁ、つぶしすぎましたとは思いますが」

「じゃあ、戻るか?これで依頼終わりだろ?1日で終わるんだったら、別に困らなかったんだがな」

「いえ、私たちの仕事は、まだ終わっていませんよ。討伐が終わるまで、私たちはここに残らなければいけませんから」

「ゴブリン討伐完了まで待てってことか……すぐに終わるだろ」


さて、

「戻るか」

「お腹がすいたわ」





まだ、昼にもなっていないことを俺の頭上で日が知らせている。





作:ツンデレ要素の入ってきた美咲。果たしてでれっとする日は来るのか!?

翔:……ご愁傷様

作:え?……ナニヲウシロデカマエテイラッシャルノデショウ?

美:ダガーだけど何か?

作:ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ!


ε≡Ξ≡Ξ≡Ξ≡Ξ≡ヽ(;゜〇゜)ノアウアウ


千:しばらくお待ちください

明:水でもどうです?森で見つけた泉のですよ

千:いただきます

翔:俺ももら……うわっ!何でここまで飛んでくる?え?ナンデ?


ε≡Ξ≡Ξ≡Ξ≡Ξ≡ヽ(;゜〇゜)ノアウアウ


美:待ちなさい!

翔:俺も巻き添えかよぉぉぉ!

作:次回は山で……!

翔:そんなことしてないで逃げるぞ!

作:まだ、最後まで言ってない!!



ε≡Ξ≡Ξ≡Ξ≡Ξ≡ヽ(;゜〇゜)ヽ(;゜〇゜)ノウワー |EXIT|


美:待ちなさい!




明:平和ですねぇ

千:さっき取ってきた木の実なんですが食べます?

明:あ、いただきます


以上

平和な一幕でした



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