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神とともに歩む者  作者: mikibo
王都外出編
48/98

学校が始まるまでに依頼を

「急ぐように言われたから早く行ったけど実際始まるのは、一週間は後なんだろ?」

「向こうにも都合と言うものがあるからでしょ」


俺は美咲と話をしている。

学校から戻っている最中だが、あきらは円月輪の受け取りに行っている。

千花は月夜と話をしている。

希と悠は後ろの方で話をしている。


「希と悠も会ったときは魔術の心得なんてほとんどなかったのにな」

「必要がなかったんだろうし、教えてもらうのにもお金がかかるわ。独学でやれるほど甘くない、っていうのも理由の1つね。それでも、ある程度の知識はあったんでしょ」

「それでも一週間でできるものなのか?」


修行に行くとき、強制的に休ませられていた希と悠。

二人は修行が始まってから一週間で陽菜に連行されてきた。

だから、修行も一緒にやったわけなのだが……。


「ほんとによく帰ってこれたよな……」

「どこかの誰かさんが修行したい。なんて言わなかったら、こんなしんどいことしなくてよかったんだけど?」

「……ぐ」


反論できない。


「私はどうせ行く運命だったのだろけど」

「そういえば、九十九さんはお前も連れて行きたいとか言ってたもんな」

「ひどいのよまったく」

「ふふふっ」

「むぅ…」


千花が笑っているのを見て、月夜はむくれる。




屋敷に到着する直前に、明が走ってきた。


「お、早いな」

「受け取っただけですからね」

「後で見せてくれ」


実物を見たことはないが投げるものなのだろう。


「いいですよ。ちょっとした曲芸ぐらいならできますので、みなさんもどうです」

「俺、見たい。姉ちゃんは?」

「見せてもらいましょう」

「私も見たいです」

「じゃあ、私も」


返事していないのは美咲だけ、必然的に視線が集まる。


「私は…」

「お前もやれば?」

「え?」

「いやダガー使えるお前なら、できるかな~と」

「そうね……フフッ」


笑いに俺に向けられた殺意を感じる。

……俺何かしたか?

思い浮かぶのは

あの2週間。


樹海の中での地獄の特訓とか

九十九さんの悪魔の微笑とか

特訓時における命の危機とか

食料不足による飢餓状態とか


……ん?

これは殺されても文句が言えない気がするな……。

主に最後の理由で。


しかも、特訓の成果か美咲のダガーの使い方は上達し……


飛んでいる虫や鳥を一撃でしとめる精度を手に入れている。




やばいな。




現実逃避。



手のひらサイズの円月輪が10個。

どうやって飛ばしているのかまったく謎なんだが?

弧を描き、自分に戻ってくる円月輪をまとめて捕らえる。


うん



「早すぎて見えん」

「すごいなぁ」



そして

次は美咲なのだが


正直言って怖い


ダガーでジャグリングをしている。


当然このまま終わるはずもなく。

手が滑ったといって、俺に向かってダガーが飛んでくる。

それは正確に俺の心臓を狙ってきている。


「死ぬ死ぬ死ぬ!それは駄目!うおっ!」


しばらく俺を狙ってから、的を立てていく。

はじめからそうしてくれれば……?

ちょっと待てよ?その的はどこから出てきた?


「気にしちゃ駄目よ」


立てられた的は全部で30本。

多すぎるだろ、投げたやつ使うのか?

その美咲を中心に立てられた的。


そして


頭の後ろでまとめた髪と白いローブが春の暖かい風に揺れる。


突然、右手が動く。


カッカッカッ!


遅れて左手が動く。


カッカッカッ!


手に持っていたさっきのダガーはもうない。


と、

そのまま美咲が手を振る。


カッ!カッ!


ダガーがささる。


手に隠し持っていたのか!

出会ったときもひたすら投げていたし持っているのも当然か。


宙返りをしながら投げていく。


やめろ、目の毒だ。


日光に当てられた白い肌が光る。

それと同時に別のものも捕らえる。

その足にくくりつけられている黒いベルトだ。


美咲がそのベルトに手を触れると


また、小気味いい音を立てて刺さる。


「……ってか。どんだけ隠し持ってんだよ。これなら30本は持っているんだろうな」


目の前のナイフ投げはもはや舞である。

飛んで、回る。

上に、下に、横に、斜めに。

拍子をとるかのように刺さるダガー。


最後の一本を俺に向かって放つ。


俺は動かない・・・・



俺の上を飛んでいた虫は

見事に地面に縫いとめられていた。

美咲が避ける素振りを見せなかった俺に不機嫌そうな顔を見せる。


「お見事」

「さすがですね」

「美咲さんすごいです」

「息とめてたわ」


褒める俺たち。


「……すごかったね、悠」

「……うん」


ほうける二人。



そして、数えた結果。

ベルト一本につき4本ずつ。

片腕につき4本。

片足につき8本。

ローブの下の皮のドレスのスカートの裏に8本。

ローブの裏地に10本

その背中側に8本。


計50本である。


「持ちすぎだ」

「服によって変わるわよ。帽子かぶれば増えるし、夏場になると減るわ」

「そういう問題じゃないんだが」

「準備運動ぐらいにはなりましたけど……これからどうします?」

「俺たちは動いてないがな」


少し考えてから


「依頼を受けようと思うんだが?」

「いいんじゃない。暇つぶしにはなるかもね」

「行きましょう」

「私は仕事があるから……」


大変だな。


「いっちゃんは仕事ですか。どうしましょう」


しばらく逡巡してから


「私も行きます」


「私たちはどうすれば?」


二人はギルド員ではない。


「取り敢えずギルド行こう。話はそれからだろ」


ギルドへ行くと……



「なぁ、美咲」

「ん、何?」

「これどういうことなんでしょう?」

「直ったはずですよね?」


前に来たときよりもひどい状況になっているギルド。


「前回のは天井まで穴が開いてただけだったよな?」

「そうですね。僕が来たときもそうでした」

「で、何で今は二階から上がないんだ?」


ギルドの上から黒い煙が立ち上っている。


そして、

不自然すぎるほどきれいなドア。

上階の大惨事がまるで別のところで起こったような感じだ。


それが突然開く。


「光。俺が作るって言っただろうに」


ぼやきながら出てきたのは冬樹。


「なぁ?これはどうしたんだ?」

「聞きたいかい?」


なんかいやな予感がするんだが


「光が料理を作ったんだよ」

「……?どういうこと?姉ちゃん?」

「分からないわよ」

「「「……」」」


沈黙する。


料理を作ってこんな大惨事を起こす。

そんなやつを俺は……いや、俺たちは知っている。




そう……

美咲だ。



美食家であるあいつが料理を作れないとは知らなかった。




あの特訓の日までは。


俺は記憶喪失だが、簡単な料理のレシピに目を通していたため、焦げたりはしたものの初めてにしては上出来なものができたと思う。

母親不在の千花も冒険者志望の明も同様に料理はでき、どちらも美味しかった。



美咲が作った料理は


まず、

半径2メートル以内のものが溶けた。


そして、

周りの草花がしおれはじめた。


それを見かねて、

最終兵器九十九さんを投入。


そのおかげで、

山は事なきを得た。


と、

まぁ、こんなことがあったわけだが。


前に美咲は光さんに育てられたというようなことを言っていた。


ということは、この料理の師である可能性は高いだろう。


「なぜ、作った?」

「君たちがくるって聞いてたから、光が張り切って……ね」


後は察しろと言外に告げる冬樹。


取り敢えず


「ご愁傷様と言っておく。で、依頼を受けたいんだが?」

「奥にあるから自分で見てくれ。自分のランク以上のものは受けられないから気をつけてくれ」

「あぁ、わかった。それと、この二人を頼む」

「話は聞いている。こっちへ」


と、

そのまま二人を連れて行く。

多分、どこかの店にでも行ったのだろう。


中に入る。

そして、前に見た、依頼掲示板の前に立つ。


「あれ、Bランク以上の依頼がないのは気のせいか?」

「気のせいじゃないわよ。Bランクのが無いのはたまたまだけど、Aランク以上、A,S,2S,3S,Exに関しては依頼が個人的になるの」

「それは依頼人がギルド員を呼ぶ、ということですか?」

「そうよ。Aランクが個人的な依頼。Sランクは国からの依頼。S,2S,3Sの順に重要度が上がるの」

「それではExというのは?」

「これは逆に国に保護される人、つまりはお抱えの人になるのよ。詳細が知られることは無く、存在自体が国家機密扱いで、どこにいるかがわからない。そこら辺で歩いている人がそうなのかもしれないし、物を売っているかもしれない、研究しているかもしれないし、一般兵に志願しているかもしれない」

「へぇ~。まぁ、俺たちには関係ないことだ」

「そうね。依頼を選びましょ」


--------------------------------------

轟草とどろきそうの採集』


受付ランク:F

依頼者  :☆1カルティア道具屋の波崎

内容   :爆音弾に使う轟草の実が欲しい



報酬   :10個につき銅貨3枚

分布   :ソルベーユの森


--------------------------------------


「☆1って何だ?」

「商工ギルドがつけている店のランクね。売られている道具の種類で分けられているわ」


何でも


☆1 薬剤用品:ポーションやエーテルなどの薬、閃光弾などの道具を売る店。香水も。

☆2 武具用品:麻奈花の服屋や偏屈爺さんの鍛冶屋。守護のペンダントなども。

☆3 雑貨用品:針や糸、ペンなどの日用品を売る店。

☆4 娯楽用品:おもちゃや民芸品などを売る店。ご当地のお守りなど。

☆5 本・書籍:魔術書や研究書、地図などを売る店。


だそうだ。


これでいくと

美咲が麻奈花からもらったアミュレットおまもりは☆2だけど

冬樹に買ってもらっていたイルカのペンダントは☆4か。

面倒だな。


「建物とかはどうなんだ?」

「国が管理しているわ。王宮の1階で処理できるわ。ちなみに屋台と行商にこれらの表示は求められていないわ。それから、食べ物を売るところもね」


なるほど。


ところで

「Fランクって何だ?」

「下っ端よ。その代わりどこのギルドでも仕事が請けられるわ。Fランクが請けられる仕事なんてしれているけど。Eランクは正式にそのギルドに認められた証ってところね。」

「だから、あの依頼完了のときにランクが上がったのか?」

「そういうことよ。まぁ、『全人の門』は他のところより厳しいランク審査だけどね」

「どれくらい?」

「1ランクから2ランクくらい。他のギルドでは私でもBランク扱いってことよ」


そうなのか。


また、依頼に目を戻す。



--------------------------------------

『ゴブリン討伐部隊の援助』


受付ランク:E

依頼者  :王国騎士団長

内容   :近日、数の増大してきたゴブリン

      狩りを新規部隊で行う。詳細は騎

      士団まで。

報酬   :相談の上にて

行先   :クラトバール山


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「ソルベーユの森とクラトバール山はどこにあるんだ?」

「ソルベーユの森は西の港町に続く道の途中にあります。クラトバール山はユゥフィーの町の奥にあります。そこは国境付近ということを考えると、この討伐は最近きな臭い帝国への牽制も兼ねているのでしょう」

「私もそう思うわ」


明の推測が美咲によって裏付けされる。


「なぁ?」

「何?」

「ユゥフィーまでいくのに、ミスカル峠を通るんだよな?」

「そうよ。……山賊の話?」

「まぁな」

「あの腹の立つ商人さんの話ですか?」

「そうだよ」

「僕も聞きました。なんでも、被害は無かったものもいちゃもんをつけられて、光さんがキレたと」


違う。


「被害は無かったんじゃなくて、こいつのおかげだよ」


美咲の能力については話しあっているから問題は無い。


「なるほど、すごいですね」

「で、どうするの?このギルドはほかのギルドの応援的存在だから、この二つ以外には請けられるものは無いんだけど?」


しばらくの沈黙。


「俺はこれがいいと思う。他人との違いとも比較できるからな」

「私が評価してもいいけど?」

「魔術込みでの話だよ」

「僕は知っていますから、どちらでもいいのですが」

「私の力は10分の1位でいいと思います。錬度が高いと聞いていたので、兵士さんも橙段くらいでしょうか?騎士団長は青段と聞きました」


まじかよ。

騎士団長より千花の方が強いのか?


「世界最強は伊達じゃないですよ。門下生はがんばって欲しいのですが」

「これでいいわね?」

「あぁ」


気づかなかったが受付のところに人がいた。

落ち込んでいる光だ。


「承認して頂戴」

「はい」

「元気出して……ね?誰にも失敗はあるから」


お前が言うな!

と、

心の中で突っ込んだのは俺だけじゃないと思う。


「行くか」


扉を開けた。


明日、騎士団のところへ行って……そういえば、俺。

捕まったことあるけど大丈夫なのか?




不安を胸に明日へ向かう。



2012/05/13 ペンダントの情報の書き忘れを修正

2012/06/25 会話の口調修正

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