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神とともに歩む者  作者: mikibo
初仕事編
40/98

護衛が終わったのに大変!下

Side 翔



九十九さんを呼ぶまでもないだろうと思い、しばらく待つ。

嫌われているから別にこいつのことで動揺するということはないと思っていたが

と、砂糖壺に入れた紅茶を飲む。


……甘い、甘すぎる。




紅茶を飲み干し、ため息をつく。


「美咲がいれば、治せるのにな」


俺の呟きは、誰にも届かない。


「いや、それは美咲様にも治すことはできないでしょう」


……前言撤回、いつの間に。

振り返ると声の主である九十九さんが立っていた。


「それは過労です。翔様が気にすることではございません」


おおよそ、一般の同年代の者では考えられない症状だ。


「何で、そんなことに?」

「月夜様は家、ここの親子は私たちには何も言わないお方達です。抱え込んでしまい気づくのがいつも遅くなってしまいます。まったく、親子そろってここまで似ているなんて、やめて欲しいですね……でないといつか取り返しの付かないことになってしまうかもしれません」


後の方は聞かなかったことにしておく。


「でも、なぜだ?千花がいたじゃないか」

「千花様は、お嬢様にとって家族です。家族に近しいと自負させていただいている私達にですら話さないことを話すと思いますか?」



と、言って一礼して出て行ってしまった。

家族には心配をかけたくない……か。

俺の家族はどうなんだろうか、顔も知らない家族が。

そんな疑問を振り払う。

すべては記憶が戻ってからだ。


ドーン!


音のした方向を見て信じられないものを見た、重厚な作りの扉が眼前に迫ってきていた。

俺は『紫電』を使う間もなく、吹き飛ばされていた。

大きすぎる痛みはどうやら麻痺するらしいな。

そんなことを考えながら、俺は壁を突き破り三階から投げ出された。




Change to side 千花



慌ててノックもせずに扉を開けたんですが、身体強化をしていたのを忘れて、思いきり飛ばしてしまいました。

急がないと大変だと思ったので、ここまで急いできたのですがよく考えれば、そこまで急ぐ必要はなかったのではないでしょうか?

翔さんもいることですしね。


壁に穴が開いています、後で謝らないといけませんね。

部屋を見渡して、いっちゃんの姿をベッドに見つけ……


「それにしても、翔さんはどこへ行ったのでしょうか?」

「どうかされましたか?」


あ、九十九さんですね。


「すいません。焦って扉と壁を壊してしまいました」

「いいですよ。土魔術『修復リペア』」


不問にしていただいてもいいのでしょうか?

いくらこれほど簡単に直せるとはいえ、それなりの魔力は使います。


「今日は、翔様との鍛錬もなかったため、魔力に余剰もありますのでお気になさらず」


そういう言い方されても気になります。

でも、私にできることはないので……あ。


「翔さん見ませんでしたか?」

「いえ、部屋から出て行くのは見ておりませんが?」


ってことは、この部屋のどこかに隠れているわけですね。

でも、どうして隠れる必要があるのでしょうか? 

……まさか、そんなまさかですよね、いっちゃんとやましい事したとかではないですよね。


「千花様、殺気がもれております」

「すいません」


自分では気づかないうちに出ていたようです。

私も精進が足りませんね。


衣装ダンスや奥の部屋をのぞきますが、見当たりません。

どうしたんでしょうか?

もしかして…


「翔さん、さらわれたりしてないでしょうか?」

「大丈夫ですよ。翔様はかなりの実力を持っておりますし、運び出せば気づきます。魔術を使えば、陽菜が気づくでしょうし、翔様だけを狙う理由がありません」

「そうですね」


あれ、この椅子不自然ですね。


「目の前にある椅子は1つ、机の上にはカップが2つありますね」

「そうですね。たぶん下に落ちたのではないでしょうか?」


……なぜかとてもいやな予感がするのですが?


窓から覗き見下ろすと、壁の残骸の山があります。

あ、椅子の足が見えますね。

折れてないか確かめてみましょう。

「風魔術『飛翔レビテーション』」

と、唱えながら飛び降りてから、私は後悔しました。


そう言えば、魔力は切れていたのだと……




ドーン!


痛い……?

かけたのに魔力切れは想定外です。

残骸の山に落ちたはずなのですが、痛くないですね、むしろやわらかい。


「グフッ!」


変な声が聞こえるのですが、と声の主を下に見て絶句。


翔さんです。


「あわわわわわっ!翔さん大丈夫ですか?」

「危ない、死ぬところだった」


声が死にそうです。


「何でこんなところで埋まっているんですか?」

「いや、な。なんか知らないが扉が飛んできたんだ」


あれ?

これはもしかして


「避ける暇もなく、3階から吹き飛ばされたんだよ」


私が原因ですか?

見たときから、たぶんそうではないかと、気づいてはいましたが……


ばれなければ大丈夫でしょう。


「千花様、修理が終わりましたから大丈夫ですよ」

「……………。」


これはまずいですね。

くるりと振り向き逃げ……られませんよね。

私の肩に置かれているのは、男の人の手。

当然、その手の持ち主は……


「こらっ!翔、私の千花ちゃんに何してんのよ!」


ドゴンッ!


……飛んでいきました。

どうしましょう?

でも、美咲さんの私の・・ってどういうことでしょうか?


遠くから


「俺って不幸だ」


確かにそうですね。

私が原因なのもありますが、確かに不幸ですね。

声には出しませんが、いろいろと残念ですね。


「今の全部、声に出てるからな」

「そうでしたか?いっちゃんはどうしたんですか?」

「過労だろうな。手紙やら何やらで精神的にな……そうだ、美咲」

「何よ?」


と、少し離れたところに行ってしまいます。

聞きたいんですが、完全な獣族ではない私の聴力では何か言っているのかわからないが、聞き取れないのです。

分かっていてやっているなら、翔さんはなかなかやりますね。





何を話しているのでしょうか?

気になります。




Return to SIDE 翔


ひどい目にあったな。

「日ごろの行いよ」


…俺にプライバシーはないのか?


「もちろんよ。あんたみたいな変態にはこれで十分よ」


俺の扱いがひどすぎるぞ。

っていうか、心を読むな!


「で、だ。知らせておきたいことがある」

「あら?偶然ね、私もよ」

「多分、同じことだろうな」

「麻奈花が言ってたことよ」


複雑だ、麻奈花と一緒なんてな。


「で、どうする?」

「どうもしないわよ。私は傷ついたら癒す、あんたが闘う。それだけよ」

「なんと単純明快だ」


まぁ、俺には癒す力はないっていうか…


「魔術って誰でも使えるのか?治療魔術は自分でできればいいだろ?」


まぁ、魔術が使えない俺が聞いても意味はないような気がするがな。


「魔術の部分は知らないのね」

「学ぶ時間がなかったからな」


実際は、鍛錬していたから、そのために必要な攻撃系魔術についてしか聞いてないのだ。


「魔術の属性だけじゃなくて、使用方法にも適性があるわ」

「使用方法?」


やっぱり、少しでも九十九さんか陽菜さんに聞いておくべきだったか。


「攻撃、防御、補助、回復、生成。この5つよ。大体このうちのうちの2つ使えるのが一般的ね。属性は1つが一般的なのよ」


あ、これ知ってる。

前にも聞いたぞ。


「何の話をしているのですか?」


一人に耐えられなくなった千花がこっちに来たようだ。


「魔術の話よ」

「え?じゃなんで私から離れたんですか」

「いや、勘違いだ。で、魔術の使えない俺と回復しかできないお前は、どういう位置づけだ?」


答えにならない答えを返しながら、強引に話を進める。


「学園で言ったら、間違いなくFクラスよ」

「Fクラス?」


なんだそれは?

月夜と話したときはそんな話は一度も出なかったが?

ただ、同じ学年に分けるとしか

…なるほど、それが人数多いという理由からのクラス分けか。


で、

「クラス分けって言うのは、魔術の総合的力によって決められたものよ」

「でも、騎士とかも育てる学校でもあるんだろ?何で、魔術が基本なんだ?」


不公平じゃないかと、言外に告げる。


「魔術が戦局を大きく変えてしまうからよ」


そして、美咲の言葉に千花が続ける。


「騎士一人の力は高くても、それがまとまってあるにしても、圧倒的な実力差や練度、そして幸運がない限り傷を負わずに闘うことは不可能です。けれども、魔術は大人数で術式を組めば戦局を変え、下手をすれば、戦いそのものを終わらせてしまうほどのものです。ですから、一般的に魔術の使えるものが優遇されるのです。もっとも騎士になる人でも魔術は使えますし、魔術を使える人の方が強いのであまり関係はないのですが」


ってことは


「クラス分けはどういうことになるんだ?」

「クラスはS~Fまであるわ。Sが全適性、または4つ以上の属性が使えること。Aが4つの適性と3つの属性が使えること。Bが3つの適性と2つの属性。Cが2つの適性と2つの属性。Dが2つの適性と1つの属性。Eが1つの適性と1つの属性。Fが先天的に魔力が少ない者や特殊な魔術しか使えない者、魔術の使えない者がいくところよ」


ってことは、俺らは一般人にも劣るということか、ショックだ。

話を聞く限りではDクラスが平均ということだろう。


で、多分…

「上位層は貴族か?」

「そうなるわね」


教育レベルの差異ってやつか。


千花の方に向く。


「月夜はどうなんだ?やっぱり、貴族の最上位だったらSクラスなのか?」

「いっちゃんですか?Fですよ」


予想外の回答に驚きを隠せない。


「え?ほかの魔術は使えないのか?」

「使えないのです。いっちゃんだけじゃなくて、琴音さんも。それに、幻は系統外魔術で王族しかその存在を知らされてないのです」


その秘密であるはずの情報をなぜ知っているのかが知りたい。


「つまり、学園でみだりに使うこともできないってことね」

「だから、Fなのか」


存在を隠すために、と美咲の説明(?)で理解する。


「って言うか俺たちに教えても大丈夫なのか?」

「大丈夫です。沈黙の誓いの儀式は済ませていますし、知るべきときに知らせるのは許可されていますから」


誰かにしゃべったら死ぬ、というわけか。


よし、それなら別のことを考えよう。

死ぬこと考えるのは気がめいるだけだからな。


「ところで、幻が系統外魔術でもたいしたことはないんじゃないのか?」

「とんでもないですよ。幻の属性は無属性とされています。ですが、無属性の魔術というのはというのは、属性のない魔術という意味ではありません。属性をつけることのできない魔術なのです」


それがどうしたんだ?


「無属性の魔術には、他の魔術と違って魔術にランクがついているわけではなく、その魔術の体系そのものにランクがついているのです」


さっぱりわからん。

千花も自分で何言っているのかわかっているのか?


「例えば、火魔術『火弾ファイヤーボール』は初級。あんたが受けかけた雷魔術『百雷インデグニション』は上級と呼ばれているわ。でもね、幻魔術は違うのよ。幻魔術というだけで、上級以上になるのよ」


ってことは、幻はチートか?

あんなものが誰でも使えるようになったら、俺の命がないから一般的ではないのは安心するべきなのだろうか?



ほかにも疑問に思っていることがあった。


「そういえば、何で美咲はFなんだ?前に聞いた話だが、回復が使えるのはかなりすごいんだろ?それしか使えないとはいえ、かなりの能力なんだろ?」

「私はばれても良いとは言ったけど、積極的にこの力をばらそうとは思わないわ。だって、ばれたら、時と場合によっては私とあんたは解剖決定よ」

「何で、俺まで?」

「魔術が使えないって言ってるのに、異能が使えるのは変でしょ?」


確かに、魔術が使えないのに風とか使えるからな。


「ちなみに、千花はどうなんだ?」

「?」


首をかしげている。


「クラス」

「Fですよ」

「なぜ?回復と補助が使えるんだろ?」

「少ししか使えないんですよ。私は獣族の先祖がえりですし」

「魔術が少ないって言うあれか?」

「そうです。私は中途半端なんですよ。人ほど魔術が使えず、獣族ほど身体能力も高くないんです」


悲観的だなぁ。


「人より身体能力が高くて、獣族より魔術が使えるじゃだめなのか?」

「そうよ。っていうか、私たち話しすぎよ」


グ~!!


俺と千花は美咲を見る。


「な、何よ。昼ごはん食べてないからお腹がすいているだけよ」


こんなこと前にもなかったか?

と、中庭から移動する。



食事をする。

食べまくる美咲。

当たり前になってしまった風景。


しばらく三人で行ったことのない学園に思いをはせ、月夜が目覚めたという話を聞き部屋に向かう。


「元気そうだな?」

「おかげさまで」


倒れたときの顔色の悪さはない。


「じゃあ、みんな外に行っててくださいますか?」


千花の威圧感に部屋を出る。


「私も~」


月夜がベッドから出ようとして……あきらめる。

今の千花は逃げるにかぎる。

俺に視線で訴えてくるが、無視する。



自分の命は一番大事です。



二時間が過ぎ、外でボーっと寝転がって空を眺めていた俺に気配が近づく。

体を起こし、確認すると月夜だ。


「フフフッ、仕返しよ」

「これ、もしかして。だいぶまずいか?って言うか逆恨み?」


と、呟きながら逃げようと後ろを向くと月夜が立っている。

自分の顔に流れる汗を感じる。


「こんなところで、幻使うなよ!!」


俺の上げた叫び声とともに、意識は途絶えた。







----そして





夕方、俺は大音量の爆音で、目が覚めた。




起き上がる。

少し頭が痛い。


ベッドから降りながら傍らに置かれた渚をつかむ。

どうやら、まだ寝ているらしい。


コンコンコン!


「起きているぞ」


ガチャ!


入ってきたのは、九十九さん。


「失礼します。翔様、体のほうは?」

「大丈夫です。それよりも何が?」


まずは、状況を把握しよう。


「襲撃です。それも暗殺というよりは、殺せればそれでいいというおろかな決断をなさったようです」

「九十九さんは、むかわなくても?」

「陽菜がいるので大丈夫です」


九十九さんに聞きたかったことが1つ。


「なぜ、国は動かないんですか?直系ではないとは言え、王位を継ぐ可能性を持っているんですよね?それならば、騎士などが動いてしかるべきだと思うのですが?」

「動くことはできません。民に被害を及ぼしてはならない、これが私の主の願いです。ですから、騎士はすべて町を巡回しています。人質にとられないためにもです」


ということは、


「行きましょう」

「今回は30人以上の規模です。そのアジトは、麻奈花様が捜索中です。1時間もあれば判明するということですから、安心してください」

「場所は?」

「今回は土魔術『要塞フォートレス』が間に合ったので20分は持つでしょう」

「ってことは、それまでにどうにかしないといけないということですね?」

「はい、その通りです」


迷子になるのは嫌なので


「天羽の具現化」

窓の縁を蹴って跳ぶ。

翼を広げ、高く上がる。

風による索敵を行う。


敵の狙いは

「一点突破か」


強化された壁をぶち破ろうというのだ。

千花はどこだ?





……いた。


ローブを纏った5人を相手に戦っている。

どうやら神器は使っておらず、何かを振り回している。


美咲はというと

魔術を避けつつ、ナイフとかフォークを投げている。


「食べることが好きなら、食器も大事にしろよ」


と、呟く。


この国には殺人犯でも殺していいという法はない。

それが後に、処刑されることになってもだ。

正当防衛なら認められるが、九十九さんや陽菜さんがいる状況では過剰防衛だろう。


渚に手をかける。

金属特有の小気味良い音を立てながら、抜ける。


「『天破』!」


つい先日に、百雷を斬った技だ。

どんな効果の技かもわからないが、体は使い方を覚えているらしい。


千花に集まっている五人をまとめて飛ばす。

『天破』は斬るのではなく弾くようだ、と分析する。


そして、千花の近くに降りる。


「なんでもありですね」

「そんなことよりも、なんか言うことないのか?俺はあの後八つ当たりを受けたんだぞ」

「そういうこともありますよ!」


ひどいぞ、千花が地味に一番ひどいんじゃないか?


「まぁ、いい。で、今はどういう状況だ?」

「先ほどの技で5人、その前に2人、美咲さんは3人のようです。私が一番少ないですね」

大体探った結果、相手の人数は29人。

「後、19人か……で、その布で戦っていたのか?」


千花の手にかけてあるのは、身長ほどもある布だ。


「聖布と言いまして、魔力を込めると硬くなる性質の物です。私みたいに魔力が少なくても使える上に持ち運びも簡単でお腹に巻いておくと防具にもなる優れものですよ」


棒で戦えていたのか、聖布って言うのは思ったより強いんだな。

まぁ、ただの布にしか見えないけど。


「ッ…『天破』」

と、突然頭上に展開された魔術式を即座に吹き飛ばす。

しかし、それは囮で目の前に、氷の針が無数に飛んでくる。

天破を使った後で、体が戻っていない。

しかし、『紫電』という札を相手に見せるわけには……


ピシピシピシッ!


目の前に広げられた布に全て止められる。


「魔力を使えばこんなこともできるんです」


いや、なんか。

ただの布とかなんとかと心の中で馬鹿にしていてすいませんでした。



「私は向こうにいってきます」


と、言ってこの場を俺に任せて行ってしまう。


そして、俺は攻撃してきた術者に近づく。

今日の敵はこの前より弱い気がする。

まず、ゴーレムのやつがいない。

隠れているのかと思ったらここらいったいにはいないらしい。


「切り刻め 風魔術『風刃ソニックスラッシュ』!」


不可視の刃を天羽で認知することによってかわす。

しかも、詠唱がある。

これの違いは何だ?

頭の隅に引っかかっている違和感がある。

が…それを呼び起こすほど時間の余裕があるわけでもない。


「貫き 燃え上がれ 火魔術『炎槍フレイムランス』!」


発動直後で硬直している敵を殴って沈める。


一息ついた瞬間に気配を感じ、後ろに飛ぶと足元に矢が刺さる。

気配の察知もお手の物だ、なにせ数が違う。


扱える者が少ない光魔術である光弾をどれくらい飛ばせるのか陽菜に聞いたら

展開して教えてくれた。


その数2万以上。


だからこんなものはたいしたものではない、一本しか飛んでこない上に直線移動に誰が当たると言うだろうか?


一気に突っ込む。

リロードまでに時間がかかるようだ。

と、電撃を気づかれないように食らわして気絶させる。

本当だったら、殴ってもいいのだが、それは女性だった。

大して気にはしていないつもりだが、やはり後味が悪いので『紫電』を使った。




それから、俺は9人倒した。

時間にして

30分ぐらいだ。







「名誉挽回です。私10人倒しました。最後の人はてこずりましたが」

「喜んでいるのを無視して俺は言う。今回の襲撃は変じゃなかったか?」

「無視してないじゃないですか。でもそうですね。全体的に弱い感じがしますね」


どうやら、気づいていたらしい。


「千花様、翔様。どうぞこちらへ」

「わぉ!」


突然現れた九十九さんの声に驚く。


連れてこられたのは、応接間。

黒いローブのやつらがずらり。


「どういうことですか?」


九十九に質問する千花に、声がかかる。


「私が説明するわ」


現れたのは、琴音……さん。

あぶない、睨まれたよ。


「今日のは、試験よ」

「?」


千花と顔を見合わせる。


「ギルド適正試験のことよ。防衛側と攻撃側、この二つに分かれて行うのよ」

「そんな話は聞いてないんだが?」


俺の声に黒ローブズ(←俺が勝手に名づけた)も頷く。


「だって、教えたら面白くないじゃない……冗談よ。だから、そんな目で私を見ないで!」


ますます白い視線が集まる。

と、琴音さんの姿が崩れ土になる。


「みんながそんなに見るから、壊れちゃったじゃないのよ」

「いや違うだろ」


これはこの部屋にいる全員の気持ちを代弁した言葉だと個人的に思っている。


で、

「なぜそんなことを?」


黒ローブズのひとりが聞く。

俺と戦ったやつではないと思う。


「だから、試験よ。ギルドに入るには判断力と思考力、それを実行に移せる胆力を見るのよ」

「で結果は?」

「合格者発表をします。翔、千花、あきら

「なぜ、僕なんですか?攻撃側で僕は負けましたよ?」


さっきのやつだ。


「勝ち負けじゃないわ。数の差に驕り、戦闘も連携も訓練しなかった中で、あなただけは訓練を怠らなかったわ。」

「でも、完敗ですよ?」

「20分です」

千花がいきなり言う。

「へ?何の話ですか?」

さっきのやつ…明は変な声を上げる。

「じゃあなおさらね」


ん?


「俺には話が全く見えないんだが?」


|その他大勢(明以外の黒ローブ)も頷く。


「最近はここには来ていなかったので、知らない人も多いでしょうけど…」


と、琴音の言葉を切って


鎌が召喚される。


「神鎌流次期当主をつとめる千花と言います」

「……勝てるわけないだろう!」


と、口々に騒ぎを起こす。

あぁ、うるさいな。

それでも、確か明だったか?負けたにもかかわらず、合格だ。

ならば、この合格基準は勝敗ではない、ということだ。



ドンッ!


大気が震える。


バタバタッ!


目の前にいたやつらが倒れていく。


「すいません。つい気絶させてしまいました」

「これは、お前がやったのか?」

「明でいいです。そうですね、僕がやりました」


見えなかった。

そう不可視の何かが起きたのだ。


「気ですよね?さっきも使っていましたね」


千花は何かに気づいたようだ。


「そうです。衝撃程度しか起きないので、まだまだ精進がいりますが」

「気っていうのは魔術のことか?」


明は少し考えた後、口を開く。


「違います。体に宿る力の一部でしょうか?」

「?」

「気が多い人や濃い人は、回復速度が速かったり、肉体が強靭であったりするのよ。体外に気を放てるのは、多い証拠ね。これは先天的なもの、その密度は訓練しだいよ」


と、話しながら突然、美咲が扉を開けて入ってくる。


「へぇ」

「あのどちら様でしょうか?」

「美咲よ。回復しかできないけどよろしく」

「明です。気しか使えませんがよろしくお願いします」


「食事よ。早く行きましょう」

「さぁ、食べよう!」


気絶しているやつらを放って

俺たちは食べに向かうのであった。






2012/05/25 矛盾修正

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