謎多き少年とその目覚め
戦闘シーンはまだまだ先です。
こういうことは、良くある。
魂の許容量を感情が上回ったときに、魂を守るために使われるのだ。
魂の許容量は年や感情が安定していくにつれて多く、大きくなっていく。
また、封印とは、応急処置として国から許可された一部の医師にのみ許可されているとても高度なものであり、一時的に表層からその魂の居場所を移すものである。
しかし、この少年の封印は違った。
移した場所があまりに深すぎるのだ。
否、ここまで深いと移すというよりはむしろ、封じたといったほうが正しいのかもしれない。
そして、その深さは……
下手したら、一生思い出すことがないくらいであった。
一週間がたったが、その少年の目が開くことはない。
あれほど深くに封印されたが故に、封印しきれなかった細かな記憶の欠片が数多くある。
それの処理が、いまだ眠り続けている原因だろう。
だから眠るのは、しょうがないことである。
しかし・・・。
「そろそろ目を覚まさないと、魂より先に体が先に死ぬわね。しょうがない、あれを使いましょうか。」
と、少女はつぶやいた。
そういってしょうがないといいつつも、心なしか楽しげに天月に近づいていき、背に乗せていたちいさな袋に手を伸ばした・・・。
さて、少年はというと。
少年の意識は漂っていた。
時々、よくわからない風景が断片的に現れる。
それ以外は、上も下もない真っ暗な世界である。
理由は、少年の記憶がないために少年の魂の世界の中で形をとるものがないからである。
が、ここにいる少年には知るよしもない話である。
その真っ黒で空っぽな世界で少年は、寂しさや悲しさに耐えかねて、膝を抱えて泣いていた。
少年の肩に手が置かれる。
少年が顔を上げてそちらを見ると、きれいな銀色の髪をした女の人であった。
「誰?」
女の人は、それには答えずにやさしく言った。
「翔、おきなさい。あなたの帰るべき場所へ。逃れられない宿命の場所へ。」
突然、真っ暗な世界に一条の光が差し込んだ。
光はどんどん大きくなり、少年、いや翔を温かく包み込んでいった。
この世界の単位などは、後の話でも出てきますが、
細かいところは、違いがありますが
一日とか一週間といった概念そのものには手を加えていません
2011/10/31文章改正
2012/01/28文章改正・少量加筆