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神とともに歩む者  作者: mikibo
初仕事編
39/98

護衛が終わったのに大変!中

章で区切ってみました


 SIDE 翔




「学校は知っているかもしれないけど文武通りにあるわ」


そういえば、そうだったな。

っていうか、俺たちが通うことになるってどういうことだ?

麻奈花が言っていたことを思い出す。

まぁ、いい。

麻奈花が考えていることが俺にわかるわけがない、むしろわかりたくない。

考えることを諦めて、月夜の話を聞くことにする。


「12歳以上18歳以下。これが、この学校の入学条件よ」

「俺は多分、15位だから行けるか。って15って言うのは麻奈花が言ってたんだがな」

「麻奈花さん?どこかで聞いたことがあるような気が……まぁ、いいわ。この年齢を満たせばだれでも、学校で学ぶことができるわ」

「具体的には何を学ぶんだ?歴史とかなら、本を見て自分で学べるだろ?」

「それは自分で学ぶこともできるけど、体系的に学ぶことは難しいし、より専門的な知識を持とうと思ったら図書館に入らなければいけない、その二つを解消することができるわ。それにそれだけじゃなくて社交的な意味もあるわ。貴族の多くというよりほとんどが入学しているわ。そうそう、平民から皇族まで誰でも入れる、種族も国籍も関係なくね。これが、一番の見所かしら?」


それはすごいな。


「まぁ、この国の人じゃない場合は、厳しい審査があるけどね。敵国の隠密スパイとかに入られたら目も当てられないしね」


なるほど。


「で、さっきの質問だけど。何を学ぶか……っていうと。さっき言ったような社交能力の向上、武術や魔術、神術の修練、研究に一般教養かしら」

「自分で学ぶことができるといった手前、言うのも何なんだが。なぜ一般教養が一番最後なんだ?」

ふつう一番初めに言わないか?

「一番重要視されてないから」

「どういうことだ?」

「生きていくのにそんなに多くのことは知る必要がないということよ。魔術の運用の向上の研究に武器の作り方を知る必要があると思う?」

「まぁ、ないな」

「要するにそういうことよ。必要なことだけ知ればいいってこと。望むのなら、すべてを学ぶことができるけどね。でも、知識は諸刃の剣であることを忘れてはいけないわ」


自由が売りって事か。

そう考えると同時に麻奈花が言っていたことと同じ『諸刃の剣』という言葉に、はっとする。


「授業は自分で決めて、スケジュールを立てるだけ」

「お前のはどうなんだ?」

「面白くないと思うけど」


差し出された紙には


--------------------------------------------


日曜日 なし  なし  昼 なし  なし  なし

月曜日 政治学 歴史学 昼 魔術学 政治学 武道学

火曜日 歴史学 政治学 昼 なし  魔術学 理論学

水曜日 魔術学 薬草学 昼 地理学 算術学 神術学

木曜日 算術学 なし  昼 魔術学 なし  論述学

金曜日 なし  算術学 昼 社交学 社交学 なし

土曜日 論述学 算術学 昼 政治学 武道学 神術学


--------------------------------------------


なしってのは受けていないって事なんだろうが、大変なんだな。

で、疑問がひとつ。


「なぜ、最近行っていない?」

「長期休暇ってやつよ。もう、今年度は終わっていて来月の花の月から、新しい年度が始まるわ」

「始まるとどうなるんだ?」

「新入生ってやつよ」


まぁ、よくわからんが行くことはない……はずだ。

いや、多分このいやな予感は……あぁ、これは行くことになるだろう。

仕方がない……あきらめよう。

で、授業が自由なら……


「同年代のやつらと会う機会がないこともあるということか?」


別に俺はそういったのは気にしないっていうかそんな機会はなかったが、同世代じゃないと話しかけ辛いやつもいるかもしれない。


「結構人数いるからそんなことにはならないだろうけど、一応、クラスっていうのにも分かれているわ」「クラス?」

「同じ年だけを集めて、分けたものの事よ」


へぇ、そうなのか。


「聞いてきた割には反応薄いわね」 


ギクッ!


聞いた理由を聞かれて、特にない。なんとなく。って答えたら俺、またあの地獄を見ることになるのか?

俺は、月夜に嫌われているみたいだしな。

幻の地獄、下世話な人は役得とか考えるのかもしれないが、次やったら俺は殺されるだろう。


「……まぁ、いいわ」


ふぅ、どうやら免れられるようだ。


「理由がないのに、聞いてくるんなんてことをしていたら、私の幻で……」


ヤバイ、めちゃくちゃ理不尽だ。

俺、嫌われすぎじゃないか?


まぁ、いい。

諦めた。

最近、諦めることに慣れてきたような気がする。

嫌なことだ。



ところで、まったく必要なかったから、気にしてはいなかったが……


「今、何曜日だ?」

「芽の月5日火曜日よ」


知ったところで当然、今までと同様に必要はないのだがな。


「時間はどうやって知るんだ?」

「そこに時計があるでしょ」


指差す先には、小さい時計が置かれている。

現在の時刻は


10:12


話は始まったばかりだ。



Side Out


And


Change Side 千花



美咲さんと今、市場を歩いています。


「いっちゃんの誕生日に何を贈ればいいのでしょうか?」

「千花が選ぶことに意味があるだけで、何を選ぶかはあんまり問題じゃないと思うわよ」


そういうものなのでしょうか?


「それでも、まぁ、実用的なものが好まれる気がするわね」

「実用的なものですか?」

「そうね。例えば、髪飾り。まぁ、月夜はそんなに髪長くないから、必要ないと思うけどね」

そうですね。


いっちゃんはショートヘアーですからくくる必要はないんですが、あっても困らないでしょう。


「あっ」

「どうしたの?」

「私、冬樹さんにペンダント買ってもらったんですよ」


ずっと見せるのを忘れていた、イルカのを首から取り外し、美咲さんに見せます。


「可愛いデザインね。で、これがどうしたの?」

「これとおそろいのを探します」


前に行った店の匂いは覚えています。

露店ですが今日もやっていることを祈って行きましょう。


「こっちですよ」

「千花って、獣族?」

「よく間違えられますが人間ですよ。私の先祖にその血が混じったみたいなのですが、その先祖がえりですね。さすがに、本職じゅうぞくに比べると劣りますが、それなりの身体能力は持っていますよ?」

「ふーん。ってことは魔術は?」

「一応、人間なので使えますが、攻撃や治療は使えません。補助だけですね」


それすらもせいぜい、支援程度にしか使えないのですが。


「そうなんだ。獣族って、魔術が使えないからどうなのかなって思ったんだけどね」

「でも、獣族と同じように獣化は使えますが大して強くもなりません。いうなれば中途半端なんですね」


まぁ、魔術がなくて困ったことはないですし、


「神器のおかげで、簡単な魔術は使えますからね」


何でそれが使えるかもわからないのですが、使えるなら使おうということです。

目に数日前に見た屋台を捉える。


「あっ!あそこです」


近くに行くと

「おや、あのときのお嬢ちゃんじゃないかい?」

「えっと?」


どちらさまでしょうか?


「この屋台をやっているのは私だよ」

「覚えていたんですか?」

「最近買いに来る人もいないからね」


と、からからと笑う。


「で、何のようだい?」

「これと同じ物がほしいんですが……」

「ないよ。この店のものはすべて一点物だからね」


うぅ、当てが外れてしまいました。


「別にいいんじゃないの?おそろいじゃなくても」

鉄の胃袋ブラックホールがなんのようだい?ここでは食べるもんなんて売ってないよ!」

「私は食べるのが好きなだけであって、何でもかんでも食べるわけじゃないわよ!」

「ほぉ!三度の飯より好きなものは四度の飯といわれるあんたが何のようだい?」


クックックッ!

笑いがこらえきれません。


「千花ちゃん。後で覚えておきなさい!麻奈花さんのところによるからね」

「そ、それだけは」

「あら?千花ちゃん、こんなところでどうしたの?」


……これ振り向いちゃいけないんですよね?

振り向いたら、私、この後、地獄行きじゃないですか。

でも、これ振り向かなかったらどうなるかわからないですし……。


一言で言うと私は


ピンチです。


遠くを見上げると、時計塔が10時の半ばを目指して進んでいる。


私の地獄はまだ始まってすらいないのです。






Side Out


And


Return To Side 翔



はぁ、疲れた。

肉体的な疲労ではない。

これは精神的なものだ。


あの後、月夜の話が始まってから、時計の針は一周した。

しかも、俺には理解できない話だ。

五杯目のお茶を飲みながら、少し顔色の悪い話し続ける月夜を見る。

言ったこともない学園の予備知識なしで、学校の怪談とか名物先生とか話されても理解できるはずがない、当然のことだ。

っていうか理解できるような奴がいたら、俺が人外認定してやる。

それを延々と聞かされているのだ。


「ちょっと、聞いてるの?」

「ちゃんと顔見て聞いてるじゃないか」

「目を見て聞きなさいよ」


当然といったら当然なのだが、話に耳を傾けてはいない。

ヤバイ…わけがない、俺には瞬間記憶能力がある。

使い勝手は悪いが……


「教授の頭がかつらかどうかなんて正味俺の知ったところじゃない。大体、俺はその教授のことを何一つ知らないのに、何を理解しろと?」


ついに、俺はまともに口を開く権利を得る。

聞いていたことも同時にアピールする決していていたわけではない。


「……確かにそうね。って、そのことがわかっていたなら、とっとと言いなさいよ!」


理不尽だ、あまりに理不尽すぎる。

俺がそのことに気づいてから何度話しかけようとしたことか。

しかも、俺が口を開こうとすると、


「私が話している最中なのよ!邪魔しないで!」

とか

「何よ、うるさいわね!後にして!」

とか

「これ以上、私の邪魔をしたら、どうなるかわかっているわよね?」

とか言って、ずっとお前の方が邪魔し続けていたくせに……なんてことは口が裂けても言えないことなので……話を変える。


「ところで、大丈夫か?」

「何がよ?」

「ずっと話っぱなっしだったから、顔色が悪いぞ」


さっきから、ずっと月夜の顔を見ながらぼーっと考えていたのだから、当然話し始める前から顔色が悪かったことには気づいている。

もし、強がるならそれだけの価値があるのだろうが、弱音を吐くようなら無理にでも寝かせるつもりだ。

これで嫌われても仕方ないし、どうせ嫌われている身だ……

いまさら気にはしない。


「手紙が届くのよ。それも誕生日あしたに近づくにつれて増え続けながらね」


考えられる可能性は……


「縁談か?」

「そうよ。しかもまともな奴はいない。こんなんだったら、貴族なんかよりも平民と暮らした方がいくらかマシよ」

「でも、なんでだ?この国は至って平和で、そんなに権力はいらないんだろ?」

「結局、権力にしても、結婚にしてもあいつらが欲しいのは金よ。大概のことはお金で片が付いてしまうから」


表情はどんどん険しくなっていく。


「でも、それは国でやめさせることができるだろ?」

「私の家が持っている『陽』の名は王族と同じである証よ」

「だから、どうしたんだ?」

現在いま、この国の王には子供は一人しかいない。代々、一人っ子の続いてきた血筋に分家はいない。つまり、私は王位継承権第2位を持っている」


は?

突然の出来事に頭が回らない。

……ってことは、第1位は、神楽姫とか呼ばれていた奴か?

まぁ、それは横に置いといてだ。

つまり、今まで襲ってきていたのは、どういうことだ?

スケールがでかい、単なる護衛じゃなかったのか?


こんがらがってきた、俺よ、落ち着け!

確かに、この家にはありえないほどの実力者が二人いる。

それなら、九十九さんが国から二つ名をもらわなかったことが理解できる。


「九十九さんと陽菜さんって二つ名が決まる前に、ここにくることは決まっていたのか?」

「わからないわ。何でそんなことを?……あ、そう言えば九十九はもらっていたけど、陽菜はそうね。そんな話を前にしてくれたわ」


あの二人は王位継承者を守るために有名になるわけにはいかなかった。

多分、九十九さんも引退するときに二つ名をもらったのは長い間の実績として周りに認識されているんだろう。

民間人の間で二つ名を持っているものは、樹族や竜族の長寿命者が多い。

聞いたことはないが九十九さんもそのうちのどちらかなんだろう。

龍炎さんも居場所を知らなかったってことは隠蔽したのは麻奈花だな。

ったく、ホントにあの情報屋は謎だな。


まぁいい。

状況を整理するとだ。



王位継承の可能性を持っている月夜


縁談


暗殺 


継承権第1位と第2位


貴族



それらが示すのは

月夜が狙われているのと縁談を求めてくる貴族は関係がない、ということだ。

権力を手に入れるのには、月夜が不可欠だ。

つまり、権力を手に入れるには月夜を殺してしまってはいけない。


逆に、暗殺される理由は月夜が結婚するとまずい理由がある。

または、月夜が死ぬと自分が得する。

このどちらかだろう。


この二つは、全く別のことだ。

そして、暗殺される理由が前者なら犯人は血を守ろうとする王族。

後者なら、側近の貴族。

そして、この場合、後者の方が可能性は高い。

王族なら『陽』を月夜の代で剥奪すれば済むからだ。


 

と、こんな感じだと思うがこの推測があっていたところで、助けられるわけではない。

美咲には一応後で話しておくか。


突然、部屋の隅に手紙の束が現れる。

そして、こちらに向かってきていた月夜がスローモーションで倒れていく。

『紫電』で加速し体を滑り込ませる。


「おい、大丈夫か……って、寝てやがる」


疲れが出たのだろか?

俺の耳に届く寝息を感じながら、その原因を目で捉える。

あの山は多分、幻で見えないようにしていたんだろう。

俺は月夜を抱えベッドに入れる。


そして、

俺は六杯目の紅茶をいれ、空を見ながら飲む。


「なんて、むかつくほど明るいんだ」




Side Out


And


Return To Side 千花




何を買うか決めてから、時計台は11の鐘を打ちました。

ずっと、探している振りをして、頑張っています。

お昼の時間まで、粘れば私の勝ちです。

あと一時間どうやって、過ごせばいいのでしょうか?


「千花ちゃんまだ決まらないの?」

「まだです。すいません」

「友達のためだもんね。しっかり選ばなくちゃね」


意地の悪い笑みを浮かべながら麻奈花さんが話しかけてきます。

多分ですが麻奈花さん気づいていますよね、私がもうすでに決めていることに。

……どうしたものでしょう。


目の端にあるのは、私が買おうと思っているブレスレッド。

デザインはチェインですが、これはミスリルでできています。

確認したわけではないですが、魔力を流すと変色したことから、たぶん正解でしょう。

ミスリルは魔力との親和性が高く、その魔力の色に応じてその色を変えます。

色がきれいなこともさることながら、魔力を貯めることができる優れものです。

私には使い道がほとんどないですが、いっちゃんならきっと役に立つでしょう。


ふと顔を上げて周りを見渡して、呟く。


「まずいですね」


この通りも少し騒がしくなってきました。

と、目の端で伸びてくる手を捕らえ、反射的に目をつけていたものを手に取る。

あっ。


「やっぱり、千花ちゃん買うもの決めていたのね?」


手の主と声の主が一致する。

大変まずい状況ですね。

これ、逃げられるでしょうか?

と、銀貨を二枚取り出して、買う。


「お嬢ちゃん、まちがってるよ」


私が出した手を見ると金貨が二枚。

私かなりあせっていますね。

まぁ、自己分析したところで、あまりというより全く状況は変わらないのですが。

今度は間違えないように注意して払う。


「千花ちゃん」


諦めましょう、これは災害です。

そう自分に言い聞かせる。


「どうしたんですか?」

「着せ替えしたかったんだけどね。落ち着いて聞いて」


したかった?

それはどういうことなんでしょうか?


「あなたたちが捕まえて、逃げられた暗殺者たちの行方が消えたわ」

「それは、どういうことですか?もう、危険はないということですか?」


自分でもそんなことはないとわかっているけど、聞かずにはいられなかった。


「違うわ。それも、いつ来るかはわからないけど、犯人は貴族ね」

「美咲さんは?」


辺りを見てもどこにもいない。


「さっき、見回りに行ってもらったわ。あの子も冬樹に気配の消し方とかを習っていたからね」


そういえば、美咲さんは昔からギルドにいたんでしたね。


「それで、私はどうしたらいいのでしょうか?」

「屋敷に戻って」

「私では役に立てないからですか?」

「ぜんぜん違うわよ。そろそろ、あの子も限界だろうからね」

「あの子?」

「月夜ちゃん、このところ疲労が続いて、体力的に限界なのよ。弱みを見せないように頑張るタイプだからね」


気づかないなんて、私は友達失格ですね。


「戻ります」

「じゃ、いってらっしゃい。私の店にも来てね」


返事はしないで走る。

人ごみの中に突っ込む。

誰一人接触しないまま、駆け抜ける。


「風魔術『加速アクセル』」


術式通りに加速する。

神器のおかげで詠唱が飛ばせるのがありがたい。


商盛通りを突っ切る。


魔術の持続時間が切れる。


「風魔術『加速アクセル』!」


叫ぶようにして、もう一度加速しなおす。

周りの人に無言で謝りながら、さらに走る。

そろそろ、自分の魔力が切れそうだ。

たった二回の魔術で切れそうになる魔力を恨む。

神器の魔力が使えればいいのに。


神器の魔力は召喚している間しか使えない。

こんな人通りの多いところで出したら、けが人が出るかもしれない。

それは私の望むところではない。




いっちゃんの家まで後もう少し……



to be continued...

2012/05/25 誤字修正

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