護衛って大変!四日目
すいません、自らの手に余ると思い、属性を火、爆、水、氷、土、木、風、雷、光、闇、刻、空、無の13種類に変更。
星は土と爆に、聖と魔は光と闇の一部ということにしました。
今さら変更してしまいすいません。
< SIDE 翔 >
殺気を感じ、目を覚ます。
正座をしていたがさすがに疲れで寝てしまったようだ。
殺気の発信元に目を向けるとそこには拳が…拳だと。
ガーン!
グハッ!
重石のせいでかわすことができなかった俺は、眠さと相まって素直に気絶することを選んだ。
が、どうやらここ数日で気絶させられ続けて抗体ができたらしい。
くらくらする頭を振りながら、顔を上げる。
「誰だ。」
その言葉は音にはならない。
「声封じられているんだったな。って護衛としてはこれどうなんだ?」
目で探すと千花が真っ赤な顔をしている。
服は下着しかつけていない、ってもう嫌だ。
気絶できないのに殴られ続けるなんてひどすぎる。
初め、会ったときは殴られなかったのにな。
いや、透けているのとこれは別のものか。
次の瞬間には飛んでくるであろう、拳を目を閉じて向かいいれる。
…………。
…………。
……あれ?飛んでこない?
薄く目を開けるとそこには千花が。
…今の沈黙はすべてフェイントだったのか。
「なんてことだ。……?声が出るぞ。」
「すいませんでした。」
いきなりあやまってくる。
「いや、俺が悪いからな。」
「いえ、寝ぼけて殴ってしまったんです。」
「……?」
「着替えの時にですね。翔さんをそこにいることを忘れていて、振り向いて反射的に殴ってしまたんです。」
ということは
「俺、忘れられていたのか?」
あれだけ説教しといてか?
ある意味殴られるよりひどいぞ。
「いえ、あの、その。えっと、ですね。……すいません。」
おい、フォロー、せめて軽い否定ぐらいはほしかったぞ。
コンコン
「はい、開いてますよ。」
ちょっと待てこのままだと…
「あんた何やってるのよ!」
美咲かやはりそうなのか。
この依頼の間に俺は何回殴られるんだろうか?
グフッ!
俺の顔面をとらえたのは、千花のパンチとは比べ物にならない蹴りだった。
~ Black Out ~
< SIDE 千花 >
翔さん、すいません。
私の目の前にあるのは、さっきまで翔さんだった物。
部屋に入ってくると止める暇もなく、美咲さんは顔を蹴り、お腹の鳩尾に思いっきりパンチを入れていました。
その後もその蹴りと殴りの乱舞が終わって、やっと事情が説明できたところ、あわてて治療を始めました。
もっと早く言えていれば。
二人で翔さんを私のベッドの上に載せます。
意外と軽いです。
こうして、見ていると髪もきれいですし、本当にうらやましいですね。
傷は残っていないので、後は目を覚ますのは待つだけです。
それにしても、大変ですね。
さて、朝ご飯をいただきに行きましょう。
昨日は逃しましたが、朝ご飯はしっかり食べないといけませんよね。
後で、翔さんにももっていきましょうか。
そういえば食事の時は誰かが欠けていることが多いですね。
美咲さんもいることですし消費量に関しては大丈夫でしょう。
……いえ、これだけでご飯は足りるのでしょうか?
目の前の食事がどんどん消えていきます。
美咲さんの食べる速度も九十九さんの皿を回収してから次の料理を置くまでの速度が目で追えないず、文字通り消えているのですが。
食べ終わった私は親友の部屋に遊びに行ったんですが、いっちゃん、今日は勉強があるようです。
何やら、宿題とか言うものらしいのです。
学校は行っていないのですが私や翔さんの年だとみんな行っているそうですね。
まぁ、関係ないですね。
お父さんのことですから、先生は自分で十分と考えたんでしょうね。
自信過剰なんですが、親なので大目に見ましょう。
そういえばと思い、行方を九十九さんに聞いたところ、お父さんはもういないらしいので、多分帰ったのでしょう、ということだそうで、今、私はとても退屈しています。
いっちゃんは、勉強。
翔さんは、気絶。
美咲さんは、暴食。
お父さんは、帰宅。
琴音さんは、仕事。
仕事……仕事?…仕事!?
そういえば、楽しすぎて忘れていましたが、まだ依頼の途中ですね。
見回りでもしましょうか?
迷宮で迷子確定ですよね。
確か警備に何人か来るんでしたっけ?
確かここの警護は依頼者から警護されていることを気づかせないようにするというのが決まりだったはずですから、会うこともないでしょう。
さて、厨房でいただいたパンを持っていきましょうか。
千花さんの食べっぷりに皆さん驚きを通り越して、あきれていらっしゃるようでした。
部屋に戻りベッドに向かいます。
まだ、気絶したままのようです。
あの蹴りは本当にすごかったですからね。
ベッドの近くに椅子を置いて考え事。
それにしても、一日目には襲撃があったのに、なぜそのあとは来ないんでしょうか?
奇襲が失敗したからということなのでしょうか?
わかりません、疑問は多いのに情報が足りなさすぎます。
はぁー、暇です。
何か起きないでしょうか?
あぁ、それにしても本当にこの翔さんの瞳は黒くて綺麗ですね。
……瞳?
……あ。
「い、いつから起きていたんですか?」
「さっきね。」
自分でも顔が赤くなっていくのがよくわかります。
「千花?大丈夫か?顔が赤いぞ。」
それ以上近づかれたら…私…。
覗きこまれて、なぜか自分のことを別の場所から見ているようなふわふわした感覚に陥り、そのまま目の前が真っ暗になって意識を失ってしまいました。
目を開けると心配そうな翔さんの顔が。
お父さんのせいでこんな近くに門下生以外で男の子がいるのは初めてで、もちろん、お父さんが私に男の子を近づけさせることもなく、とても新鮮な気分です。
……そうじゃなくて、近いです、顔が近いですって。
私の心の声が聞こえるわけも無いので、どうしたものかと考えてみたのですが。
浮かびません。
どうしましょう。
ドーン!
目の前にいた翔さんが突然吹き飛びました。
正確に言うならばお腹に蹴りを入れられて、ですね。
蹴った人は予想はしていましたが、美咲さんです。
それにしても、翔さん大丈夫でしょうか?
「もう、これくらいじゃ気絶もできないのか。」
そう言って、立ち上がっています。
すごい精神力ですね。
今はどれくらいの時間なのかと外に目をやると
「えっ!?」
なんと夕暮れです。
私ってどれだけ気絶していたんですか、普通じゃ考えられないですよね?
「夕ご飯みんなで食べるらしいんだけど、どうする?」
「おい、お前まだ食うのか?朝から昼までぶっ通しで食べてたんだろ?」
ここで、驚愕の事実発覚、ですね。
いったい、どんなお腹しているんでしょうか?
「って言うか、何で蹴るんだよ?俺、何もしていないぞ。」
「なんとなく?」
「いや、俺に聞くなよ。っていうか、その理由はひどいぞ。」
なにかの喜劇でしょうか?
息も合っていますし。
< SIDE 翔 >
「そうだ、夕ご飯いくんだろ?」
話がそれてきたので、元に戻す。
さっきの美咲との話の間、ずっと笑っていたのが気になる。
「いただく、よ。い・た・だ・く。依頼主の家に上がりこんで、ご飯がもらえるのは普通じゃありえないんだからね。せいぜい、寝るとことが貸してもらえたらすごい優遇されているんだからね。最悪の場合は玄関で説明されて追い出されるのよ。」
「どの口がそれを言う?鉄の胃袋の主様?」
「ど、どこでその名前をっ!」
美咲が焦っている、いい気味だ。
「ラーメン屋だよ。早食い競争をやっている。」
ついでに俺に矛先が向かないように情報源を告げておく。
「あそこね。後で食べに行こうか。」
ラーメン屋にご愁傷様という言葉を思い浮かべる。
さて、ブラックホール、これには二つの技につけられた名前である。
一つは、あらゆる物質をある空間に取り込んでしまい、それに抗うことはほとんどできない闇系統魔術である。
もう一つは、朝の開店時に屋台に行き、すべて完食してしまう恐ろしい技だ。何が恐ろしいかと言うと、利益が入ってくるが即完売で来客者に迷惑がかかると言う点である。
……これって単なる嫌がらせだよな?
千花が起き上がるのを待って、階下に降りる。
あの量の食事に対して食糧の備蓄がまるで切れる様子を見せないのはどういうことなのだろうかと疑問に思ったが、大丈夫だろう。
食事も終わり日が沈み月が昇る。
市場を見ると明かりの無いくらい世界に、黒い影が白い何かを振り回しているのが見えた。
気にすることも無いと思い、ベッドに入り眠りに付く……こともできなかった。
なんせ、今日はほとんど気絶していたのだ、当然といったら当然だろう。
まぁ、いい。
星でも見るか。
天羽を使って、屋上に上り満天の空を見上げる。
月は陰りを見せることなく、大きな円をかたどっている。
天羽は暖かいので、このまま寝ても風邪を引くことは無いだろう。
ここに来てから数日で、天羽などの使い方を学び、渚がいなくても使えるようになった。
だから、渚はここには無い。
と、つらつらと考え事をしつつ、目を閉じるとすぐにまどろみ、眠りの世界へと引きずり込まれていった。
読んでくださってありがとうございます。
~ちょっとした次回予告~
作:翔君ちょっと気絶させられすぎだよね?
翔:すべてはあんたの責任だ。
作:そんな事、言ったってね?面白いんだもん。
翔:人の苦労は蜜の味~♪、じゃないからな。
作:さて、さて。次回予告をしようと思います。
翔:スルーかよ!どうせ、五日目の話だろ?題名からして、そのままじゃないか。
作:ま、ま、そう言わずにね?
翔:じゃあ、言ってみろ。
作:次回はまさかの、侵入者の事件に決着?です。
翔:予定より二日早いが、ついに殴られ損から解放されるのか!
作:チョコレートムースにキャラメルソースをかけてざらめをまぶしたぐらいに甘~い!君の不幸体質がその程度の苦難に太刀打ちできないとでも?
翔:・・・不幸体質のほうがよっぽど苦難だ。
作:こんなぐだぐだな感じで終わるのもなんですが。
翔:次回、「護衛って大変!五日目」をお届けします。
作:な、私のせりふを返せ!
翔:ささやかな仕返しだ。
作:次回、覚えておけよ?
翔:(少し早まったかもしれない。)
作:それでは、これにてお開き。
<完>