護衛って大変!二日目・下
むむっ。長くかけなくなってきた。
評価&お気に入りありがとうございます。
< SIDE 翔 >
一人寂しく食事を終える。
実に寂しい。
メイドさんはいるのだが、話しかける気が起きない。
部屋に戻る。
『退屈じゃ、退屈じゃ、退屈じゃ!』
頭の中で言葉が爆発する。
『渚か。うるさいぞ』
『だって、暇なんじゃよ!?』
『俺だって暇だよ。見回りしなくても警報で敵の位置を知らせてくれるからな』
『うむ、この時間に防御系をできるようにするべきじゃろうな。その前に主は『海渡』は使えるのかえ?』
『なんだそれは?』
記憶のどこが叫んでいる。
それを知っていると
そして、鍛冶屋での一軒を思い出す。
『おい、教えてくれ、俺の過去を知っているのか?』
『知っているといえば知っておるのぅ』
『なら、答えてくれ』
『残念じゃが、契約者による制約により開示することはできないのでな』
『契約者って誰だ?そんなふざけたやつは俺が殴る』
『主自身。それ以上は開示できんな』
どういうことだ。
記憶の前の俺はいったい何を契約したんだよ。
『ちっ!』
『念話で舌打ちとは器用じゃの』
しかたがない。
『海渡の使い方を教えろ』
『神に対する尊敬が足りないようじゃな』
『医者に行ってこい』
『まぁ、いいわい。まず、水をイメージするのじゃ』
『あぁ』
『それをわしにまとわせなさい。天羽と一緒よ』
渚が淡く光る。
『65点位かの。もっと濃密に纏うことができんと白雪を使うことはできないのぅ』
力を込める。
渚にまとわせている水を圧縮する。
『85点位かの。二回目にしては早い上達じゃな。次はそれを身に纏う。それだけじゃよ』
自分の周りにまとわせると勝手に形を変えていく。
『名は水の羽衣。属性はなんでもすべてでできるじゃろ。鎧とか違うものにはなるじゃろうが』
『ところで何でこれにしたんだ?他の属性でもできるってことは天羽とかでもよかったじゃないのか?』
『わしの名は渚じゃからな。なんとなくというやつよ。それに、面白いものも見れそうじゃからな』
と、声が聞こえなくなってから数十秒後。
ガチャ!
千花がこちらをじっと見た。
「部屋を間違えてしまいました」
バタン!
そして、数秒後にまた入ってきて。
「翔さんですか?」
「そうだけど?」
俺の上から下をざっと見る。
「……私、女性として自信無くなってきました」
「なんて?なんか言った?」
「い、いえなんでもありません」
あわてて首を振っている。
かわいい、なんて思ったら駄目だろうか?
「なら、いいんだが。ところで、もう大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで。それよりなんですか、それは?私とここに来たとき手ぶらでしたよね?」
「つくった。魔術で自分でも詳しいことはわからんがな。水の羽衣と言うらしい。渚が言ってたぞ」
「あの、人格を持っている刀のことですよね?にわかには信じがたいのですが」
また、九十九さんに稽古をつけてもらおう。
千花は月夜のところに行くらしい。ので、その説教が終わったであろう、九十九さんに会いに行く。
ことにしたが・・・・・・
「千花」
「翔さん」
「「お昼を食べたいですね」」
今回は、みんな揃っている。
昨日も今日の朝も集まらなかったからな。
皆食べ終わり、食後のデザートをいただく。
「これって、普通の食生活に戻れるのだろうか?」
「大丈夫です。あそこのマスターの腕もなかなかなものですから」
宿屋の下にあった基本的に何でも食べられるお店だ。
確かに味は悪くはなかった。いや、むしろよかったと言っていいだろう。
多分、あれらの料理との差は食材の差だと思う。
「九十九さん、また稽古をお願いしたいのですが?新しい術も覚えたので」
「私でよければ」
しばらくしてから、外に出る。
「水の羽衣。これの強度をまず知りたいのですが?」
「水と言いますと雷や炎を防ぐことができますね」
「雷もですか?」
「水の純度を上げてください。それだけで、ほとんど通しませんから。とりあえず、これは調べてみましょう」
目の前にはどこから用意されたのかわからない武器の数々。
「まず、手始めにこれで行きましょうか」
そう言って九十九さんが手に持ったのは、ただの石。
「行きます」
石を指ではじく。
そして、反射で石をかわす。
キーッ!ドーーン!
後ろで樹が倒れた。
細い木じゃない、大樹だ。
「今のをかわしますか、ですがかわしてはいけませんよ」
「今のは死にますから。冗談抜きで」
そして、槍でつかれたり、暗器を投げられたり、剣できられたりした結果。
俺はぼろぼろになっていた。
まったく、服だけは無事なのが不思議だ。
『違うじゃろ。水の羽衣は飛来物の速度をその羽衣に触れた瞬間から減退させる。水の性質上、衝撃には強いが斬撃、刺突に関していまいちなんじゃよ!』
『誰の代わりの突込みだ?』
『神様じゃよ。わしとは別次元、別空間の不特定多数のな』
日が沈んでいく、疲れた。
結局、海渡を使ってわかったのは、水が操れることと水に溶けるのと水の上を歩けるということだけだ。
その後、天羽も使ってみた。
真っ白なローブに天羽の具現化。
当然、天羽も白い。
「天使のようです」
「これって女といての立場がないじゃないね?いっちゃん」
「やっぱりそう思います?」
二人がごにょごにょと話している。
「あまり、それは街中でやらないでください。神徒たちに目をつけられると厄介ですよ。主に行動面の話ですが」
汀教。
人口2億を超えるこの世界に信者4800万人を抱える巨大宗教。
この中で、主に祭事を行う200人の司祭と400人の助祭、彼らを監督する100人の司教、それらを統括する20人の大司教、それらを束ねる、5人の枢機卿、その上の教皇を頂点としている。
そして、司教以上になる条件は上級治癒魔術まで使えること。
枢機卿以上はそれを広範囲で行えること。
枢機卿以上は神使、それ大司教・司教の者たちを神徒と呼び、それ以下のものたちは神官と呼ばれる。
枢機卿に美咲ならなれるんじゃないのか?
そして、彼らは神の御遣いである天使が来るのを待ち望んでいるという。
そんなことして普通の人間ってばれたら間違いなく殺されるだろう、たとえ向こうの勝手な勘違いでも。
あれ?
いやでも、そしたら翼族ってどうなるんだ?
みんな天使なのか?
そんなことをつらつら考えながら、屋敷へ戻っていく。
そして、この日は夜になっても襲撃が起きることはなかった。
読んでくださってありがとうございます。
紫電の出番がない、どうしよう。
祭司などの階級はキリスト教のところから適当に持ってきたので、本来とは全く違います。
2012/03/25 渚の口調改変