準備は大変だ
少しも話が進展していないような気がしますが
あしからず
地味に新キャラたちの登場です。
自分でも全部名前を覚えられるか少々不安ですが。
<SIDE 翔>
「ふぅ、もうおなかいっぱいで何も食べれない。」
「私もです。」
お金はさっきもらったのもあって、たくさんあったのだができるだけ出費は抑えたい。
そこで、目にしたのは
『早食い!十分以内に特盛ラーメンを5杯食べられれば無料!』
子供だからということで、二人でもいいということなので食べた。
簡単に聞こえるが、量がすごかった。
まず、皿がかぶれる、帽子のように。
その上に大きく詰まれた具。
もうしばらく食べたくないと、思うぐらいには食べた。
ちなみに食べた配分はこうだ。
俺 1.5杯
千花 3.5杯
決して、間違っていないぞ。
俺もこんなに食うとは思っていなかった。
あの量、一体あの細いからだのどこに入っていったんだ?
世の中の不思議のひとつを知った、っていうか悟ったよ。
ちなみに、ここには主というものがいるらしい。
大食いの主、美咲。
まぁ、想像はついていたが改めて聞かされると驚くよな。
しかも、記録がおかしい。
俺たちは二人で、9分32秒というほとんどぎりぎりの記録だったが、あいつは
2分17秒
で完食したらしい。
そして、10杯目食べ終わった時の台詞が、
「5分でいいから、20杯にしてほしい」
だったそうだ。
「人間の神秘だな」
「そうですね」
と、二人で笑いながら、食後の運動もかねて辺りを散策している。
そこら辺の屋台を大半冷やかした後、目的の場所へ来る。
この街に来たときは通り過ぎただけだったので、あまりよくは見ていなかったが、こうやって近くで、その鍛冶屋を見ると、一見古いように見えるが、周りの風景と調和していてあちらこちらに職人の技が光っている。
ドアを開けると中から熱気が流れ出てきていた。
そのまま、中を見渡すといたるところに武器が立ち並んでいて、鎧やちょっとしたアクセサリーまで置いてある。
「ドアを閉めてくれ、せっかくの熱が逃げちまう。」
奥から声が聞こえてきた。
「すいません。」
と、俺の後から入ってきた千花がドアを閉める。
「なんか用かい?」
と、出てきたのはずんぐりむっくりで身長は俺と同じくらいで、大体160cmぐらいだ。
うん、なんとも無愛想っていうか、うーん、そう偏屈だ。
第一印象で悪いが、偏屈というものがそのまま服を着ているような感じだ。
「武器がほしい」
「なぜだ」
「金k…?なぜ?いくらかじゃなくてか?うーん、生きるためだな」
「フンッ!皆、わしにそういっていたわい。結局、人殺しの道具になっただけじゃ」
「でも…。」
紡ぐ言葉がない。
当然だ、武器は戦い相手を傷つけるためにある、それを覆す言葉は……ない。
「なら、あんたは何ために武器を作る」
せめてもの反撃と言ってみるが、
「それを教える必要がどこにある」
と、すぐに一蹴されてしまった。
「しょうがない、あきらめるか」
求めているものが手に入らない以上、ここに長居する理由はない。
と、振り向くと千花の後ろに女の子が立っていた。
「どうしたの君?」
ドアには鈴がついていて、俺が入るときにも確かに鳴っていた。
しかし、俺はその音を聞いていない。
そして、入った時に見渡した時には誰もいなかったはずだ。
「翔さんどうしたんですか?誰もいないですよ」
振り向く千花の目の前にいるというにもかかわらず、気づいていない。
「どういうことだ?」
「ちっ、見えるのか。朱里」
「はい、主?」
朱里と呼ばれた少女は一瞬首をかしげた後、俺の横を通り、自分の主のもとへと走っていく。
「よし、材料は……何が作りたい?」
「……俺か?」
「それ以外にだれがいる」
「刀を二振り」
「ほぉ、二刀流で、刀が使いたいと?」
なんか馬鹿にされているな。
「俺、何か変なこと言ったか?」
「切れ味か親和性か?」
「親和性?」
「魔力と武器のですよ。でも、魔剣が作れるなら切れ味重視のほうがいいかもしれませんね」
と、千花が言ってくる。
「どちらも無理なのか?」
「設備が足らん」
それは、無理だな。
「じゃあ、片方は切れ味でもう一つの方は親和性で、いや。あれをくれ」
先ほどまで気にしていなかったのだが、なぜか、自分の意識に引っかかって仕方がないものがあった。
特に古いというわけでもなく、装飾がきれいというわけでもない、店の片隅に立てかけられた、ただの普通の刀。
ただ、目からはなれず、俺を呼んでいるような気がしてやまないのだ。
「うむ。ありえんな。それは誰もが気づかなかったやつじゃぞ。まるで、人を選んでいるようにな」
手にとって抜いてみる。
独特の金属音とともに抜けた。
「あっ………抜けた」
「ほぉ」
決して驚かない偏屈爺さん。
『また、会ったのぅ。これもまた運命。いや、宿命というべきかのぅ。やはり、主様は運命に逆らうことができなかったのか……』
残念そうに呟く鈴のような声。
口調と声の質の違いに違和感を覚える。
「だ、だれだ!」
「私は何も言ってませんよ」
ふと、手に持っている刀に目を落とす。
「お前なのか?」
『そうじゃよ。それくらいの知識は数百年前にお教えしたはずじゃがな?』
「数百年?何の話だ?」
『……まぁ、よい。念じよ。周りから変な目で見られたくなければの。』
『こ、こうか?おぉ、できたっぽいぞ。早速だが、俺には記憶がない。それにしてもだ。数百年も人間である俺が生きているはずがないだろう。何かの間違いだな』
『そうかい。まだ、運命には縛られてないようじゃな。それでは、前の契約も失効していないというわけか。面倒じゃな』
頭がちりっとする。
『ところで、おまえは誰だ?刀の精霊なのか?』
『私か?私は神じゃよ』
『病院行って来た方がよくないか?それよりも、美咲に見てもらったほうがいいんだろうな。でも、武器ならどこで見てもらうんだろうな?』
『わしのことは渚神とでも呼ぶがいいさ』
無視かい。
『なぁ、渚』
『……扱いが雑じゃな。で、なんじゃ?』
『呼んでみただけ』
『……しばらくこもるぞ』
『おぉい、渚!』
『…………………』
反応がない、本当にこもったのか?
とりあえず、千花の方を見て
「なんかよくわからんけど、刀がしゃべった」
「病院行きますか?美咲さんに見てもらいますか?」
俺と考えること同じかい!
いや、当然の反応か。
「いや、大丈夫だ。で、これ、いくらだ?」
と、手に持った刀を見せて聞く。
「いらん、持ってっけ。どうせここにあっても売れんしな」
「じゃ、とりあえず出るか。ここは暑すぎる」
部屋の奥に火の元があるとはいえ、ほとんど密閉状態だ、暑くてやってられん。
「しかし、あの人はすごいのかね?」
と、疑問に思ったことを千花にぶつける。
意外にも返ってきたのは肯定だった。
「気づきませんでしたか?私が店に入ってからあの人は一度も私に武器が要るかどうか聞きませんでした。」
「それは、あれじゃないのか?武器を見ていなかったとか」
「私にだって自分の鎌黒以外にも興味はありますから、一通りのものは見させてもらいました。翔さんがあの武器を見ている間に、私にいるものでもあるか聞きにきたようなんですが、手を見た瞬間に「そうか」と一言だけ言ってまた戻っていきました」
「ってことはつまり?」
「あの人は凄腕ってことですね」
人は見かけによらないものだ。
「で、どうする?武器は買ったし、防具は要らないから」
「要らないんですか?」
「重いだけだろうしね。」
ちなみに俺の今着ているものは、動物の皮をなめして作ったジャケットだ。
倒れていたときの服は、ぼろぼろになっていたので処分した。
「それにこれ麻奈花が作った特注品で、ある程度の防刃と耐魔がついているらしい。あと耐寒とか耐熱とかも」
「それはすごいですね」
「そういう千花こそ何もないんじゃないのか?」
「私にはこれがあります。」
首から取り外したのは手でつまめる大きさの石を紐で通したものだ。
「これは?」
「アミュレットいわゆるお守りですね。持ち主の危険を察知して守ってくれるものです。簡単に言いましたが、かなり高いものですよ」
と、言ってナイフをブーツから取り出して…………!?
「そんなものがどうしてそこから?」
「護身用ですよ。美咲さんほどではないですが。では、見ててください」
美咲といい、お前といい、これは当たり前のことなのか?
と、俺の目の前で手のひらの上にナイフを滑らす。
しかし、千花の手が傷つくことはない。
手のひらで、ナイフの先が上滑りしている感じだ。
「これもある程度の攻撃を防いでくれます。大体、翔さんと同じ感じですね。ちなみに、これは母上が作ってくれたものだそうです」
「すごいんだな」
どうやら自慢の母らしい。
準備を終えて、ギルドの宿に戻ることにする。
美咲にも文句言わないとな。
~SIDE ???~
「クシュン!あぁ、風邪でも引いたのかしらね。まぁ、いいわ。今日もいい事あったしね」
喜んで小躍りしている女性。
傍から見ると変人に見えるだろうが、幸いにも周りには誰もいない。
だが、しかし誰かが見ていたとしても話しかける事はなかっただろう。
彼女は皆に恐れられるものだったからだ。
読んでくださってありがとうございます。
最後に出ていた女性はまぁ、おわかりの人もいるかもしれませんが、千花の母です。