それでは依頼の下準備
今さらだけど基本、翔視点だから、<SIDE 翔>とか要らなくねとか思ってしまいました、これからも使いますが…。
<SIDE 翔>
目の前に広げられているのは街の地図。
うん、この町すごい広い。
別にほかの街を知っている…もとい覚えているわけではないんだが。
「ここが町の中心部、城があるところね。」
麻奈花が指差したのは、街の小高い丘になっているところだ。
えっ?
なんで小高い丘だってわかるかだって?
そりゃ、地図が立体だからさっ!
俺が威張ることではないが、実に便利にみえる。
この地図は麻奈花の発明らしい。
千花が言うには、これを売れば一生遊んで暮らせるという代物なんだそうだ。
本人曰く売るつもりはないらしいが。
「城の機能はさっきも話した通りよ。この城を中心として大通りが4本のびているわ。それらの通りの名前は、その通りで行われていることに由来するわ。あなたたちが通ってきたのは、南にあるのは商盛通りよ。名前の通り市場とか商業施設があったでしょ?」
何で知ってるんだよ、そんなことを。
「北に向かっているのは、緑川通りよ。ここには、川や森があって野外の食事が楽しめるような場所が広がっているわ。もちろん、城から少しはなれたところからだけどね。ちなみに川は北から流れてきて、途中で分かれて、一方は城の地下水路にもう一方は西のはるか先にある海に向かって流れているわ。それで、王家の人たちの脱出ルートもそこを流れている川の地下水路を通っていくのよ。どうやって地下から出て行くのかは、私も知らないんだけど。」
こういう情報は機密じゃないのか?
なんかこういうことって知っていたら夜中に背後からばっさりと切られたりしてね。
「西を走っているのは、工器通りよ。工芸品や防具、武器はここで作っている人がほとんどね。まぁ、帝国製や皇国製に比べたらまだまだだと思うけど。この国で武器を作ろうと思ったら、やっぱり中央広場にいる偏屈お爺ちゃんのところで作ってもらうといいわ。それにしても、あのお爺ちゃん、いくら調べてもどうやって材料を調達しているのかがまったくわからないのよね。もしかするとかなりの凄腕かもよ。でも、何で隠しているんでしょうね?」
多分、自分の種族隠しているんだと思います、はい。
「東に続いているのは、文武通り、学校や研究所があるわ。あなたたちもここに通うことになるでしょうけどね。」
名前からして、呪われそうな通りだな。
……!?
「通うってどういうこと?」
「後のお楽しみよ。これ以上話が脱線されたらたまらないわ。この町はね。3段構造に分かれているのよ。一番真ん中にあるのが、王族の住む城。さっきの丘の部分ね。その周りを囲むのが、一般市民層が住む所ね。そして一番外側が貴族層よ。理由は、諸説あるけど一般的には貴族が民を守らずしてどうするという言葉が有力よ。言ったのは、至高の称号『陽』を戴いた貴族。現在の当主は琴音。どうしたの?…あぁ、この家系は女性が当主だからね。琴音は女性で合っているわよ。貴族にも階級があって、王族の血族は『陽』、それから『月』、『星』、『光』、『翼』に分かれているのよ。王族にも認められたってことね。ちなみに一世代ごとに階級は変わっているから、癒着の心配はないし、国民が決めているからね。それで、『陽』を維持しているってことはすごいことなのよ。」
真奈花は熱く語っているが、
「それと仕事とどういう関係があるんだ?また脱線しかけているんじゃないのか?」
「…琴音さん?」
何か考え込んでいる。
目の前で手を振ってみるが反応がない。
どうやら、千花の意識は違うところへ行っているらしい。
「そんなに有能な人が恨まれないわけないわよね?」
どうやら話は続くらしい。
「そうかもしれないな。よくわからないが。」
「今年はね、彼女の娘の15の誕生日なのよ。これが何を意味しているかは当然、知ってい…ないわね。」
「すいません。」
「15っていうのは婚約者が選べる年代になったってことよ。つまり、これから彼女に近づく人たちが増える。これは『陽』から落とす、あるいは家系を断絶するチャンスなのよ。その娘を殺す、あるいは無理やり結婚してその地位を奪う。これなら一世代だけなら確実に『陽』でいられるからね。これが改善点なのよ。どうしても、選ぶ側の国民は内情を知らない部分もあるから、名前が大きいということで選んでしまう。どういうことかっていうと、『陽』の人が結婚することを認めるほどの素晴らしい人だと考えてしまって、無理やりに結婚させた人に大きい権力が渡る。こんな危険なことはないのよね。」
「それを止めろって?そんな無茶なこと言うなよ。」
「……月夜。」
「?」
「そうよ。あなたの幼少の時の幼馴染のね。」
ちょっと待てい!
あんたはストーカーかい!
いや、もう何も言うまい。
「そうですか、いっちゃんですか。」
「!?…月夜のどの要素にいっちゃんって出てくるんだ?」
「忘れました。でも、いっちゃんです。」
「この際それは置いといて。俺らは何をしたらいいんだ?指示がないと何もできないぞ?」
「大丈夫よ。とくにはないわ。」
「はぁ!?」
「それはどういうことですか?」
「あなたたちの仕事は、護衛も兼ねてるけど基本的に同世代の友達がいないあの子のために一緒に誕生日を祝ってくれる子がほしいから琴音が依頼してきたものだしね。まぁ、なんかあったら琴音がなんか言うと思うから、あなたはそれに従っていればいいわ。」
……………。
「ほんとに何でもするんだな。」
「それがこのギルドの最大の魅力だからね。えっと、琴音の家はここね。」
真奈花が指差したのは、門の近く。
その門は南門。つまり、俺らがここに来るときにくぐってきたところだ。
「依頼は明日からね。まぁ、せめて武器は買っておきなさい。これはお金よ。前払いだったからね。」
渡されたのは金貨3枚。
「……多すぎないか?」
「多すぎる分には困らないでしょ?」
「なんか裏でもあるのか?」
「ないわよ。……今のところわね。それとまぁ、初めての依頼だから、餞別代りってことだから、気にすることはないわよ。それと千花ちゃんは、そのペンダントに保護の刻印でもしときなさい。偏屈爺でもそれくらいはやってくれるから。」
「偏屈爺ってやっぱりひどい言い方だと思うがな。」
その言葉が真実であることを知るのは数十分後である。
「まぁ、会えばわかるわよ。じゃあ、早くいきなさい。話し込んではいたけど、そろそろお腹すくでしょ。もう、2時だしね。」
ぐぅ~。
その言葉を聞いて思い出したかのように千花のお腹が鳴る。
「くっ、くっ、くっ。」
「うぅぅぅぅぅ。」
「じゃあ、ありがとな。」
俺たちは元来た道を帰って店を出た。
~ SIDE 麻奈花 ~
二人が言ってしまったのを見届けてから、私は先ほどの情報置場に戻る。
私の力は基本的に戦闘には向いていない。
まぁ、生成術でそこら辺の奴らにはかすり傷一つ追わせられず、倒すことも可能だ。
だが、本領は生成ですらない。
「無系統魔術:操作『検索』」
数少ない無系統魔術であるこれは秘密である。
見つかったら、まず間違いなく王国に呼ばれ進化にされるだろう。
「多分、あなたたちは気づいているんでしょうけど。」
先ほどの二人の客とは違う奴らを思い浮かべながらつぶやいた言葉が聞く人もいない空間に浮いている。
「起動。キーワードは『記憶喪失』『魔術可視化』『記憶封印』『記憶検索不可』。」
一斉に資料が宙に浮き、開かれていく。
「検索完了。」
無機質な声が響き、検索結果が表れる。
そこには二冊しか乗っておらず、その本の名前は
「創世記と勇者の歴史書…か。まったく、あの子はいったいなんなんでしょうね。」
そして、ソファーのところまで行こうとしてドレスの裾を踏み
こけた
2012/02/07 題名変更