王宮の働きは・・・!? 下
<SIDE 翔>
「真実の眼っていうのは、調査ギルドね。しかも、国からの援助を受けつつも、国から独立してその調査を行っているわ。妥当性が感じられるのならば、ギルドから個人の調査まで、行うこともできるわ。でも、遺跡調査とかは請け負わないし、戦闘は最低限で押さえている完全に人事系統のギルドね。でも、このギルドは不正の証拠を暴くとその情報をほかのギルドに売って、運営しているのよ。基本的には国内の事件は、王国の礎に、国外のことに関しては私たち全人の門に伝えられるわ。例外は戦争や魔物の侵攻に関しては一般人そのほかのギルドにも無料で情報が提供されるわね。信頼性も高いし、個人契約していれば私みたいな情報屋はとても重宝するのよ。」
話をまとめると……
「教会に申請して、許可がもらえたら国王に署名をもらって、真実の眼に自分の調査をさせて、問題なければ閲覧できるってことでいいのか?」
「そうね、概ねあっているわ。ただ、教会で議論するのに一週間、王国に及ぼす影響を調査するのに一週間、真実の眼の調査で一か月間かかるかるけどね。」
「やはり、慎重を期するため……か。」
「そうね、下手したらこの国が亡びちゃうもの。禁術はそれほどに恐ろしいものよ。人を狂わせ、事象を狂わせ、生活を狂わせ、国を狂わせる。だから念には念をって……ね。」
そう言った麻奈花は遠い目をしている。
それは、過去に埋もれた記憶を掘り起こしているような目だ。
それに対する俺の視線に気づいたのか、さっきまでの表情が戻ってくる。
「女性の過去を詮索するなんて男のすることじゃないわよ。」
「あぁ、そうだな。」
素直にうなずいておく。
「えーっと、えーっと。あのですね。全人の門みたいな大きいギルドになってくると事件の調査に必要なものであるということが証明できれば、真実の眼による調査も教会の承認も要りません。ただ、国王に許可をもらうだけでいいのです。ただ、それすらもほとんど通過儀礼のようなものらしいです。ただし、禁書を閲覧したものには、沈黙の誓いという制約が課されます。」
「沈黙の誓い?」
「はい。禁術を用いようとした場合、禁術にまつわる記憶はすべて消し飛びます。」
「なっ!?」
「それに加えて罰則としてギルド特権一時剥奪、謹慎、それからギルド内の懲罰が与えられます。」
「当然よね。まぁ、記憶も奪われているし、一部のギルドでは永久除名って言うのもあるけどね。一応、未遂ってことで、大抵の場合は記憶障害についての確認後には、ギルド復帰が認められているわ。ちなみにうちの懲罰は、光の一撃よ。」
「えっと、あの屋根を吹き飛ばした、あれか?」
ギルドについた時、麻奈花の顔は見なかったが、どうせ、情報屋ができる彼女にとってはそのことを知るのは造作もないことだろうという考えからの前置きなしの質問である。
「あれは、1割程度ね。懲罰は……2割。」
「あ、あの惨状を巻き起こせるほどの威力の二倍ですか?」
「そうよ。だから、制限がかけられているのよ。制限は確か半分だったかしら。王国の礎は国王の、協力の輪は国民の危機に際して解除することができるわ。」
「光さんはどうなんですか?」
確か全人の門は中立であるということは発動条件を個人に設定することはできないのである。
「それは私が持っているわ。」
今の俺はフライパンで顔面を殴られたような衝撃を受けている。
この人マジで怖いよ。
全人の門のマスターを掌握してるとかどんだけな人だよ。
「まぁ、大丈夫よ。ルールさえ守れば、基本的に過保護だしね。」
「また、話の腰を折って悪いんだが、ギルド特権って何だ?」
「……はぁ、いいわよ謝らなくても、もう諦めてるし。」
「……それを本人の前で言うとかひどすぎるだろ。」
「えっとですね。」
今、このなかで一番苦労しているのは、間違えなく千花だろうな。
「ギルド特権とは、規模の大きいギルドの運営を円滑に進めるために作られた制度のことよ。王国軍の訓練所の使用許可、武具や特定の道具の値段の割引、仕事中のみ即時出国許可。違う国に行くには、王国からパスをもらって、関所で書類を書く必要があるけど、それが全部免除されるのよ。他にはね。……そうだ、ライフサーチャーが無料で使用可能になるし、ギルドの資金源に店を経営することもできるようになるわ。最後のほうは正味、光しか関係ないけどね。」
「へぇ、そうなのか。」
瞬間記憶能力は、使い勝手がいい。
今の話もエンドレスで頭の中で再生できる。
そんなことしても意味はないのだが。
「あの、ギルドマスターと幹部…多分これは、創設時に決める役割だと思うのですが、3人が禁書閲覧できるっていうのを忘れているのではないですか?」
千花の言葉に麻奈花が少し動揺を見せる。
おい、この人、千花の言葉に揺らぎすぎだろ。
「えぇ、そうね。」
「で、幹部って誰なんだ?」
「光と冬樹、それから私……何よ。私が幹部なのがそんなに変?」
あぁ、実に衝撃的だ。
フライパンの横で殴られた感じだ。
まさか、そんなこと誰が予想できるだろうか、いやできないだろう。
反語を使っているあたり、まだ驚きを俺は引きずっているらしい。
「あの、最後の一人は?」
この言葉に時が止まる。
そして、麻奈花の口からつむがれた言葉は……
龍炎
それは、驚愕のあまり意識をつなぎとめるのに必死になった瞬間であった。
読んでいただきありがとうございます。
2012/06/09 文章改正