王宮の働きは・・・!? 上
< SIDE 翔 >
すっかり忘れていた。
って言うか毛ほどにも思い出さなかった。
何のためにわざわざここまで来たのかを。
しかも、連れてきた本人も忘れていたようだ。
「私が話をしようとするのに魔術の話をするから言い出せなかっただけよ。」
!?……心が読めるのか?
「少しだけしか読めないわよ。」
いや、十分読めてるから。
そうか、だから情報屋になったのか。
「関係ないわよ。単に人脈が広かったのと、まぁ、いろいろとね。」
俺にはプライバシーはないのか?
「あるわよ。というより、心は閉じときなさいよ。駄々漏れよ、まったく、わからないほうが不思議よ。」
「心を閉じる?どうすればいいんだ?」
「まず、心を想像しなさい。なるべく明確なものの方がいいわね。」
心って、何だ?まぁ、適当でいっか。
俺は光の塊を浮かべた。
「つぎは、それの周りに壁を想像しなさい。」
言葉通り、壁で覆って光が見えなくなっているところを想像した。
「できたぞ。」
「これは、精神攻撃。たとえば、くぐつや幻覚に対して有効よ。結局、どれだけその壁を強くたもてるかなのよ。それと精神攻撃は動揺によって生まれる心の壁の破綻した部分が狙われるわよ。」
「また話がそれたわね。あなたがこんな格好をしている訳と……「しているわけじゃないさせられたんだ。」……仕事について説明するわ。」
スルーかい
「あなたたちには、ある人の護衛をやってもらうわ。」
「護衛ですか?ほかにも適任がいるのではないですか?」
千花が言う事ももっともだ、俺たちはギルドにも入っていない。
つまり、実力がわからないのだ。
そんな者を護衛に使うのはいかがなものだろうか?
千花はとても強いみたいだが、今までこういった仕事はないだろうし、俺にいたっては依頼はおろか戦闘で役に立つのかすら怪しい。
「まぁ、いるわね。」
「いるんかいっ!」
思わず突っ込んでしまった。
「それを使わないわけはあるのですか?」
「私たち、全人の門は、ギルドの名のとおりすべての人に向けられているの。だから、一般客から王族までの幅広い依頼が来るの。だから、ひとつの依頼にそう何人も使うわけには行かないのよ。だから、今回わ、警護が二人、見回りが三人で、あなたたちを合わせて七人で行ってもらうわ。」
「なるほど。ですが、今までこのギルドを回してこれたのなら、別に渡した違いなくても大丈夫じゃないんですか?」
「だから、私はあなたと美咲を呼んだのよ。あなたの訓練も兼ねてね。翔の方は別に考えていたんだけど、美咲はサボりのようね。予想はしてたわ。というわけで、翔に行ってもらうわ。」
「もしかして、俺ってとばっちりなのか。」
「そうとも言うわね。」
千花は、出て行くところを見ていたので、疑問に思っていたことを口に出す。
「サボりってどういうことですか?美咲さんなら、王宮に薬を届けにいきましたよ。」
「やっぱり、逃げたわね。」
「えっ?」
王宮に行ったんじゃないのか?
「王宮ってそんな簡単に入れませんよね?」
「まぁね。でも、一階は、一般人にも解放されているから。それは最近のことだし、あの無意味に分厚い本の最後のページのほうに更新されていると思うけど。」
「無意味って……確かにはじめのほうは無意味だったがな。だが、どうして国王に会いに行っていないってわかったんだ?」
「だって、昨日から国王は、お忍びでこの国の町を歩き回っているからね。」
「……それってお忍びなんだよな?」
「何で知ってるのですか?」
俺と千花は、確認する。
「だって、全人の門の情報部門だし。」
一言で片付けたけど、ありえないだろ。
この人は敵に回したくないわ。
麻奈花に対するそれぞれの思いを胸に秘める。
だってばれたら怖いもん。
「それってばれてたらやばくないか?」
「大丈夫よ。それよりも問題は、姫様のほうね。」
「姫様?」
オウム返しのように聞き返す。
「神楽姫。国王の唯一の直系で、王位継承権第一位よ。あのこも自覚がないのかしら?お供もつけずにに抜け出したみたいだし。まぁ、二つ名の付与が来年に決まっているほどの実力者だし、大して心配はしてないけどね。でも、護衛はつけておきましょうか。そうそう、ちなみに姫様は、全人の門に入っているからね。仕事は、基本的に政治関係が多いから、戦いが好きな姫様は、しょっちゅう退屈だとか言ってるけど、なかなかやめようとしないのよね。一応、王の座に着くんだからそれくらいのことはできないと駄目だっていうことは考えてるみたいだけどね。それに、戦闘に関してはね。まぁ、実戦は経験していないから、新人よりは戦える程度くらいかな。試合だと、強いんだろうけどね。今度あなたたちと組ませてみようかしら?訓練もかねてね。」
「はっ?」
「えっ?」
何言っているんだこの人は?
「まぁ、とりあえずは目先の仕事についての話をしておきましょうか。」
「ちょっと待って。お城の一階には何があるんだ?」
「美咲を連れ戻そうとしても無駄よ。生き残るために隠密の術をもってるから、本気になったら私も追えないかな。あの術は、魔術じゃないみたいだしね。まぁ、ともかくとして、一通りは説明しときましょうか。あの本読むのが(私は)一番楽なんだけどね。」
「心の声が一瞬聞こえたような?」
「気のせいよ。さっきも言ったように王宮の一階は一般人にも公開されているわ。その設備って言うのは劇場、王と図書館、賭博上さっき話してたライフチェッカーと、後は、国際郵便よ。」
「ギルド受付もあったはずです。」
「そうだったわね。使わないからついつい忘れちゃうのよね。」
「ライフチェッカーと王都図書館はわかるんだが、他のは何だ?……やっぱりいいわ。」
面倒くさそうな顔をする麻奈花に聞くのをあきらめることにした。
「はぁ~、いつになったら本題に入れるのかしら?まぁ、知らないと困ることはあるから説明はしとくわ。王都図書館には、知ってのとおり特殊よ。だから、世界中のほとんどすべての書物が集まっているわ。その内訳は、一般蔵書が約1億5千万冊、魔術書が約5千万冊、その内の約50万冊が禁書と呼ばれているわ。」
「禁書?なんだそれは?」
これに千花が答える。
「それはですね。その名前の通りです。禁じられた書。人の精神を壊したり、生命を作ったり、街を滅ぼせるほどの巨大魔術式が描かれた書物のことです。一般に、これらの禁書を閲覧するには、教会、国王、真実の眼の3つの許可がいるのよ。」
むぐっ。
知らない単語ばかりが出てくる。
「教会と真実の眼ってなんだ?」
「教会っていうのは、禁書や魔道具の保管または管理及び回収するギルドのことよ。魔道具っていうのは、魔力によって動く道具のことよ。たとえば……これ。」
一枚の羽根を取り出す。
今のといいさっきの千花の箱といいどっかから出てくるんだよ、まったく。
っていうかそろそろこれに突っ込みを入れるべきなのか俺?
「どうしたの?」
千花が、悩んでいる俺を心配そうにみつめる。
「いや、なんでもない。それは何なんだ?」
「風の翼って言われる道具よ。効果のほうは、簡単に言うと転送装置です。町ごとにこれとは別の魔道具があり、そこに転送されます。ですが、まだまだ広くには普及してはおりません。理由は簡単に言いますと高いからです。」
「いくらなんだ?」
「金貨七枚よ。一般市民には手の届かない値段ね。」
………………金貨七枚って、二年はゆうゆう暮せたはずだ。
「確かに、高いな。」
「他にも魔道具はあります。ですが、研究段階にあります。ですからまがい物には気をつけてください。下手すると誤作動で死ぬこともあります。」
「でも、やっぱり値段がネックなのよ。こんな高額な値段は、ギルド員でも魔道具を変えるほどお金持っているのはほんの一握りなのよね。便利だけど。」
「理由は今の技術では大量生産が難しいということですね。次は真実の眼についてですね。」
「それは私から説明するわ。」
と、麻奈花が話し始めた……。
読んでくださってありがとうございます。