魔術は斯くも美しい 上
また説明の回が始まります。
あしからず
<side 千花>
麻奈花さんはどんどん奥へ行ってしまいます。
翔さんと私は、その進んで行く麻奈花さんについていきます。
店の奥の部屋に入り、まず、たんすを開けます。
その奥には扉があり、麻奈花さんが開けると部屋があり。
本棚を動かすとまたその奥には、また扉がありました。
いわゆる隠し部屋ですね。
そして、広い部屋に出てきました。
ここで終わりなのでしょうか?
その部屋の真ん中には、大きな円卓と椅子がありました。
「ここで終わりか?」
翔さんが聞いています。
「じゃあ、その机の上に座って。」
「机の上ですか?」
「そうよ。早く乗って。おいていくわよ。」
急いで私と翔さんもとい浅葱さんは机の上に座ります。
「起動」
麻奈花さんが呟きます。
えっ?
今、少しこの机が動いたような?
「この机、気味が悪いな。どうして金色に光っているんだ?」
意味のわからないことを翔さんが言っています。
たとえ光が強く当たっていたとしても、金色には見えることはないでしょう。
どこからどう見ても、木でできているこの机は茶色なのです。
「あんたは魔術の色が見えているんだったわね。参考までに聞いておきなさい。あなたの見え方がこのデータに必ず沿うものではない可能性があるということを認識しておきなさい。」
そういえば、魔術が見えるんでしたね。
私には見ることができないので、とても気になります。
「あぁ。」
「火と爆は赤、水と氷は青、風と雷は緑、土と木は黄、光は白、闇は黒、刻は銀、空は金、無はその名のとおりよ。」
「まったくそこまで理解していないんだが、というより、魔術そのもののことをよく知らないんだが・・・。」
「私が説明します。」
私だってできることはたくさんあるのです。
「まず魔術には、5つの系統が存在します。攻撃系、防御系、補助系、回復系、生成系のことです。」
「これらは名前のとおりでいいのか?」
「その解釈で合っています。」
「待って。」
「い、今の説明どこか間違っていましたか?」
どうしましょう、どうしましょう。
「あわてなくても大丈夫よ。合ってるから。とりあえず先に下りましょう。」
「わかりました。」
安堵からほっとため息をつきます。
「移動」
床がどんどん迫ってきます。
いえ、机が地面に近づいていきます。
地面を通り過ぎて、そのまま机が降りていきます。
しばらく降りていくと地面につきました。
地下特有のほこりっぽさはほとんどなくむしろきれいな感じです。
周りを見渡すと扉が10個ほど並んでいます。
ふと思い出したように麻奈花さんが私に言います。
「そういえば、あなたって竜…死神の娘よね。お母さんは?」
「お父さんを知っているんですか?」
とても驚きです。
「知ってるわ。有名だしね。で、お母さんは?」
麻奈花さんは真剣な表情で聞いてきます。
「しりません。父上に聞いても嘘はつきたくないからと言って、まったく話してくださいません。」
「そうなのね。あいつらしいわね。」
と言って、扉の方へいってしまいました。
気になりますが、あの様子ではどうやら教えてくれる気はなさそうですね。
私と浅葱さんは、数ある部屋の一つに向かって進んでいく麻奈花さんについていく。
そして部屋に入ると、大きな部屋が広がっていました。
もちろん物理的にありえない大きさです。
天井までの高さが10メートル。
その天井まで届くほどの棚がずらりとたくさん並んでいます。
私の家の近くにあった町にあった図書館を拡大したような感じです。
それにしてもです。
さっきの机を移動させたことといい、この魔術による空間といい、国の上位層である宮廷魔術師でもこんなにたやすくこの魔術を使うことはできないでしょう。
麻奈花さんの正体がものすごく気になります。
多分、これも答えてくれないと思いますが。
そうでした、浅葱さんに魔術の話をしないといけないのです。
「さっきの続きです。」
「あぁ。魔術の型だったっけか?」
さすがです。
反則的なこの記憶力のよさにあきれてしまいそうです。
「そうです。魔術には、5つの型と13の属性があるのです。」
「13もあるのか?」
「はい。5つの型は、さっきも言ったように攻撃、防御、補助、回復、生成です。まぁ、魔術の型で最も難しいのは、回復と生成といわれています。」
「どうしてだ?」
「回復には、完全に治すのもありますがそれは魔力の消費量が多すぎるのです。だから、その怪我や病気にあった治療を行わなければなりません。また、生成は自分のイメージしたものを具現化する魔術です。その魔術の特性のため、自分が望んでいるものを正確に考えないと作ることができないからです。」
「なるほどね。そしたらこれは俺にも使えるのか?」
「はい。どんな人でも全型の魔術を操ることができます。人によって向き不向きがあるため、全部の魔術が使えるわけではないですが・・・。」
「千花はちなみに何が使えるんだ?」
「わたしは補助と回復を少々です。」
「あの鎌は生成じゃないのか?」
何のことでしょうか?
………………………………………。
あっ!
鎌黒のことですね。
「あれは違います。あれは、神器です。」
「神器?」
「はい。神器にはそれぞれ特殊な力があります。とても強い力です。これらは神からもたらされたものだといわれています。」
神器を使えば国が一国滅びるとも言われています。
「それは、まずくないか?悪用されたら・・・。」
その懸念はもっともなのですが。
「大丈夫なのです。神器が人を選ぶので、使い手はほとんど悪用されることはありません。まぁ、悪用するために作られた神器が存在するとしたらどうしようもありませんが。」
神器はまだ謎なことが多いのです。
それに、私の使っている鎌黒もその能力が完全に解析されたわけでもないのです。
まだ未知の力に出会えるかもしれません。
「また、神器にはいくらか数があり世界中に散らばっているといわれています。その数ある神器にもピンからキリまであるらしいです。あらゆるものを両断するといった反則的なことから、暗視能力が上がるといった自分で訓練すれば手に入れられる能力まであります。」
「鍛えればいらないものとかもあるんだな。」
「話がそれてしまいましたね。というわけで5つあります。」
「次は属性の話か?」
たぶん、説明し忘れていることはないと思うので、先に進めましょう。
「そうですね。先ほども言いましたように13種類存在します。火、爆、水、氷、風、雷、土、木、これらが創生魔術です。生物の生活や生存に必要な属性を基礎とするものです。光、闇、刻、空、無、これらが創世魔術です。世界の基礎を作ったのは、これらの魔術です。」
「そうせい魔術?どっちも一緒じゃないのか?」
字が分かっていないようです。
「生命活動の中心となるため前者を創生、世界を変える力となっているため後者は創世です。」
と、字を書いて説明します。
「空中に文字が書けるっていのはすごいな。」
「感心していますが、難しいことではないのです。魔力を放出して空中に停滞させるだけです。」
「簡単に言ってるけど、難しいのよ。魔力の操作能力が高くないとできないんだけど。ただねぇ、問題があってね。」
麻奈花さんが言います。
私もうすうす気づいてはいたのですが…。
「紙に書けばいいってことだろ。」
鋭いです。
「そういうことね。使う人はほとんどいないわ。」
「でもね、これには別の使い方があるの。」
麻奈花さんは空に描いていきます。
色がないので見ることはできませんが。
書き終わった麻奈花さんが、書いてた場所に手をかざしました。
「起動」
「なんだこれは!? 魔術式が構築されていくぞ。」
やっぱり、浅g……翔さんの目はおかしいです。
心の中読んだんでしょうか?
浅葱さんと言おうとした瞬間に睨まれたんですが・・・。
さっきまで心の中で言ってたことは、もしやばれているのでしょうか?
…………………そんな恐ろしいことは考えないようにしましょう。
どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!
い、いったい何がおきたのでしょうか?
一息ついている麻奈花さんに聞いてみます。
「何したんだ?」
翔さんのほうが先だったみたいですね。
べ、別に悔しくなんかありませんよ。
「一キロ先のB級盗賊団を潰しただけだけど。」
「「はい!?」」
まったく規格外な人ばかりですね。
麻奈花さんも実はかなりのチートかも?
2012/01/30 属性改正
『光と聖は白、闇と闇は黒』→『光は白、闇は黒』
『星は灰』→消去