本と少女とそれから少年
あしからず
料理に関しては、和洋中、何でもありです
ご了承ください
朝起きて窓を開けて空を見上げる。
雲ひとつない青空。
部屋に入り込む暖かい光が、心地よい風とともに吹き抜ける。
なんとも気持ちのいい朝である。
と、俺の中のすずめの涙ほどの文才が語る。
宿の二階から降り、一階に向かう。
この宿の一階は、美味しいB級グルメが食べられる知る人ぞ知る酒場であり、大通りに面していないため来客者は少ないが、固定客の多い店である。
「おはようございます、翔さん。」
と、声がしたので、そちらを見ると美咲と千花が座っている。
「おはよう、それは何だ?」
「何ってご飯よ。まさか……!昨日は何も言わず食べていたじゃないの。」
「それどころじゃなかったしな。それが食べられるものだということ自体はわかるのだが、何なのかその名前がわからない。」
「体は覚えてるけど知識として忘れたってこと?」
「そういうことになるのかな。」
と、言う俺に本を渡す。
「こんなことのために使う物じゃないんだけど。」
渡された本の題名は、
『全国グルメリポート』
だった。
「これは?」
「ギルドの仕事であちこち行くときは、その土地のおすすめの食事を食べたいじゃない。」
「なるほど。」
そしてそれを見ながら頼んだのは、パンと豆スープと紅茶。
「それここの名物じゃないし。何のために見たのよ、まったく。というか、あんたそれだけで足りるの?」
「大丈夫だ、俺の胃袋はお前のと違って底なしじゃないんだ。」
美咲の前に並ぶ皿は、ざっと十枚しかもほとんどが肉料理だ。
「それに見てるだけでおなかいっぱいになる。」
そして、ふと疑問に思ったことを口に出す。
「お前、天月はどうしたんだ?」
ピシっ!という音が出てきそうなほど、固まる美咲を見て、千花が聞く。
「天月さんというのはどのような方でしょうか。」
「天月って言うのはね・・・もがっ。」
何が起こったかというと美咲が俺の口の中にパンを突っ込んだのである。
「お前何するんだよ!」
と、飲み込んで抗議しつつ美咲を見るととてもまじめな顔をしていたので、黙る。
「天月って言うのは、私の知り合い放浪癖があるからあった時に教えるわ。」
と、千花に笑って言う。
「そうですか。」
「早く食べないと冷めるわよ。マスターもう一皿!」
「あいよ。」
と、食事の時間は過ぎ去った。
部屋に戻った俺はボーっとしていた。
こん、こん、こん。
とノックの音がする。
「開いてるぞ。」
入ってきたのは、美咲だった。
「どうしたんだ?」
「あんたに釘を刺しておこうと思ってね。天月のことは誰にも言わないでほしいの。」
「どうしてだ、あいつはお前のパートナーじゃないのか?」
「天月は、狼じゃないのよ。」
「狼って何だ?」
「えっ!またさっきと・・・。」
「同じ感じだな。」
「たぶん植物も同じよね。」
美咲はまた本を取り出した。
こいつのかばんには何冊本が入っているんだ?
と、思いながらも題名を見る。
『食べられる動物 食べられない動物』
「お前食べ物ばっかだな。」
「ま、まちがえたのよ。」
と、美咲が恥ずかしさで顔を赤らめながら答える。
「あれ?ここに入れといたはずなのに、おかしいわね。」
と、かばんをひっくり返すと20冊位の本が出てきた。
「入れすぎだろ。」
それらのほとんどの本が食べ物関係であったことは、割愛する。
「あったわ。」
次に渡された本は、
『ワールド図鑑』
「厚すぎるだろ!」
そう、この本は、美咲のかばんにどうやって入ったのかわからないくらい分厚いのである。
さらに言うと、片手ではもてない重さである。
「これ半分は覚えないとギルドに入れないわよ。」
「まじか。」
と、美咲の言葉に戦慄を覚えた。
美咲が片付けようとしていて積み上げた本が一冊落ちる。
その本を手に取り開くと、よく見るページに跡でもあったのか開いたページがあった。
そこには……。
天月が描かれていた
読んでいただきありがとうございます。
それといまさら気づいたんですが、評価していただきありがとうございます。
感想も中辛、辛口、激辛なんでもござれです。
でも、時々、甘いのも……。
とかほざく前に文才無いなりに努力しますので、今後ともよろしくお願いします。