天秤のギルド下
最後のほうは名前ばっかりです。
名前のところは飛ばし読みしても多分大丈夫なはず。
千花はずっと黙っている。
「どうしたんだ、さっきからずっと黙って。」
俺は、聞く。
「なぜ、今まで、美咲さんは、この力を使ってこなかったと思いますか。」
「わからない。」
「もしこの力が世間に知られればどうなると思いますか。」
俺は、聞かれてもまったくわからないということを首をすくめてアピールする。
「王様に呼ばれて専属医とかにさせられるでしょうね。」
「いいじゃないか、いい暮らしができるとおもうんだが。」
「そうです。確かにいい暮らしはできるでしょう。ですが、もし仮にです。」
「あぁ。」
「あなたがこの国を滅ぼそうとして、王様を殺そうとします。そのときにどうしますか?近衛兵がいるので、正面突破は無理でしょう。ということは、毒殺が一番簡単です。その場にいなくても殺せるのですから、しかし美咲さんは、どの病でも、怪我でも治せます。もちろん毒も。」
やっと千花が、言いたいことに気がついた。
「まず、美咲が狙われる。」
「そういうことです。生きていきたいなら、この力を人目に触れさせることは得策ではないはずなんです。政治とかそんな生易しいものではなく、国家の争いに巻き込まれるのだから。」
そこで、俺は気づいた。
「王都に始めて来た千花が気づいたんなら、当然お前も……。」
と、美咲のほうを見る。
「そうね、気づいていたわ。」
「じゃあどうして使ったのですか?」
「あなたたちは、知らない。救えるのに私の力を使えば助かるのに、私が生きていきたいと思ったがために死んでいく人たちがいるそんなのをずっと見続けてきた、その苦しみが。私は、耐え切れなくなってきたの。そして、あんたを見つけたわ。花で決めた、この力をこれから人を生かすために使うか否かを。」
「俺が今ここに生きているのは……。」
「そうそれが私の選択、選んだ道よ。だから、千花が気にすることないの。」
「っていうかよく生きてたな。もし選んだ花の花びらが一枚足りなかったら、俺、死んでたじゃん。」
俺の背筋を冷や汗が伝う。
「でも……。」
不安そうな千花に美咲が言う。
「それにこのギルドにそんなことを広めるような悪いやつはいないしね。」
「そういうやつは、全員こいつが自分で殴り飛ばしていたからな。」
と、いつの間にか冬樹が会話に参加している。
「いつから居たんですか!」
と千花が驚き思わずといった様子で声を上げる。
みんなが何に驚いているのかわからない俺。
「さっきから居たぞ。結構、はじめの方から。みんな気づいてなかったのか?俺はてっきり冬樹さんにも話しているのかと思ってたんだが。」
「私もいつものように気づかなかったんだけど、本当にあんた何者よ?」
「ただの記憶喪失者です。」
「まぁいいわ。」
美咲はすぐに追及の手を緩めた。
俺に冬樹さんが話しかけてくる。
「今そいつらが、美咲の事なんて呼んでるか知ってるか。」
俺の答えを待たず、冬樹さんは言う。
「姐さんだぜ、姐さん。」
と、言って笑い出した。
背後にいる美咲からさっきを感じる。
「冬樹、覚悟しなさい。」
「怖いので退散します。」
と、言って消えた。
「えっ!」
そう文字通り消えたのだった。
「冬樹さんって何者?」
「このギルドのナンバー2、マスターと一緒にこのギルド作ったひとよ、他にもいるんだけどね」
「このギルドって、いつできたのですか?」
「5年前よ。二人とも二つ名持ちの実力者で、一気に四大ギルドの一つになったのよ。」
「二つ名って何?」
「実力や功績が国から認められた人が、王から与えられる名前のことよ。これをもつ人は、尊敬されるわ。今、現在生きている人の仲では、11人よ。千花の父もそうよね。『死神の鎌』龍炎さん。」
「ど、どうして、私の父だと?」
なぜか千花が動揺している。
「だって、神鎌流で神器持ちって言ったら、そうしか考えられないでしょ。」
「神器って何だ?」
「とてつもなく大きな力を秘めた武器のことよ。一般的に神器の多くが、家宝よ。だから、とても狙われやすいの、千花は、ほんとに危ないとき意外は使っちゃだめだよ。私の力と一緒だから。二つ名持ちは、多くがって言うか全員がギルドに居るわ。周りの評価からつけられるようなものもあるらしいけどね」
全人の門マスター
銀鷹の目
光
全人の門マスター補佐
不縛の霧
冬樹
協力の輪トップ
慈愛の聖
弥生
協力の輪セカンド
白翼の人
如月
賢者の言筆頭
英知の口
源蔵
賢者の言次席
先読の使
曙
王国の礎隊長
全天の剣
烈
王国の礎副隊長
強堅の盾
梓
近衛隊長
王影の守
蓮
自称天才の流浪魔道士
魔人の師
夏海
神鎌流当主
死神の鎌
龍炎
と、美咲に説明された。
その人たちの実力や成し遂げてきた功績についても話されたのだが、眠くて覚えていない。
その日は、近くで宿を取った。
夕食もそこそこにベッドに入り意識を闇に沈めるのであった。