ギルドへ行こう!
美咲の話が終わり、遠くに建物が見えてきた。
太陽はすでに西側に傾きだしている。
「あれが王都よ。といっても城壁だけどね。夕暮れまでにはギルドにつけるから、そこは安心して。
向こうに着けなくても、ここら辺は強い魔物も出ないし、野宿できるから。」
「はい。」
「やっとか。って、魔物って何。」
「高密度の魔力に当てられて、姿が変化した動物のことよ。それが知能を持ったら魔人という分類になるわ。
魔物も魔人もそのを使って、炎を吐けたり、魔人にいたっては、魔術を使ってくるものもあるらしいわ。そういったものをギルドが退治したりするのよ。」
と、いったん説明を終えた。
「ところで、いまさらだけど、うちのギルドでいいの?」
美咲が、千花に向かって聞く。
「うちのギルドって、ほかにもギルドがあるのか?」
「この国には、ギルドが無数にあるわ。中でも、4つがそれらのトップにたっているわ。
それはね。
民間人の生活を助け支えていく、『協力の輪』。
城の兵たちの集まりからできた、『都市の礎』。
王の政治に助言と意見を述べる、『賢者の言』。
政治に干渉されないなんでも屋、『全人の門』。
これの、『全人の門』が私がいるギルドよ。」
「でも、さっきのうちの3つで十分だと思うんだが。」
「協力の輪は、基本的にそのギルドがあるまちの外での活動は越権行為だし、都市の礎は、下手にほかの都市に干渉したらしたら戦争になっちゃうから、それを補うための全人の門なのよ。」
「美咲さんの服についているそのバッチは、ギルドのエンブレムですか?」
「そうだよ、中立と調和の天秤。でどうするの?」
「私もそこに行こうと思います。」
その後、三人はしばらくたわいもない話を続けていた。
「やっと、到着した。ここが、南門よ。」
「すごい人だ。」
普通、外から、城壁があるため町の様子は見えないが、門が開いているので、その間から見ることができるのだ。
中には、人の海が広がっていた。
千花も初めてなんだろう、俺と同じように驚いている。
「今日は、お祭りの日ですか?」
「毎日この調子よ。」
俺が門をくぐろうとすると目の前に槍が現れた。
「見ない顔だな。身分証を提示したまえ。」
俺がどうしたらいいのか、困っていると、美咲がバッジを見せた。
「後ろの二人は、連れです。二人とも、今から身分証を作りに行くところなんです。」
「猫かぶってる・・・ふぎゃ。」
思いっきり足を踏まれた。
「どうぞ、お通りください。」
ギルド様様ってことかな、いや美咲にあてられたのか。
彼の顔がちょっと赤い。
「あんただまされ・・・ふぎゃ。いたッ。脛はないだろ脛は。」
涙目になりながら抗議する。
が、無視された。
入ってしばらくのところ、千花が祭りだと思ったところに行った。
「市場よ。日用品から情報までたいていのものは、ここで手に入るわ。おっちゃん、りんご3つ!」
「ほれ。いつも世話になっとるからやるわ。」
と、投げてよこす。
「今のは?」
「行商のおっちゃん、いつも私が町の移動依頼受けてるから。」
りんごを食べながら、市場を抜けると広場があり、いくつかの店らしきものがあった。
「人が減りましたね。」
「ここには、宿が多いわ。でも、ギルド員はちゃんと住む場所が別にあるから。気にしなくていいわ。後、向かいにあるのは、鍛冶屋よ。市場に武器も出回ってるんだけど、あたりはずれが多いから気をつけて、その点、鍛冶屋は一定基準をクリアしたものだから安心よ、その代わり値段もするけどね。あの鍛冶屋のおっさん、自分が気に入った人には、オーダーメイドで作ってくれるらしいわよ。私もほしいんだけど、作ってくれないのよ。」
と、言って一呼吸置き、ささやき声で告げる。
「内緒にしておいてほしいんだけど、その人、細工の民なの。」
王都に来るまでに美咲が話してくれたことを思い出し、うなずく。
とりあえず、今日はギルドに行くことにして、そこを通り過ぎた。
広場を出てしばらく店が続く。
さっきのとこと違って、屋台の数が多めだ。
それも、甘いお菓子などが中心である。
二階建ての建物が2つ並んでいた。
「東側が、協力の輪よ。」
指差した先には、数十個の輪が輪になっているマークがあった。
おそらく、輪の一つ一つが人を表しているのだろう。
「それじゃ、西側が?」
「そっ。」
そして、美咲は言った。
ようこそ。われらがギルド、全人の門へ。
更新が一週間に一度くらいになります。
2012/02/29修正