One and Only
うららかな春の陽ざし。ぬくもりを孕んだ気まぐれに吹く風。揺れる緑の梢。
こんな風に周りが煌めく日は、無性に彼女に会いたくなる。
異形の子、とルルは周りから忌み嫌われていた。
まず真っ先に目を引くのがその白い髪。
まるで妖怪だ、不吉の象徴だ、と一度血も涙もない輩にばっさりと乱暴に切られてしまったそれは、今では肩ほどの長さにまで伸びた。短く整ったのも好きだけど、やっぱり女の子なんだからそれぐらいの長さがちょうどいい。
たとえどんな長さでも、ぼくがルルを大好きでいる自信は勿論ある。なんせ自分はその白髪に引くよりもまず惹かれた身なのだから。
生まれつき色素の無かったその髪は、日光を浴びると金色に縁どられこの世のものとは到底思えないほど神秘的。何度その風景を目にしても未だに息を呑んでしまう。
最近は髪形をアレンジするということも覚えて、ルルが綺麗になることに対しての僕の喜びは益々大きくなるばかりだ。今度街に出かけたら、花の髪かざりや綺麗な色したリボンを買ってそれをルルに贈ろう。きっと似合うに違いない。
それから僕の一番のお気に入りは、周りが一番恐れたその両目。
片方は水色で、もう片方は黄色に色づいている。
そのせいで、不気味がられて、怖がられて。
どうしてこのアシンメトリーの美しさが他の人間は分からないのだろう。
色狂いのその目は宝石、と表現するよりビー玉やキャンディ、と表した方がよりルルの可愛さが強調できると思う。本当に、日のもとで輝く左右非対称の瞳は無邪気で愛くるしい。つられてこっちまで笑ってしまう。もっとも、ルルがこんな風なはにかみ屋になったのはぼくと出会ってからなのだから仕方の無い話なんだけれども(ルル自身の口から聞いたのでこのことは真実だ。決して僕の自惚れなんかとかではなく)
ただ残念なことに、ルルはその異なる鮮やかな虹彩を授かる代わりに右耳の聴力を失ってしまった。ルルの右側の世界は永遠に無音だ。
それでも、二人の間には何の不満もないし、不便もない。
右隣にいる僕の「大好き」がルルの耳に届かないのなら、左から言えばいいだけの話だ。
そうすればお互いずっと笑い合える。
雪のような髪をなびかせて、空と太陽の色した│眼を細める彼女。今直ぐ駆け出し抱きしめ、「愛してる」と言ってやろう。
僕があるべき場所へと、僕は走り始めた。
タイトルは「恋人」という意味です。
ルルはオッドアイの白ネコをイメージしました。髪の色や目の色、難聴といった部分を取り入れています。
ルルという名前もフランスでの猫の鳴き声のオノマトペ「ルルナール」からです。
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ここまでありがとうございました。