対となるもの
短めです。
レティの元を訪れる直前のお話。マリアンヌ視点。
「やはり行くのかい?」
後ろから掛けられた言葉に私はふふん、と笑った。
「勿論よ。うらやましい?」
だが彼は首を竦めるばかりだ。
「彼女は怒ると思うけど」
「でしょうね。でも最後には絶対折れてくれるわ、だってあの子優しいもの」
「レティシアに同情するよ」
心のそこから彼女を哀れむ彼の声に私は再度「うらやましいでしょ」といった。
「そうだね」
おや、と以外にも素直に頷いた彼に軽く目を見開く。
「出来ることなら側にいて守ってやりたいけれど、彼女はそれを許さないだろう?」
「そうね、あの子ってばツンデレちゃんなのよ~。ん?でもどっちかっていうとクーデレかしらん?」
少し前にあちらへ渡ってしまった最愛の妹の姿を思い浮かべる。
「あんなに貴方のこと大好きなのにね」
「彼女のそれは家族愛だよ」
「そうかしら」
"家族"としての定義が薄い私たちにとってはあまりそういうのは関係ない気がする。
いずれにしろ王になるには、王女の誰かを伴侶にしなければいけないのだから。
「でもあの子を他の兄弟たちにやる気はないんでしょ?」
「彼女の気持ち次第だよ。本人が望んでいるなら僕に口を出す権利はない」
「お互い素直じゃないって言うか…むしろ貴方の場合は腹黒いって言ったほうがいいのかしら」
「やだな、そんなことはないよ」
レティシアを狙う兄弟たちがいると知れば真っ先に潰しにかかるくせに-・・にこにこと笑みを絶やさない目の前のこの男が一番危ない気がする。
「可愛そうな私のレティちゃん」
まぁ他の兄弟に可愛い妹を持っていかれるよりはまだ目の前のコイツのほうがマシだが…まぁその前に私が手出しはさせないけどね?
「アンジェラにも宜しくいっておいてくれ」
「あの子も貴方のこと好きだもんねー。全くどこがいいのやら…どうせ同じ顔をしてるんなら絶対私のほうがいいのに」
「どこからそんな自信が出てくるのか僕は不思議だな」
「失礼ね、負けないわよ」
「そもそも君は女性なんだから根本的に無理じゃないか」
「あら、私は自由恋愛なの!むしろ可愛い妹たちは別よ!べ~つ!」
べっと舌をだす。
「大人気ないな」
「貴方にいわれたくないわ~」
これ以上話していてもきりがないと、私は背を向ける。
「じゃね、まぁ貴方もぼちぼち立ち回ることね~ん」
ひらひらと手を振れば後ろでくすりと笑う声がした。
「レティシアたちの宜しく頼むよ」
「言われなくても、そのつもり。あっ遊びになんかこないでよ~?私と可愛い妹たちのらぶらぶな時間だけは邪魔しないで頂戴」
「レティシアから招かれない限りは行かないつもりだよ」
さも招かれる自信があるかのような言い方だ。嫌味な奴。
あれが自分の片割れだ何て…私たちを双子に生んだお母様を恨むわ。
私は"門"をくぐって愛しの妹たちの元へと先へ急いだ-・・早いところこのささくれだった心を彼女たちで癒してもらわなきゃ気がすまないわ。
マリアンヌがでてくると絶対シリアスじゃなくなる罠。
片割れの名前はまた次回。