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NoLifePrincess  作者: 墺離
3/11

無関心組曲

前回とは全くといっていいほどのノリですのでご注意を。


3姉妹のある日のティータイム。

 

 不死者の王には72人の子供たち。

 66人の王子と6人の王女。


 次の王になれるのはただ一人。

 さて、誰が生き残る?




                     *




 レティシアはカップをテーブルの上に戻すと顔を上げて、前に座る自分よりも幼い少女へと視線をやった。

 

 「アン、アンジェラ。(くち)、付いているぞ」


 「ほぇ?」


 アップルパイを口いっぱいに頬張りながらきょとんとした顔を見せる妹にしょうがないな、とレティシアはハンカチでその口元を拭ってやる。

 アンジェラは照れたように子供特有のぷっくりとした頬を赤く染める。


 「ありがとう、レティお姉さま」


 「いいなぁ~。ねぇレティ、私も~」


 「…マリアンヌ姉様には必要無いでしょう」


 二人の間に座る女性が身を乗り出してくるが、レティシアはそれを軽くあしらった。


 「あぁん、レティが今日も冷たい~!でもそこがまたいい~!」


 なにやら勝手に一人悶えている姉にレティシアは冷たい視線しか送る事が出来なかった。

 そんな仲睦ましい(?)姉妹の様子を見守るのは側で給仕として控えるレティシアの魂鬼(こんき)(タオ)とマリアンヌの魂鬼のメルだ。


 「あらまぁ、お楽しそうですわね」


 「主にマリアンヌ様が、だとは思いますが」


 道の目からは主人(レティシア)が心のそこから楽しんでいるようには見えない。

 むしろマリアンヌのテンションについていけていけない、といった風体でくつろぐ、というよりは疲れていっているようにも見える。

 この茶会だって発端はマリアンヌだ。

 「折角姉妹三人同じ屋敷に住んでいるんだからたまにはお茶会しましょうよー!!」

 と、騒ぎー・・いや言い出したのは今朝のこと。


 レティシアが冥界の喧騒から離れたくてこちらに居を移して3年の月日が経つが、アンジェラに続いてマリアンヌがこの屋敷に押しかけて来てからというもの静かな日というのは三日ともたない。


 「マリアンヌ様はいつもお元気ですね」


 「えぇ、だってマリアンヌ様ですもの」

 

 うふふ、と意味深な笑顔でメルは笑う。


 「そういえば、今日はまだ(ロウ)さんの姿をお見かけしていませんね、出かけられているのですか?」


 いつもメルと一緒にいるはずの、黒い(オオカミ)の姿をした魂鬼の姿が見えない。


 「えぇ、今日は少し冥界のほうに」


 彼は主の命でよくこの屋敷を空ける。

 玉座を狙う争いから身を引いて中立の立場を貫いているレティシアや、幼い故に命を狙われやすく、そのためここに身を預けているアンジェラとは違い、マリアンヌは今でも玉座争いに一枚噛んでいる。

 他の兄弟姉妹に比べれば玉座に対する執着心はないものの、彼女は彼女なりの"野心"があるようで、こうして自分の魂鬼を冥界に向かわせては情報収集に走っているのだ。


 「夜には戻ると思いますわ」

 

 「では今晩は兎のソテーにしましょう」


 「まぁ!彼も喜びますわ」


 我々魂鬼はモノを食べなくても問題はないのだが、生きていた頃の習慣として"嗜好品"的な意味合いでなら食べ物を口に含むことがある。

 ちなみに兎のソテーは(かれ)の大好物だ。


 「タオ、タオ」


 くいくい、と袖を引かれそちらを見ればいつの間に具現化したのか、アンジェラの魂鬼である小鹿の姿をしたウェイツがいた。

 主と同様、魂鬼としても幼い彼の言葉は少し舌っ足らずだがそれが外見と妙にマッチしていてまた愛らしくもある。



 「どうしました、ウェイツ」


 「あれ、とめなくていいの?」


 彼の言葉にほんの少し間意識をはずしていた主たちが座るテーブルへと目をやりー・・道は彼にしては珍しくほんの少し慌てた。


 「レティシア様!」


 いつの間にかレティシアの顔はマリアンヌの豊満なバストにずっぽりと埋まっていた。


 「んふ~レティちゃんだ~いすき~」


 「っ!?っ!!」


 「マリアンヌお姉さま!レティお姉さまがちっそくしてしまいます!」


 「あら~ん?ごめんね~アン~貴女もだ~いすきよ~ん」


 「きゃっ」


 レティシアの体を抱きしめていた両手のうち片方をはずすと、こんどはアンジェラまでもその腕の中にぎゅっと閉じ込め始める始末。

 少しばかり解放されたレティシアは(相変わらず腕の中だったが)顔をあげ空気を求めた。


 「むっ…胸で死ぬかと…」


 「だーいじょうぶよ~レティちゃんもー、揉めばもっと大きくな」


 「大きなお世話ですし、そういう話ではないです!お姉様!あれほどお酒は駄目だといっているのにいつの間に…っ!!」


 道はマリアンヌの座っていた椅子の足元を見やるー・・本当に、いつの間に持ち込んでその上、いつの間に飲んでいたのか。主人のワイン蔵から持ち出されたと思われる空き瓶が数本転がっていた。

 …今度からもう少しワイン蔵の管理は厳重にすることにしよう。


 「だって~レティちゃんのもってるワインみ~んなおいしいんだも~ん」


 「お姉様はお酒が弱いくせに限度を知らなさすぎるのです!ー・・道!メル!」


 「はいは~い、さーマリアンヌ様、少し落ち着きましょうね~」


 「いや~ん、もっとぎゅってする~」

 

 「これ以上はご勘弁ください、マリアンヌ様」


 メルがマリアンヌを後ろから羽交い絞めにし、腕の力が少し緩んだところで道が二人を抱き上げて救出する。


 「レティシア様、アンジェラ様、ご無事ですか?」


 「きゃ~!高~い!」


 「……」


 道の腕の中ではしゃぐアンジェラとは相反して、レティシアはその身をぐったりさせている。


 「…道、部屋に戻る」


 「はい、レティシア様」


 アンジェラを彼女の魂鬼に託し、少しばかりよろよろとした足取りで屋敷の中へと戻る主人の後に続く。

 

 「いや~ん待って~レティちゃ~ん」


 「マリアンヌお姉さま、おうじょうぎわが悪いですわ」


 「あきらめましょうね~」

 

 …などという声を背後に受けながら道は思った。

 自分としては主人(レティシア)にこそ玉座がふさわしいと心のそこから願ってやまないのだが、こういう日々も悪くないのかもしれない。

 

 「どうした、道。随分と楽しそうじゃないか」


 「そう見えますでしょうか?」


 「あぁ」


 そう頷く主人の後姿も心なしかー・・あぁ、やめておこう。うっかり口にしようものなら途端、我が主はへそ(・・)を曲げかねない。


 とにもかくにも、今日も何事もない良い一日だった、ということにしておこうか。



   

 


 

 


 




 

ちなみにマリアンヌは第二王女、レティシアは第五王女で、アンジェラが第六王女です。

全員母親はちがいます。

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