訓練開始!
訓練――そう言われて付いてきたのだが、どうやら予想とは違ったらしい。
(マジで?)
目の前の光景に冷静でいられるのも、やはりスキルのおかげだろうか。
並べられたのは拷問器具の数々。手術台。そして、見たこともない変な機械。
「そういえば、あなたの名前を聞いていなかったね。お名前は?」
白衣を着た、子どもほどの体格の人物が尋ねてきた。
「森川凛です」
「あなたも14歳なの?」
「はい。『俺〝も〟』って…?」
「召喚される人のほとんどが14歳なんだよ〜」
その間も彼はカチャカチャと音を立て、手術――いや、訓練の準備を進めていた。
「あなたの名前は?」
「私ですか?私はアスモデウス。覚えなくていいですよ。服を脱いでください」
「え?」
あっという間に全裸にされ、手術台の上へ。
(やっぱり俺なんだ…)
「森川殿は不老不死ですので、痛みに慣れる訓練をします。痛みや恐怖は思考を鈍らせますからね」
彼は言いながら、俺の体に刃を立て、滑らせた。
(痛いけど耐えられないほどじゃない…)
「おや、君は痛みに強いようだね」
「そんなことないですよ」
「まあ、まだ真皮を切っただけですし、人によってはあまり痛くないかもね」
そう言うと、急に刃を深く沈める。
心臓にまで迫るその痛みに、口から血がにじむのがわかる。
回復魔法を使おうと手をかざすと、アスモデウスに止められた。
「は?!なんで邪魔するの?」
「それじゃ意味がないじゃないか」
アスモデウスは俺に首輪をはめ、手首・足首・胴体を拘束具で固定した。
その後も刃を立てられたが、スキルのおかげで耐えられる。
「うわっ、君の魔力、多いね…僕より多いかも。いいこと思いついた!今日はここまで!部屋で読書でもしててね〜」
「え?」
刃まみれの俺を置き去りにして、彼はどこかへ行ってしまった。
後ろにいた人たちが刃を抜き、部屋に案内してくれる。
そこには大量の本があり、魔法や魔力の知識が詰まったものばかりだった。
(アスモデウス…変な人だな)
*
体育館のような広いホールには、四人の人影があった。
「君が藤田くんだね?」
「は、はい。藤田葵です」
「俺はバルバトス。よろしく」
「よろしくお願いします」
「テイマーってことだけど、君自身が強くならなきゃ従う者はいない。なんでも吸収して学ぶんだ」
「はい!」
「まずは持久力の確認から。あそこを走ってて」
神谷もそこにいた。
「俺はアガレス。名前は?」
「俺は神谷透」
「よろしく、透!早速だけど、あっちのやつと一緒に走って。何周できるかでメニューを決める」
「わかりました」
「藤田さん!」
「あ、神谷くん!」
「俺も走ることになったから一緒に走ろう」
「わかった」
二人は話しながら走り続けた。
「清水くんと結城さん、それに森川はどうしてるかな?」
「気になるね…」
「藤田さん、急に異世界に連れてこられてびっくりした?」
「そりゃあびっくりしたよ。急に戦争です、戦ってくださいって…あまりにも勝手すぎる。まだやりたいこともあったし、推しにも会えてないし!神谷くんは?」
「俺もびっくりしたかな。でも隣で森川が落ち着かせてくれて有り難かった。弟たちも心配だな…」
「弟いるの?」
「うん、小3と年中の。共働きだから俺が面倒見てた」
「それは心配だね」
「まあ、とにかく死なないよう頑張らなきゃな」
「そうだね」
*
「ベレトだ」
長い沈黙のあと、告げられた。
「あ、えっと…結城陽菜です」
「人を治すスキルを持ってるそうだ。まずは人体の仕組みから学ぼう。スキルの特性上、自分に回復魔法を使うことが多くなるだろうし、魔力も増やしていこう」
理解しているが、やりたくない訓練だ。
「君のスキルは他者の痛みや傷を自分に移すものだ。治癒能力は異常に高く、致命傷も五秒で回復する。ただ、痛みは痛いし、ウイルスなどの影響もあるから注意。病は薬でしか治せないからな。回復魔法を使うのがオススメだ」
(他の人はいいよな…武器マスターやテイマーは直接痛みに晒されない。錬金スキルだって戦場に出なくてもいい。森川くんの不老不死は老いないし死なないし1番いいじゃないっそれなのに私のスキルは…)
*
「私はパイモン。よろしくね」
「よろしく、僕は清水唯斗。あなたは…女の方?」
「そこは探らないお約束よ!」
パイモンは男性の角ばった体に、女性のような柔らかい顔が乗った不思議な人だ。
「あなたには科学の授業をする。作ってほしいものが沢山あるから、ビシバシいくよ〜」
難しい授業だが、多方面の知識を教えてくれるので面白い。
聞いているだけで、知識欲が刺激されるのだった。




