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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

野獣先輩!覚醒の時!

作者: ヒロモト

「お前が食べられろろろ!おっおっ俺が逃げてる間!」


牧原はルカの背中を強く押した。

ルカはうつ伏せに倒れた。

グルルルと上から唸り声が聴こえる。

翻訳するなら『ナニカクワセロ』だろうか?


巨大な熊だ。


立ち上がろうとしたが熊に胸を軽く小突かれ吹っ飛んだ。

普段ルカが牧原にイジメで受けている『牧原最強パンチ』などとは比べ物にならない大型獣の力。


いつもの放課後。体育館裏。ほんの少し牧原に殴られて終わるはずの数分がこんな事になるとは。小学生の頃から8年間。イジメられてイジメられて最後は突然林から現れた熊に殺されるなんてあんまりだ。

仰向けになって青い空を眺める。

膝が痛い。胸が痛い。息苦しい。


「野獣先輩!何やってんだ!」


少し遠くから聴こえる牧原の声。

顔が女っぽい。ひどく痩せている。バレエをやっている。

牧原にとってそんなルカはオカマであり野獣先輩らしい。

ルカは野獣先輩を知らないがひどいあだ名なのは分かる。


「うぅっぷ!」


熊がルカの腹に片脚を置いて体重を少し乗せた。

パキパキとあばら骨が砕ける音がした。


腹と喉からコポコポと血が泡立つ音がする。


「ヴァッ!」


ルカが吐いた血が目に入ったのかクマは少し後ずさりをしたので、その隙をついてルカは何とか立ち上がった。

その後にルカが取った行動を牧原には理解でき無かった。


「バーカじゃねぇの?野獣先輩!逃げろ!」


立ち上がったルカはファイティングポーズを取っていた。

本能からなのかもう逃げられないと諦めたからか?


頭はもう物を考えられない。

強く頭を打ったからか視界は歪む。

膝からは出血し、上半身の骨は何本か折れ、口からは血が溢れ呼吸がし辛い。

自分の垂れ流した小便と糞の臭いが鼻を突く。


「チャッ!」


人を殴ったことのない少年のパンチが熊の顔面に当たった。


「……」


クマにとって痛くも痒くもないが『この生物は自分を敵対している』事は分かった。


怒号を上げ、2本脚で立ち上がり、両手を広げた。

145センチのルカの倍以上の身長。

体重差は数百キロ。


クマは前に倒れ込む力を利用してブォンと腕を振った。

爪を剥き出しにした本気の攻撃。

ルカは後ろに下がり回避を試みたが『かすった』。


ルカの左頬の肉は剥がされ、その先にある歯、8本が吹っ飛んだ。

大量のアドレナリンで痛みをぼんやりとしか感じていないルカはこれを『ラッキー』と思っていた。

爪は目をそれた。

死んでもいない。

戦える。


一度軽く屈んでダッシュし、熊の懐に飛び込み、手刀を熊の右目に刺し入れた。

ルカの手は小さく指は細く長い。

熊の目の中にルカの右手が手首まで挿入された。


「ちゃあああっ!」


絶叫しながらルカが手を抜くと潰れた熊の目から房水と血が噴き出た。


「……あああ」


自分がイジメていた。自分より遥かに弱い存在だと、思っていたルカがクマと戦っている。

牧原は腰を抜かしてその場から金縛りにあったように動けない。


クマは痛さからか闇雲に両腕を振り回している。

それは『大型トラックの威力と日本刀の切れ味持った超スピードの腕』だ。

まともな神経の人間なら近寄る気などしない。


ルカは走った。

そして両手を広げて飛んだ。


『イエス・キリスト様ってあんなかな』


牧原はルカの華麗なジャンプに見とれていた。。


自分と熊の血と小便に塗れたルカは美しかった。

ルカはつま先で熊の眉間に着地した。

落下スピードと体重が乗った中学校指定の革靴が槍の様に眉間にめり込む。

その一撃はまるで槍。

ルカは熊の額の上で白鳥のポーズを取っていた。


「……」


そして自分抱きしめる様に空中で三回転して着地した。

ルカのつま先の骨はグチャグチャに折れていた。


「はぁっ!?何してんだぁ!おおんん!」


熊が林の方へ『逃げた』。


ルカが感じたのはなぜか激しい怒り。


「野獣先輩!もっ、もうじゅーぶんだってぇ!」


牧原はルカを止めたかったが恐怖で動けない。


ルカはなんとクマを追いかけた。


飢えた熊の戦意を喪失させ逃亡させた少年が熊を追いかける。


人生で一度だけ見れば腹一杯のシーンだ。


熊とルカが林に消えて数分か数十分か。牧原はやっと足に力が入るようになった。

パトカーのサイレン。町の緊急放送と学校の放送はミックスされ結局何を言っているか分からない。

恐らく『熊が目撃された』と言っている。

「知っとるわい」と笑いながら牧原は

立ち上がった。


「ひようぅぅっー?」


自分でもどこから出てるか分からない声が出た。

野獣先輩……ルカが右手に熊の顔。左手に生きた子熊を持って林から現れた。


「野獣……先輩?」


「……なんか。小熊がいてさ。うん。あいつ親だったんだね……僕がまだ戦おうとしたら自分で自分の顔を剥いだの。『これで許してくれ』って事かな?」


「……知らねぇよぉ」


「子供を飢えさせたくないのは熊も同じか……熊の自殺……いいものが……みれた」


「野獣先輩!」


倒れそうになるルカを抱きしめるように支えた。


「野獣先輩は……なんか……やめてほしいかな?」


「分かった分かった分かった分かった分かった」


熊を恐怖で自殺させた男に今後逆らう訳が無い。


パトカーのサイレンの音が近づいて来ている。


(ラッキー。パトカーに救急車も付いてきているぞ)


ファンファン。ピーポーピーポー。


パトカーと救急車のサイレンはルカの覚醒を祝っている様だった。










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