侍女たちの会話
お披露目の準備は整いつつあった。一日中働いていたミーファは椅子に腰掛け、飲み物を口にしながら身体を休める。
「ねえ、王妃様ってどのような方なの?」
突然、他の侍女からそんな質問を受けた。新しい王妃様が気になるのも当然のことだと思う。ユティシア様は、公の場には姿をあらわしたことがなく、噂だけが飛び交っている。…悪い噂ばかりなのは腹立たしいことだが。
「他人の言葉を信じるより、ご自分で見てみた方がよろしいですよ」
ミーファがそう返すと、侍女たちはだって、ねぇ、と言った。
「いい噂は聞かないし、正直お仕えするのは嫌だわ」
「そうよね、マウラ様の方がよほど素敵よ」
「王妃様は理想的な方です。マウラ様にも劣らずお美しくて、お優しい方ですよ」
そう言ったが、誰もミーファの言うことを信じようとしない。
この人たちは何も知らない。あの方が、どれほど素晴らしいかを。
ミーファは兄であるローウェの願いによって、新しい王妃の侍女となることを決めた。ローウェからは王妃様の噂は嘘であり、素晴らしい方だと聞かされていたので、何とも思わなかった。
最初の印象は美しい、ただそれだけだった。見た瞬間、目を奪われた。長い銀の髪は光を受けて輝き、水色の瞳は吸い込まれてしまいそうなほど。これほど美しい方がいるものなのかと感嘆してしまった。
仕え始めて最初は、うまくいかなかった。主は自分に何も頼まない。紅茶は陛下が訪れる時以外口にしない。飾り立てる機会もあまりない。ただ、傍に控えているだけ。普通の侍女なら仕えがいのある方だとは思えないだろう。
見せる感情は、わずかな喜びと戸惑い。陛下はこれでも随分と素直に感情を出すようになったのだと言う。
でも、それがユティシア様なのだと思う。
人をひきつける見た目とは裏腹に大人しく控えめであるし、自分を飾らない。お心が綺麗でお優しく、侍女に無理なことを頼んだりなさらない。
いつも、傍にいるだけで満たされた気持ちになる。彼女と会話をするだけで、自分の心は洗われるような気がする。
ミーファはいつもいじめを受けていた。マウラ様を指示する者たちが、マウラ様に対する裏切りだと言ってミーファを非難する。
正直、前王妃に対する執着は異常だ。何があったのかは知らないが、マウラ様は素晴らしい方だったのだろう、とは思う。
しかし、ユティシア様はそれ以上に素晴らしい。
美しいお姿もそうだが、優れた教養を身につけていらっしゃるし、ミーファは見たことがないが剣や魔法も扱えるらしい。
……これほど優れた王妃様はどこを探してもいらっしゃらないだろう。
しかし、これほどまでに優れて完璧でいらっしゃるのに、王妃様を見ていると何かして差し上げたくなってしまうのだ。儚げな容姿がそうさせるのだろうか、何故か心配になってしまう。きっと、陛下も同じ気持ちでいらっしゃると思う。ユティシア様を見ていると、何故か構わずにはいられなくなるのだと思う。
ユティシア様は出会った者を皆惹き付けてしまう方だと思う。誰からも愛され、大切にされるべき存在。
皆、お披露目で驚けばいい。きっと、彼女の姿に魅了されない者など存在しないのだから。
侍女のマウラ様崇拝はすごいです。
そしてミーファのユティシアへの愛情も半端ないです。
ユティシアの味方についてくれる侍女はこの先現れるのでしょうか。
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