家族の絆
ユティシアは人の気配を感じて王の間から王妃の間へと続く扉を開いた。するとそこに立っていたのは泣きそうな顔をしたフィーナだった。
フィーナはユティシアが目の前にいることが分かるとすぐにユティシアに抱きついた。
「こんな夜中に抜け出してきたの?」
フィーナはユティシアのドレスに顔をうずめたまま裾をしっかりと握っていて離さない。
「おかあさまだけじゃなくてユティシアもどっかに行っちゃったのかと思った…」
フィーナは涙を流し始めた。
暗い部屋の中一人でいたのだろう。不安でたまらなかったはずだ。
頭を撫でるとようやく顔を上げ、こちらを見る。フィーナの手が緩むとユティシアはフィーナを抱き上げようとすると、ディリアスがひょいとフィーナを抱き上げる。
「俺の娘だ、ずっと触れたかったに決まっているだろう」
ディリアスはにやりと笑みを浮かべる。
「そうですね。…良かったです」
フィーナは初めて父親に抱き上げられ、きゃっきゃと騒いでいる。ディリアスはフィーナを抱き上げたまま窓辺へと移動した。ユティシアも後について行く。
空には満点の星が輝いていた。
「きれーい」
「本当ですね」
感嘆の声を上げる二人にディリアスは笑う。フィーナはディリアスの腕から身を乗り出して星を眺める。
「フィーナは、お母様に会えなくて寂しいか…?」
「うん。よるはいつもさみしいの」
フィーナは寂しそうに答える。
「お母様はいるぞ」
「どこに?」
「ほら」
そう言ってディリアスが指差した先は、先ほどユティシアを魅了した綺麗な星空。
「お母様は空でお前を見守っている」
「ほんと?フィーナをおいっていったんじゃないの?」
「お母様はフィーナを愛しているからな。いなくなったりしない」
ディリアスはそう言ってフィーナを抱きしめた。少しためらったように見えたがすぐに強く抱きしめる。
「今まで、一人にさせてすまなかった…」
ユティシアは二人を見つめる。
…もう、大丈夫だと思った。この二人の関係は簡単に崩れることはないだろう。
―――家族の絆は永遠のものである。
これは、兄がよく口にしていた言葉。家族の絆は絶対に消えてしまうことはないのだと、言っていた。
昔のユティシアなら、信じられなかっただろう。でも、今ならその言葉が本当なのだとわかる。
「うらやましいですね」
「?」
「私は、もう…家族を失ったので、二度とできないことです」
ユティシアは俯く。
「何を言っているんだ?」
ディリアスは片手にフィーナを抱き、もう一方の手でユティシアを抱き寄せた。
「俺達はもうすでに家族だろう?」
「そうでしたね」
そうだ。自分も今は家族がいる。ディリアスと、フィーナ。二人ともかけがえのない存在になっていた。
―――この日、ばらばらだった三人はやっと家族として一つになったのだった。
なんかシリアスっぽい展開ばかりが続く中ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。
これからフィーナも含めて幸せになっていくと思います。
あと、お知らせ。
今、試験期間なので更新が遅くなってしまう可能性があります。本当に申し訳ありません。