交わる剣
ユティシアは剣を振り上げディリアスに切りかかった。ディリアスは何とか受け止め、はじき返そうとするが、出来ない。
「ユティシア、やめろ。お前を傷つけるかもしれない」
「貴方に倒されて動けない騎士団の方よりは相手になると思いますよ?」
ユティシアは笑みを浮かべる。
ユティシアは再びディリアスの方へ向かう。ディリアスはユティシアを傷つけるのを恐れて防ぐことしか出来ない。
しかし、ユティシアは何度も剣をディリアスに向かって振る。ユティシアの速くて正確な剣は、攻撃が出来ないディリアスには防ぎきるのは辛い。
ディリアスはじりじりと責められてゆく。
ユティシアは攻撃を仕掛けてこないディリアスに更なる攻撃を仕掛ける。
ディリアスが自分に攻撃できないことは分かっていた。そうでなければ“剣王”と呼ばれるディリアスに戦いを挑むような真似はしない。剣だけではディリアスに敵わないことは十分に分かっている。やはり自分は魔法師なのだ、と思う。
「ユティシア、悪い」
ディリアスはそう言うとユティシアの右足に足をかけて体制を崩した隙に、ユティシアの剣を弾き飛ばした。
しかし、ユティシアは魔力の糸を伸ばし、剣を手繰り寄せた。
「ここからですよ、陛下」
ユティシアは跳躍し、再びディリアスに切りかかった。
二人は何度も何度も刃を交わす。
こうして刃を交わす時、相手の心が読めるのだと師匠が言っていた。剣を通してその人の喜び、憎しみ、悲しみなどいろいろな感情が伝わってくるのだと。ユティシアはその機会を狙っていた。
ユティシアはディリアスの剣を、心を受け止める。
―――彼の心は、悲しみと、自責の念で染まっていた。
ディリアスはユティシアと剣を打ち合っているうちに不思議な感覚に陥っていた。ユティシアに、何かを見透かされているような気がしていた。ユティシアの瞳は何かを探るような鋭い視線でディリアスを見つめてくる。
「陛下、フィーナの本当の父親は…護衛官のジェードですか」
ユティシアはディリアスの傍に寄り、囁く。それは、ディリアスがもっとも触れたくなかったこと。
ユティシアの言葉に油断してしまった、その隙に―――
きんっと金属のぶつかる音が響き、ディリアスの手から剣が離れる。ディリアスは呆然としていた。自分がこんなにも簡単にやられるなんて、信じられなかった。
「陛下、お心を静めてください。いつもの冷静さを失っています」
「………」
ユティシアの言葉に周りを見回すと、そこには傷ついて気を失った騎士がいた。
……自分が、やったのか。それほどまでに、冷静さを失うほどに、心が乱れていたのか。
「すまない、ユティシア」
ディリアスはそう言うとそのまま訓練所から姿を消した。
その後、ユティシアは騎士の人たちを丁寧に治癒魔法を使って治療して回った。
騎士たちの間でユティシアの評判は一気に上がることとなった。
最近、話の内容におかしい点が多いというご指摘を頂きました。本当に申し訳ございません。
自分の小説に矛盾点が多いのは十分に分かっているつもりです。
読者の皆様の目から見れば分かりにくい点などたくさんあるかと思います。
疑問、小説の中で分かりにくい点などありましたら気軽に感想の欄に書き込んでくださいませ。
読んでくださる方が増えてきているので、期待に応えられるだけの小説を書けるよういっそう精進したいと思います。