王家の瞳
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「なぜ、分かったのです?」
「これだ」
ディスタールの、王族特有の金の瞳がきらりと光る。
聞いたことがある。ディスタールの王族は特殊な能力をその瞳に宿すのだと。その瞳は、不可視であるはずの魔力や魔法の術式を視ることができるのだ。個人でその力には差があるが、力が強ければ魔法師の術を先読みすることも可能である。
――――魔眼。
「私の魔法もまだまだ未熟ってことですね」
「いや、その年でとても優秀だと思うぞ。魔力を隠されていたせいで発見が遅れたんだ。王都に入るまでまったく気付けない…などというのは初めてだ」
「それは、転移門を使ったからでしょう」
転移門は、騎士団の各部を繋ぐ、魔法の移動装置の事だ。これによって大陸中のすべての騎士団へ行くことができる。ユティシアはこれを頻繁に使用していた。大陸のどこにいるかも分からないのに、見つけられるはずがない。転移門を使ってこの国に戻って来たのは、ごく最近だ。国内にいればおそらく感知されてしまうのだろう…と思うと本当に恐ろしい。
「転移門…といったか?捕らえた際、“光の盾”にいたと報告があったが、所属していたなんてことはないよな」
「………」
「職業は魔法師、といったところか」
「………」
「戦闘に参加していたのか?」
「………」
度重なる質問にユティシアは無言のままである。
「傷跡など、残してないよな」
「………は?」
ディリアスはそっと薄紅の頬に手を触れた。彼女の肌はきめが細かく、白い。これほどきれいな肌を持つ者は貴族の女性の中にもいないだろう。
ユティシアは彼の言動と行動に困惑し、訝しむように視線を上げて、見つめてくる。
「その美しい肌に傷がつくのは惜しい。もし、何かあったら許さないからな」
そう言ってディリアスは銀の髪を一房すくい上げ、弄ぶ。そして、美しく煌めくそれに………そっと口づけを落とした。
「そういうことは、私なんかよりも喜んでくれる女性にしたらどうです?さっさと新しい妃でも娶って、私の事は放っておいてくれると助かります」
ユティシアは突然の事に一瞬ひるんだが、すぐにその顔は不機嫌な表情に変わる。
「面倒だ。これ以上妃を迎えるつもりはない」
ディリアスは意地の悪い笑みを浮かべながらユティシアの頭を撫でた。