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新しい侍女

フィーナは頻繁にユティシアの元を訪れるようになっていた。そんなフィーナをユティシアは温かく迎えた。フィーナの寂しさを少しでも埋めてやりたいと思ったから。


二人でいる間は侍女に退出してもらうようにした。空気が重くなって仕方がないし、先日のフィーナのこともある。


フィーナは二匹の使い魔を気に入ったようで、柔らかな毛の中に顔をうずめている。

「ねえ、この子たちはわるいことしないの?」

「ええ、しません。でも普通の魔物には近付いてはいけません。人を食べますから」

「じゃあ、なにを食べるの?」

「魔力を与えています」

「ふぅん…」


「ねえ、フィーナはお父様のこと、好き?」

「すきだよ。でも、おとうさまはお忙しくてあえないの」

「会ったことないの?」

「一回しかないの」

それは、おかしなことだ。ディリアスにとって実の娘であるのに…不思議に思ったが、フィーナとの楽しい時間を満喫しているとそのことなどすっかり忘れていた。



仲良くお茶をしている時にやって来たのはディリアスだった。

「ユティシア……すまない、邪魔したな」

「いえ…陛下も一緒にどうです?」

ディリアスがフィーナの姿を見た瞬間、一瞬表情が、翳った。ユティシアはそれを見逃さなかった。


「俺は遠慮しとく。忙しいからな」

ディリアスが顔を背ける。


「えと…ご用件は?」

「ユティ専属の侍女を用意した」


…残念ながらフィーナとはお茶会を終え、部屋を出てもらった。


現れたのは、ユティシアと同じ年頃の少女だった。丸い瞳がくるくると動いて小動物のようだ。

「はじめまして、王妃様。ミーファと申します」

ミーファは宰相ローウェの妹で、ユティシアと年も近いので調度良いと思いローウェがすすんでディリアスに紹介したらしい。


「兄からお話は伺っておりました。…私も美しいお姿をぜひ拝見したいです!!」

…姿を変えていたのが知られている。最近、本当に変身の魔法をやめようかと思案している。


「素敵です!!ドレスの選びがいがあります。お化粧も楽しみです」

魔法を解いたユティシアをみてミーファははしゃいでいる。

「私、そういうの苦手なのでとても助かります」

見た目など今まで気にしていなかったし、周りに年頃の女の子もいなかったせいか化粧の仕方など学ぶこともなかったので困っていたところだった。


「うまくやれそうな様子だな。では、俺は仕事に戻る」

ディリアスはそう言って執務室に戻っていった。



ミーファはディリアスがいなくなった後、目をきらきらさせながらユティシアを見つめてきた。

「早速お仕事です!今日は陛下と一緒に夕食を召し上がられるのですよね?」

「…ええ」

「では、ばっちりおめかししましょう!!」

意気込んでいるミーファにユティシアは少し押され気味である。


―――そして一時間後。

ユティシアはミーファの手によってさらに綺麗になっていた。いつも下ろしたままだった髪を結い上げ、地味だったドレスはセンスの良い物へ変えられていた。

ユティシアの髪はとても長く結い上げるのが難しいはずだが、ミーファは器用にまとめ上げた。


「美しいです!これで陛下のお心も掴めるはずです!では、いってらっしゃいませ」

にっこりと笑うミーファに見送られながら、ユティシアは王の部屋へとつながるドアに手をかけた。



ユティシアにはディリアスとの夕食のことなど頭に無かった。

……ディリアスのあの表情が忘れられない。フィーナを見た時のあの表情…あれは娘に対して向けるものではない。純粋な愛情を表している様子じゃなかった。その瞳は、もっとたくさんの感情が入り混じった複雑な色をしていた。フィーナが言った事と関係しているのだろうか…



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