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宰相の願い

ユティシアはいつもの三人と共に執務室にいた。


休憩をとるため、先ほどまで書類と向き合っていたディリアスはペンを置き、席を立った。隣で執務を行っていたローウェも席を立ち、ディリアスと共にソファに移動する。


「あの…今日は私が紅茶を入れさせて頂きます」

そう言ってユティシアは慣れた手つきで紅茶を入れ始めた。その手際のよさにディリアスが驚く。

「手慣れているな」

「師匠に、うまく紅茶を入れられない時はよく怒られていましたから」

本当に、師匠の認める紅茶の味を引き出すのには苦労した。紅茶の味を研究して何度も何度も入れなおし、やっとこの程度まで出来るようになったのだ。

師匠はわがままで、いつもユティシアに無理な注文ばかりしてくる人だった。そのおかげで、ユティシアは何でも自分で出来るようになったのだが。


「うまいな。とても」

「本当ですか?気に入って頂けて光栄です」

実はこの茶葉は異国で購入した物で、ユティシアの気に入っている物の一つである。騎士団の仕事で出かけた際に、色々な国の紅茶や料理を知ることが出来た。気に入った物はいつも買って帰るようにしていた。


「あ、出かけたときに買ったお菓子もお出ししますね」

「さすがユティシアちゃん。俺が頼んだお土産、ちゃんと買って来てくれたんだ」

「おい、どういうことだ」

ゼイルの言葉にディリアスが反応する。

…どうやら城下に行く前にユティシアが執務室を飛び出した時、ゼイルに出会ったらしい。その時に「出かけるならお土産よろしく~」とゼイルがユティシアに頼んでいたらしい。…まったく都合の良い奴だ。


「ユティ、隣においで」

立ったままだったユティシアにディリアスは自分の隣の席を勧める。ユティシアは大人しく隣に座った。

…それを狙ってローウェとゼイルは向かい側のソファに座ったのだが、ユティシアは二人の作戦には気付いていないだろう。


ローウェはユティシアの変化に気付いていた。

ユティシアは前よりも自然にディリアスに寄り添うようになった。まだ、たまによそよそしい時もあるが、良い傾向である。以前は完全にディリアスの隣にいることをためらっていた。二人の間に、近付くきっかけが出来たのだろう。


ディリアスはついにユティシアを王妃にすることを発表した。彼女は、ディリアスの傍にいることを受け入れているのだろうか。心から、彼の隣にあることを望んでいるのだろうか。どうか、前王妃のような悲劇が起こることのないよう…ローウェとしてはそれだけを願うばかりであった。


「いいかんじだね~、あの二人。二人の子供も早く見れるかな?」

ゼイルがローウェに呟いた。


少なくともディリアスはユティシアを気に入っている。彼女は初めてディリアスが本気で望んだ存在だった。彼女のおかげでディリアスは今まで事務的に行っていた国王の仕事を、積極的にこなすようになってきた。彼女の存在はディリアスに良い影響を与えている。


―――このまま二人の関係がうまくいくと良い。幼馴染として、ディリアスの幸福を願わずにはいられないのだ。



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