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ユティシアが姿を現すと、皆目が点になっていた。

国王命令で捕らえられたとすれば、よほどの大罪を犯したことになる。生きて帰ってくるなんて誰も思わないだろう。


「あいつ、大罪を犯した奴だろ?」

「自分がどれだけのことをしたか分かっているのか」

「実力があるからって調子に乗りやがって」


多くの人々に囲まれて、罵声を浴び続けるユティシアの前に一人の男が現れた。

「おい、騎士団にいながら犯罪に手を染めた場合、どうなるのか分かってるよなぁ?」

男は剣を肩に担ぎ、嫌らしい笑みを浮かべながらユティシアに顔を近づける。


彼は何かとユティシアを敵視していた男だった。若くて経験も浅いユティシアが自分より活躍することが許せないらしい。

男はユティシアが魔物の討伐に成功するたびに嫌がらせをしてきた。ユティシアはそれを難なくかわしてきたが、それがさらに怒りを増長させていった。

たいした努力もせずに人の実力を妬むような男だった。


………この男に馬鹿にされるのは我慢ならなかった。


ユティシアは男に何か言おうとして口を開きかけたが、ぐっとこらえた。

悔しいが今回だけはユティシアは男に何か言える立場にいない。ユティシアは、それだけ大変なことをした。


騎士団では、罪を犯した場合は強制的に解雇される。それだけではなく、重い刑罰も科せられる。

騎士団は大陸中に存在し、並外れた騎士たちの実力によって圧倒的な存在感を放っている。おそらく、騎士団の力をもってすれば、一国を潰すことなど容易にできる。それを気付かせるようなことは、してはいけない。

もし、騎士団がその能力を、人を傷つけることや、社会を混乱させるようなことに使ったりしたら、どうだろう。騎士団がいつか自分達を脅かす存在になるのではないか、と思わせることになる。それだけは、避けなければならないのだ。


ユティシアが無罪だと言っても、騎士団の信頼を壊しかけたのは事実である。その信頼を壊すことが、どれほどのことかも理解している。


………故に、ユティシアは何も言えないのである。


胸の内で悔しさが込み上げてきて、ユティシアは手を握り締め、歯噛みする。


「こんなことされても文句言えないよなあ!」

男は、いきなりユティシアを殴った。ユティシアは抵抗せず、それを受ける。頬に痛みが走り、床に叩きつけられる。


男を止めるものは誰もいない。男の実力に敵う者がいないからである。男は最近、上級騎士として認められたばかりだった。


男は動かないユティシアを見て、その細い手首に鎖を巻きつけた。さらに、魔法攻撃を封じる魔具をつける。


「来い」

ユティシアは鎖を引っ張られ、男に連れて行かれた。




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