再会
シアは一晩牢に入れられ、縄をかけられたまま王の前に放り出された。王座に座っているディスタールの国王ディリアスはシアを面白そうに見やる。
騎士団長に押さえつけられたまま、負けじと王を見上げる。王は茶色の髪をかき上げ、金の双眸でこちらを見つめた。彼の容姿は半端無く良かった。その顔で見つめられれば、落ちない女性などいないだろう。
「騎士団長、縄を解いてやれ」
昨日シアを捕まえたのはディスタール国の騎士団長だったらしい。どうりで騎士団にいた者たちが警戒するわけだ。
「し、しかし…こいつは」
「この者は罪人ではない」
騎士団長は納得できない様子で王の言葉にしぶしぶ従う。
「ここに呼ばれた理由が分かるか」
「いえ、全く。何故でしょうね、本当に」
そんなシアの無礼な態度を、王は気にも留めない。
「皆のもの、下がれ。私はこの者と二人で話がしたい」
国王は控えていた者を皆下がらせた。
――謁見の間にはディリアスとシアの二人だけになった。
「いつまでしらを切るつもりだ、元ティシャール国王女ユティシア=ティシャ―ル」
やはり、バレていたのか。
「なぜ、今まで戻ってこなかった?仮にも私の側妃だったはずだが」
…まさか、すっかり忘れていました、なんて言えない。名を変えて、完全に騎士団生活を謳歌していた。
「私の国は、もう王族はいません。王のいない新しい国を作り出そうとしています。政略結婚というものは、お互いの利益のためにするものです。国を失った私には何の利用価値もないはずですが」
「お前は…何歳になった?」
「…16、です」
「嫁いで来たのはたしか、12の時だったな。結婚式の直後に、侵略されそうになった国を救う為に城を飛び出していったが」
ユティシアはばつが悪そうに視線をそらす。
「もう一人の妃、マウラが、1年程前に亡くなってしまった」
その瞬間、ユティシアの瞳が揺れる。マウラとは彼の正妻だった女性だ。ユティシアと同様、異国からとついで来た王女だった。結婚式の日、自分と同じように他国から来たユティシアを気遣ってくれた。
「それは…残念なことです。美しく聡明な方でしたのに」
「そこで、次の王妃がいなくて困っていたんだが…運良く城を留守にしていた姫君が帰って来てくれたようだ。今日からよろしく頼むぞ、王妃様?」
王の言葉に、ユティシアはただ唖然とするしかなかった。