第72話 : 私、精霊?人間?謎属性で混乱させていくスタイル☆
ちょっと本気で遊び始めたら……え、なにこの監視の数!?
廊下すれ違う人、全員裏で繋がってる説あるよね!?☆
でも〜、私って“何者か分からない”のがチャームポイントでしょ?
だったら、もっともっと混乱させていこうと思いまーす♪
今日もルネアは、学校の廊下をスキップ混じりに歩いていた。
スカートの裾をひらりと揺らし、片手にはおやつのドライフルーツ。
ぱくっ、と食べながら、ちらりと後ろを振り返る。
(ふふん、今日もついてきてるね☆)
背後からの気配は三つ。うち一人は魔力量のコントロールが下手すぎて、隠れてる意味がない。
「こっそり見てるつもりなんだろうけど、もうちょっと練習してから来てね〜♪」と、思わず口に出したくなるレベルだ。
──王国情報局 第三監視班。
「対象、現在本校敷地内を遊歩中。
……いや、ただ歩いているだけですが、全方位にマナを飛ばしている模様です」
「なにそれ、威嚇? それとも……観測? いや、遊んでるだけ?」
上司と部下の間に沈黙が走る。
「……まさか、わざと“監視されてるのを見せつけて”……こちらを試してるのか?」
「いや、普通にふざけてるだけかと……」
そんな真剣なやり取りの最中、肝心のルネアはというと——
「今日の私のテーマは、“謎属性☆”です!」
彼女は突如、校舎の中庭で“謎ポーズ”を決めながら宣言した。
耳には精霊用の飾り羽根、服装は人間の制服。腰には魔導具のような物体、そして手には——
「……猫耳カチューシャ!? なにその装備……!」
見ていた生徒が一斉にざわつく。
「精霊なの?人間なの?どっちなの……?」
「っていうか、今日のその服……魔王軍の制服じゃない?」
あえてツッコミ待ちのアイテムを装着し、話題をかき乱すルネア。
しかも、誰にも説明はしない。
彼女はただ、にっこりと笑ってこう言うだけ。
「ナイショ☆」
──一方、情報局の研究棟では。
「……彼女の装備と行動パターン、全部記録取ってるけど、整合性がゼロです」
「そりゃそうだ。本人が“混乱させに来てる”からな」
「このままでは、こちらが混乱で壊れる方が先ですね……」
疲れきった分析官たちが頭を抱える中、ひとつだけ確かなことがあった。
──ルネアの“観測データ”は、日に日に増えていた。
しかも、それぞれが異なる属性、異なるマナ波形。
まるで彼女自身が、“何かを試しているかのよう”だった。
「彼女自身が観測者であり、演者であり、そして……特異点そのものかもしれません」
ある高位官僚が静かに言ったその言葉は、まるで預言のようだった。
──そんな重々しい空気の外で、ルネアは今日も元気。
「うーん、お昼は焼きたてのパンにしようかな〜。あ、でもミートパイも……」
屋上で風に吹かれながら、のんびりと空を眺めている。
(ま、しばらくはこんな感じで……好きにさせてもらおっかな☆)
──その視線の先。遠く、王都の防壁に何かが接近していたことに、彼女だけが気づいていた。
でも、誰にも言わない。
「うん、だいじょーぶだよ。まだ“遊べる範囲”だからね♪」
ふふふ〜、“何者か分からない”って、めっちゃ便利だよね!
言いたいことだけ言って、全部スルーして、
「とにかくスゴい」ってことだけ伝わるとか、最高☆
次回、「正体バレかけたけど、あえてごまかす件☆」お楽しみにっ!




