第68話:ねぇ、私って本当に“普通の生徒”だよね?え、なんで皆こっち見てるの!?
ねぇねぇ、なんか最近、教室とか廊下とか……やたら視線感じるんだけど!?
私、別に変なことしてないよ?(たぶん)
もしかして……また“噂”とか立ってるとか〜? やだも〜う☆
ルネアは、今日も元気に中庭のベンチを占領していた。
背筋を思いっきり伸ばしながら、顔を空へ向ける。春の陽気が頬をくすぐり、そよ風がスカートの裾を優しく撫でていく。
「ん〜、このまま寝ちゃいたい……世界平和って、こういうことだよね〜♪」
そう言ってスナックを口に運ぶ姿は、どこからどう見ても“ただののんきな女生徒”。
――少なくとも、彼女の正体を知らない者にとっては。
「……模擬戦の子だよね?」 「うん、ルネアって名前。伝説級とか言われてるらしいよ」 「ていうか、避けただけで勝ったとか……意味わかんない」
ベンチから少し離れた場所で、学生たちがひそひそと囁く。
誰もが興味を持ちつつも、彼女に近づくことはせず、ただ遠巻きに視線を送っていた。
その視線の数が、日に日に増えていることに――ルネア自身も、うすうす気づいていた。
(……またか。最近ほんと、多いな〜、視線)
今日だけでも五、六人。違うクラス、違う制服、違う年次。だが、皆一様にこちらを“観察”していた。
そして、その中でも特に目立つ一人。
建物の影に立ち、無表情でルネアを見つめる、白衣の女生徒。
「やあやあ、また会ったね〜。君、昨日もそこにいたよね?」
軽く手を振るルネアに対し、白衣の少女は何も言わず立ち去るだけ。
(うーん、バレバレだよ〜、そんなの)
だが、ルネアはそれ以上追及しない。ただ笑ってスナックをもう一枚、口に放り込む。
本音を言えば、こうして笑っていられるのも限界が近い。
調査していた“禁制文書”が封鎖され、代替資料も軒並み閲覧不可。
明らかに、何者かが彼女の情報収集を阻止しようと動いている。
(ま、それでも諦めないけどね。こっちにも手段はあるし)
立ち上がると、ルネアは中庭を抜け、裏手の書庫へ向かう。
人目を避けたその道は、生徒がほとんど通らない裏ルート。
だが、彼女はあえてその道を選んでいた。
目的は――十年前の“とある村”で発見された魔導兵器の設計図、そして、それが王国とどう関係していたか。
(あの時、あの村が……また同じことが起きないように)
ルネアの微笑みの裏には、そんな静かな決意があった。
そしてその背後では、またひとつ、新たな視線が彼女を見つめていた。
王国情報局の紋章を刻んだ、別の制服をまとった少年が、小さくメモを取りながら呟く。
「……対象、今日も“異常なし”か。いや、それが一番“異常”だろう」
いや〜、みんな見すぎっ!
私、そんなに目立ってた!? てへへ☆(でもちょっと、バレてるかも〜?)
でもまぁ、まだ“遊び”の範囲だからねっ。
次回はもっとドキドキするかも?「視線の主に、ちょっぴりご挨拶♪」でお楽しみに〜!☆




