第66話:模擬戦?いえ、これは公開処刑です☆
ねえ、模擬戦ってさ、
普通は“実力を試す場”じゃないの?
なのに、なんで私は“伝説の精霊 VS 最強生徒”みたいになってるの!?
模擬戦当日、学院の訓練場には朝からざわついた空気が流れていた。
「今日だよね……ルネアさんとガレス先輩の……」
「まさか本当にやるなんて……死者、出ないよね?」
(ちょっと!? なんで私が“死者出す側”みたいになってるの!?)
私は訓練服に着替えながら、溜め息をついた。
ティアラは横で心配そうに言う。
「本当に大丈夫? 昨日から、ルネア……なんか空気が違うよ?」
「ふふん、大丈夫大丈夫。ちょっと“やる気”がね、うっかり湧いちゃっただけ☆」
正直に言うと、昨日の夜から、胸の奥が少しざわついていた。
監視者、噂、過剰な注目――
「ただ遊びたい」だけだったのに、気がつけば戦いの中心にいる気がしてた。
でも、もう逃げないって決めたから。
「私、あんまり強くないからって言い続けるのも疲れちゃって……今日は、ちょっとだけ本気出す☆」
そう笑った瞬間、遠くからガレスの姿が見えた。
灰色の髪、鋭い目、全身から放たれる緊張感。
私を見るその目は、まるで“魔物”を見るようだった。
「ルネア……この学院のため、君の力を確かめさせてもらう」
「えーっと、優しくお願いしまーす☆ 骨は折らない程度にねっ」
周囲がどよめく。
観客席には教師たち、そして監視任務の制服を着た生徒たちの姿もある。
(ほんとにガチの模擬戦だ……これ、まじで公開処刑コースかも?)
「それでは、模擬戦開始!」
審判の声とともに、空気が一変した。
ガレスが地面を蹴って突っ込んでくる。
魔力をまとった拳――その瞬間、私はふわっと後ろに下がり、彼の攻撃を回避。
「ほら、あぶな〜い☆」
「……っ!?」
次の瞬間、私はそのまま空中に跳躍。
“瞬間移動”でガレスの背後に移動し、指で肩をツンと突いた。
「はい、後ろ取った〜☆ って、まだ攻撃してないよ? 一応!」
観客「……今、なにが起きた?」
教師「目視できなかった……!」
ガレスが驚愕の表情を浮かべ、汗を一滴垂らす。
「まさか……空間跳躍!? しかもノー詠唱……!」
「うーん、特に詠唱とかしたことないんだよね〜。喉乾くし☆」
戦場は静まり返った。
私の背後に立つガレスが、拳を降ろして、そっと一言つぶやいた。
「……これが、“伝説の精霊”か」
模擬戦、無事(?)に終了〜。
私、別に勝つ気なかったけど、勝っちゃったらしい??
とりあえず……
この学院での噂、また一段とレベルアップした気がするよっ☆




