第62話:転校初日から目立ちすぎ!?……これ、バレてるよね?
最近、視線がやたらと増えた気がするんだけど?
……いや、気のせいならそれでいいんだけどさ。
でもナリが「生徒の間で噂になってますよ」って言うんだよね。
なにそれ、恥ずかしいじゃん。
「ルネアさん、ちょっといいですか?」
「はいはい、なんでしょう生徒会の優等生さん〜☆」
昼休み、学院の中庭。
私はベンチで日向ぼっこしていたところを、また呼び出された。
現れたのは、ライネル。王国の貴族であり、生徒会の監察官でもあるらしい。髪をきっちり結い、制服の襟も一切の乱れなし。……うーん、近寄りがたい系。
「最近、君の“目”について不思議な噂が多くてね。あの目を見た者が、一時的に動けなくなったとか」
「えっ……そんな都市伝説があるんですか〜? わ、私はただ可愛く見つめただけなんですよ?」
いつもの調子でごまかそうとしたけど、ライネルの目は本気そのものだった。
(やば……今の“ただの遊び人”キャラ、通じなかったかも?)
ナリが私の袖を引っ張って、小さな声で囁いた。
「ルネア様、最近の実技授業での“睨み”が噂になってます。“一瞬で沈黙させた”とか、“目が光っていた”とか……」
「わー、それちょっと盛られてない!? ……でも、確かにちょっとやりすぎたかも?」
瞬間移動からの目線コンボ。私的には省エネ戦術なんだけど、どうやら学院の生徒たちには“精霊の必殺技”に見えているらしい。
笑顔で対応したつもりでも、ライネルの真顔は変わらなかった。
「目の力が制御できていないなら、訓練許可を申請しておくように。場合によっては魔力管理部からも報告を求められるよ」
「え、ちょっ……それはマジで面倒くさいやつじゃん……!」
その時だった。
中庭の端から、誰かの叫び声が響いた。
「きゃっ!? なに、この風っ!?」
風が吹いた……だけじゃなかった。
ピリッとした魔力の波、空気の圧が一瞬だけ乱れた。感じたことのある“視線”が背後から刺さる。
私はすぐに立ち上がり、周囲を見回す。ナリもすぐに魔力スキャンを始めた。
「……この反応、近いです。魔力が、森の方から──」
私も直感で気づいた。
(……え? あの影、また……!?)
木々の間から見えたのは、鋼鉄のような外装と不気味なフォルムを持つ“何か”。
その動きは遅く、だが確実にこちらへ向かっていた。
「嘘でしょ……昨日みたいに、また来たの? もう王都の中だよ!?」
その挙動は明らかに“何か”を探しているようだった。
いや、“誰か”だ。
そしてその視線の先にあったのは──
「……わたし、か」
また私!?
いや、これってもう完全に偶然じゃないよねっ!?
ナリのメモ帳には、しっかりと書かれていた。
『第2の侵入個体、出現。識別対象:精霊ルネア。』
ちょ、ほんとに狙われてるんだけど!?
平和な学園ライフ、どこ行ったの〜っ!?




