第58話 : え?私、監視対象になっちゃったの!?☆
ねえねえ、先生に呼び出されたときって、
どう返事するのが正解かな?「はい!」って元気よく? それとも……逃げる?☆
ま、私くらいになると、呼び出しもイベントの一部ってことで♪
でも今回は……ちょ〜っと、雰囲気が違うかも??
「ルネア=シュテラ。および、フレイア=ロゼット。放課後、第三演習室まで来てください」
放課後のチャイムと同時に、そんなアナウンスが鳴り響いた。
うーん、これは……あれかな? “ちょっとお話があります”ってやつ。
「先生たちに呼ばれるなんて、ちょっとした有名人だね☆」
「ちょっと!? これは絶対怒られるやつだよ!!」
フレイアが肩をガクブル震わせてる。いや、でもね?
あの訓練、こっちはまったく本気じゃなかったんだけどなあ……?
私たちが演習室に入ると、そこには数人の教官と、
ちょっと見たことない制服の人までいた。
(あれ……? 王都軍の人……?)
「ルネア=シュテラさんですね」
「はいっ、精霊でーす☆」
「……」
教官たちが顔を見合わせる。
うん、なんかめっちゃ警戒されてる感じ。もしかして私、やらかした……?
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「先日の演習で、あなたの行動は予測を超えていました」
「え、でもあれ、ちゃんとルール内だったでしょ?」
「ユニットの破壊、それ自体は問題ではありません」
「じゃあ、なにが問題なのさ?」
「――“目を合わせた瞬間に機体が停止”したこと。です」
「……あ、そこ?」
ちょっと困ったように笑ってみせると、フレイアが私の袖を引っ張った。
「ルネア、これ、マジでまずいやつだよ……!」
「でも、私、悪いことしてないよ? 魔力も使ってないし☆」
「逆にそれが問題なんですよ!」
教官の一人が声を荒げた。
「魔力反応なしで、対象を機能停止させるなんて、常識ではありえません!」
(ふむ……やっぱり、“目の圧”って、この世界じゃかなり異常なんだなぁ)
「……ご協力、感謝します。こちらでも記録をまとめ、今後の演習は見直します」
「あ、でも、私ほんとにただ遊びたいだけなんで!
こっちに迷惑かけないようにしますから、ハイッ☆」
言葉は軽く。態度は明るく。
でも、その場にいた全員の目が、まるで猛獣でも見てるみたいにこわばってた。
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演習室を出た後、フレイアがため息をついた。
「なんか、ルネアって……やっぱりただの精霊じゃないよね」
「えー、私はただの、ちょっと強めの精霊さんだよ?」
「その“ちょっと”の基準がおかしいんだってば!」
私は笑ってごまかしながら、心の奥でほんの少しだけ、チクッとしたものを感じた。
(……見られてる。今まで以上に)
それは教官たちだけじゃない。
校舎の廊下、教室の窓、通りすがりの学生たち――
みんなの目が、どこか警戒するようになってきた。
「さて……次は何が待ってるのかな?」
その頃、学園の最上階にある見張り塔で。
王都直属の諜報員が、記録された映像を見ながら呟いた。
「……特異精霊、カテゴリー外。これ以上は、上に報告だな」
呼び出されたけど、まあセーフ!たぶん☆
でも、これからはちょっとだけ……本当にちょっとだけ、気をつけないとね。
それにしても……あの目線。
まるで、私が“何かになる”のを待ってるみたいで……ちょっと不気味かも?




