第56話:戦闘訓練なのにガチすぎ!?ユニットが本気出してきた☆
「やるって言ってないのに、組むことになってたんだけどー!?☆」
そんな私の叫びは、あっさり職員室に無視されました……とさ。
グラウンドの朝は、いつもよりもざわついていた。
魔法科と武技科が合同で行う“実践演習”が、ついに始まるからだ。
白い朝日を受けて光る地面、立ち並ぶ学生たちの中で、私はひときわ浮いていた。
「ルネア〜! 今日はよろしくなっ!」
隣にいるのは、例の彼女──フレイア。
赤いポニーテールが風に揺れ、まっすぐな瞳がこちらを捉えている。
「勝手にペア組んだの、まだ根に持ってんの?」
「ううん、根には持ってないよ。でも、せめて“お願いしてもいい?”って一言ほしかったかなーって☆」
私がわざとらしく頬を膨らませると、フレイアは肩をすくめて笑った。
「ま、結果オーライってことでしょ?」
「……ちょっと、強引だよぉ……」
そのやりとりに、周囲の生徒たちがクスクスと笑っていた。
なんか、完全に“漫才コンビ”扱いされてる気がする……。
「でも、アンタなら大丈夫でしょ? 絶対強いし」
「えー、それって外見で判断してない? 私、ただの精霊モドキだからね?」
「モドキって言うやつが一番ヤバいんだよ、知ってた?」
「……それ、私に言ってる?」
そんな軽口を叩いているうちに、担当教官が前に出てきた。
「本日の実習は、模擬召喚された“魔法自立ユニット”の制圧訓練だ。
近接と遠距離の連携を重視し、現実的な戦況を想定して行う」
(模擬ユニットかぁ……でもなんか、胸騒ぎするんだよね)
私はフレイアと目を合わせ、こっそり息を整える。
「準備はいいか?」
「はいはい、行きますよ〜☆ 足引っ張らない程度に頑張ります!」
その瞬間。
演習エリアに現れたのは、黒い機械ユニット。
ガギッと嫌な音を立てて、二足歩行で立ち上がる。
「え……あれ、想像よりもガチっぽくない?」
「うん、模擬戦にしては重装備すぎ」
バシュンッ!!
唐突に飛び出す魔力弾。
視認するより先に反応して、私は跳躍。フレイアは盾魔法で受け止める。
「速っ!? 反応速度、人間超えてない!?」
「ルネア、あれ……普通の訓練ユニットじゃないわ」
「誰か、魔改造したってこと!?」
教官たちがざわめき始める中、私はすでに違和感に気づいていた。
(この魔力のパターン……昨日見た、森のアレと、似てる……)
「放っておいたら、怪我人出ちゃうかも」
「じゃあ、やるしかないわね」
私はフレイアと頷き合い、前へ出る。
「ちょっとだけ、派手にいくよ?」
「フフッ、そうこなくっちゃ!」
フレイアは槍を構え、私は目を細めた。
次の瞬間、地面が鳴るほどの魔力がユニットに集中した。
(軽く遊ぶって言ったけど……これは、ちょっとだけ“本気”でもいいよね?)
模擬戦のはずなのに、なんか現実味ありすぎ!?
でもフレイアとなら、ちょっとだけ……遊べる気がする☆
さて、見ててよ。
この“精霊”が、ちょいとカッコよく決めてあげるんだから!




