第48話:バレたら即終了☆だけど友達できそう!?
──また魔導兵器が来るかもしれない。
それなら、こっちも準備しなきゃ。
そう思った私は、情報が集まる場所に潜り込むことを決めた。
王国の研究所や図書館は外部者立入禁止。
でも「学生」なら、入れる。誰にも怪しまれずに、堂々と。
……だから今、私はここにいる。
この“人間の学園”で、バレたら即終了の転校生やってます☆
「……それでルネアさん、今日の座学の課題は提出されましたか?」
「え〜っと……えへ、ちゃんと出したよ? 時間ギリギリで☆」
「まさか本当に出してるとは……!」
真面目な生徒代表タイプ、ティアラが肩をすくめる。
「やっぱりルネアさん、ちょっと変わってるけど……面白いかも」
(……え? いま、私ちょっと褒められた!?)
私はちょっとドキドキしながらも、すかさずいつもの調子で笑顔を返した。
「でしょ? 私、変だけど無害だから、よろしくね〜☆」
* * *
昼休みの中庭。
私は木陰のベンチに座って、そっとおやつを取り出す。
「今日のスイーツは〜……チョコスフレ♪」
そこに、さっきのティアラがまた現れた。
彼女はちょっと戸惑いながら、私の隣に座る。
「……隣、いい?」
「もちろん☆ 一緒にチョコ食べよっか?」
* * *
「ルネアさんって、謎が多いよね。どこから来たの?」
「え〜っと、それはね……ひ・み・つ♪」
「またそれ……」
でもティアラは、怒るどころかクスッと笑ってくれた。
(えっ、なんか今の空気、普通に友達っぽくない!?)
──今日は友達が生まれた日……かも☆
* * *
「そういえばさ、ティアラは何でこの学園に来たの?」
「え? 私は……魔導医術を学びたくて。でも、正直まだ実感わかないんだよね」
「ふ〜ん、えらいじゃん。将来の夢とか、あるんだ?」
「あるよ。……でも、笑わないでよ?」
「笑わないよ〜、たぶん☆」
ティアラはちょっとだけ照れくさそうに微笑んだ。
「私は……傷ついた人を、ちゃんと治せる魔導師になりたいの」
「……うわ、それめっちゃカッコいいやつだ〜!」
私は素直にそう思ったし、そう言った。
ティアラは目を丸くして、でも嬉しそうにうなずいた。
「ルネアさんは? なんでこの学園に?」
「え? え〜っとね……私はただ、“ちょっと勉強しにきた”って感じ?」
「ふわっとしてる〜!」
「バレた? でもね、本当にそうなんだよ。色々、見ておきたかったの」
私の言葉に、ティアラは何かを察したように、ふっと優しく笑った。
「じゃあ、これからも一緒に見に行こう。学園のことも、世界のことも」
「うん☆ よろしくね、ティアラ!」
* * *
午後の授業が始まって、みんなが席に着く中、私は後ろの窓から空を見ていた。
雲の流れが少し速くて、どこか不穏な風が吹いている気がした。
でも、今日だけは“普通の学生”でいたかった。
「……さて、今日のプリント配るの、誰か手伝ってくれるか?」
先生の声に、手を上げようとした瞬間、ティアラが私を見てにっこりした。
「……手伝ってくれる?」
「もちろん〜☆ 今の私は、“良い子モード”中ですからっ!」
私たちはプリントの束を抱え、笑いながら教室の前へと歩いた。
今日の私は、ちょっぴりだけ“本当の学生”に近づいた気がした。
もしかして今日、私、ちょっとだけ“普通の学生”だったかも?
ふふっ……悪くないね、こういう日も☆
でも、また変な視線は感じてるけど……それはまた今度考えよっ♪




