第46話:学園生活って、静かにしてるだけじゃダメみたい☆
新生活にも慣れてきて、そろそろ「静かに遊ぶ」日々が続くかと思ったら――
なぜか、またトラブルのにおいがしてきた気がするんだけど?☆
「ルネアさん、今週の掃除当番、代わってもらえませんか……?」
「ええ〜、私って転校生だよ? しかもまだ自己紹介もちゃんと済んでない系なんだけど〜?」
「そこをなんとか……あ、でも、できれば廊下じゃなくて――地下倉庫の方で……」
「地下……?」
何その言い方、めちゃくちゃ怪しい。
とりあえず私はにっこり微笑んでOKサイン。
「いいよ〜☆ なんかお宝でも出てきたらラッキーだし!」
* * *
というわけで、地下倉庫にやってきた私。
「ふんふ〜ん♪ ……って、なんか、思ったより薄暗っ!」
カビ臭いし、埃っぽいし、まるで“探索してね”って言われてるみたいな雰囲気。
でも私は全然動じない。
なんたって、“目が合えば魔物も倒れる”私だから☆
棚を適当に片づけてたら、ガコン、と何かが動いた。
「……ん? この壁、ずれてる? っていうか……隠し扉ってやつ〜!?」
思わずテンション上がって、壁に手をかけたそのとき。
「――そこまでだ」
「へ?」
振り返ると、白衣姿の男が一人。
魔導研究部の……誰だっけ? 地味な先輩だった気がする。
「その部屋は立入禁止。君のような……“登録されていない個体”が触れていい場所ではない」
「えっ、なにそれ? 私、“未登録精霊”ってバレてる!? やばっ☆」
慌ててごまかそうとするも、男は静かに魔導端末を取り出した。
「……記録済み。魔力反応、視線干渉特性あり。やはり、君は“対象X”だな」
「ちょ、ちょっとまって!? それ、誤解ですって! 私ただの目立つ転校生だよっ!?」
でも次の瞬間、その人の表情がピキッと固まった。
……あれ? 私、また目見ちゃった?☆
「うわ、また気絶しそうになってる……ご、ごめんっ!」
* * *
私は慌てて視線を逸らし、彼の元に駆け寄って様子を見た。
「えっと……えーと、水! 水とか必要かな? それとも……魔導ドリンク?」
周囲を探しつつ、カチャカチャと棚の中をあさる。
「ん〜、こういうときって、なにが正解なんだろ? とりあえず冷やしタオル?」
そして、棚の奥から落ちてきた丸い瓶を見つける。
「……お、これ何? “非常用魔力補填液”? なんかそれっぽい!」
先輩の口元に近づけると、瓶がカチッと反応して、蒸気がふわっと立ち上がった。
「うわっ!? 自動起動!? これって古代技術じゃん〜!」
一瞬、先輩の眉がピクリと動いたあと、ゆっくりと目を開ける。
「……きみ、本当にただの学生か?」
「そっちこそ! 倒れかけてたのに、回復早すぎっ☆ ていうか、今の薬なに!? すごいね!」
先輩はぼんやりと私を見つめながら、溜め息をついた。
「……はぁ。君には、もう少し慎重さというものを学んでほしいな」
「それ、よく言われる〜! でも、冒険ってさ、勢いとノリが大事じゃん?☆」
私はぱちんとウインクを決めて、掃除道具を片手に倉庫の奥へ。
「さて! 隠し扉は今日のところは見なかったことにして〜、代わりにこっちの棚から宝探ししよっか!」
その背中を見つめながら、先輩は小さく呟いた。
「……やっぱり、ただ者じゃないな、あの子は」
静かにしてるつもりなのに、なんでこうなるかな〜?
でもまあ、目立つのって悪いことじゃないよね? たぶん☆
次回、ちょっとヤバそうな“監視者”が登場するかも……?




