第三十五話:森が震えた!?ついに“本体”が動き出したんだけど☆
「これ……さっきのより、ずっと“重い”よ……」
空気が違う。
地面の下から、ドクンと響くような魔力の脈動。
私は木の陰に身を隠しながら、その“気配”を見つめていた。
それは突然だった。
森の奥、昨日と同じエリアで、地面がわずかに振動を始めた。
「ナリ、リシャ! なにか来る、気をつけて!」
風が一瞬止まり、音もなく大地が裂ける。
そこから——
「……なにあれ、デカっ……」
金属のような鈍い光沢。
高さは軽く5メートルはありそう。
魔導封陣の中心から、ゴゴゴ……と姿を現したのは、
明らかに“量産型”과는 다른、
**《魔導兵器・中型個体》**——コードネーム《バインダー》。
「うーわ、ちょっと待って!? 完全にボス級じゃん!」
私は背後のふたりに手を振って叫ぶ。
「ナリ、リシャ! 攻撃しないで! 一旦こっちに!」
敵はまだ完全にこちらを把握していない。
でも、視界の動きから察するに、スキャン中。
——が、私と目が合った。
「……うん、やっぱりダメか☆」
その瞬間、空気が震えた。
《バインダー》の腹部から、強烈な閃光がほとばしる。
「来るよっ!!」
私はリシャとナリを片手で抱え、瞬間移動で後方へ。
次の瞬間、もとの場所は、眩い光と轟音に包まれた。
「ひぃ〜〜〜、えぐい火力ぅぅ!」
木々が薙ぎ倒され、煙が舞う中。
私はぴたりと着地し、そっと言った。
「ナリ、リシャ。今回は逃げない。
正面から、一発お見舞いしてやる」
「了解です、ルネア様」
「補助魔法、展開します!」
私は深く息を吸って、視線をまっすぐ前方へ。
「じゃ、ちょっとだけ“怖がらせて”あげよっか」
瞬間、空気が一変した。
私の視線が、《バインダー》と交差する。
ズンッ!
圧、発動。
相手の動きが一瞬止まり、機体の外装に微細なひびが走った。
「いい子だね〜……でも、まだ終わらないよ?」
次の瞬間、私は“横”へと跳ぶ。
再出現した位置は、敵の背後。
「バイバイ☆」
右手を突き出し、風の圧縮弾を放つ。
爆風とともに、《バインダー》の左脚部が吹き飛ぶ。
「よし、崩れた! 今のうち!」
ナリとリシャも一斉に援護魔法を展開。
相手はぐらりとバランスを崩しながらも、まだ倒れない。
私はもう一度視線を合わせ、静かに告げた。
「じゃ、ラスト一発——“目を閉じてくれるかな?”」
ギィィィ……ンッッ!!
《バインダー》のセンサーが、キィンと異音を放ちながら完全停止。
そのまま、崩れるように地面へ沈んでいった。
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煙の中、残されたのは巨大な魔導コアの残骸。
でも、なんか……嫌な予感。
これ、本当に“本体”じゃなかったらどうするの?
倒したけど……なんか、スッキリしない。
視線の主は、あれじゃなかった気がする。
まだ、この森の奥に——“何か”いる。
明日は、もう一歩、深く入ってみようかな。
もちろん、気楽に☆




