第三十四話:再調査、開始!森の奥に何かいるってマジ!?☆
「じゃ、行こっか。今日のメインディッシュは“偵察”です♪」
朝のソルナ村は、いつもと変わらず平和だった。
でも、私たちの気持ちは少しピリついてた。
昨日のあの感じ……ぜったい、偶然じゃない。
リシャとナリ、そして私の3人で再び森の奥へ。
目的は、昨日反応があった魔力の異常区域。
「……ここだよね、例のポイント」
「はい、周囲の魔素濃度が不安定です」
「風の流れも妙に淀んでます。これは……何かありますね」
私はそっと足元を確認しながら、空気に集中した。
風が、ささやいてる。
「……あれ? 地面、やたら踏み固められてない?」
そこには、直径3メートルほどの円形跡。
しかも、その中心にだけ奇妙な“紋様”が。
「これ……魔導封陣の痕跡だね。完全に消えてない」
ナリが魔力探知の結晶をかざすと、ぼんやりと光が反応した。
「反応、あります! でも……深い。これ、地下に何かあるかも……」
「いやーん、地中から何か出てくる系!? それってホラーじゃん!」
私がわざとオーバーに騒いで見せると、リシャが呆れ顔で肩をすくめた。
「ルネア様、怖いときほど元気ですね」
「でしょ? こういうときこそテンション大事☆」
と、そこへ——
ザワ……。
森の奥から、風と一緒に“視線”が流れてきた。
「誰か、いる」
私はすぐさま視線の先に注意を向けた。
けれど、見えるのは揺れる木々と光の反射だけ。
それでも、確かにいた。
「……見てる。昨日と、同じ“感じ”」
その瞬間、リシャが叫ぶ。
「上ですッ!」
私は反射的に跳び下がり、視線を空へ向けた。
風を切って、影が滑空する。
だが、正体は見えない。
「なにあれ、透明!? え、ずるくない!?」
私は即座に風を操って、木々を逆巻かせた。
その中で、一瞬だけ“空間が歪んだ”ように見えた。
「いたっ……! リシャ、ナリ、引いて!」
私は瞬間移動で影の背後へ跳ぶ。
視線、固定。
ビシッ——ッ!!
圧、発動。
その“何か”は、一瞬動きを止め、空中でぐるりとバランスを崩した。
仮面のようなパーツが、光に反射して浮かび上がる。
「また……同じタイプ?」
そのとき、相手は空中で姿勢を立て直し、シュッと森の奥へ逃げていった。
「くぅ〜! あとちょっとだったのにっ!」
私は一度深呼吸しながら、ゆっくり着地する。
「うん、もう確定だね。
この森、完っっ全に“見張られてる”」
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地面に残った痕跡は、さっきと同じ“魔導封陣”の紋様。
でも今回は、より鮮明で、より深く刻まれていた。
「ねぇ、ナリ……これって、増えてない?」
「……はい。数も、構成も、変化しています」
「マジかー……いよいよ、“本体”が動く前兆かもね」
また逃がしちゃったけど、確信は得た。
“誰か”が、この森に何かを仕掛けてる。
次はきっと——正面から来る。
そのときこそ、私も……ちょっとだけ本気、出すかも☆




