第17話:ピクニック中に魔導兵?うん、怒ったよ?
だってさ、ジャムパン大事じゃん!?
次回、「なんか視線が多い……え?監視って何それ☆」でお会いしましょ〜♪
草原にシートを敷いて、ルネアたちはお昼を楽しんでいた。
サンドイッチ、果物、そしてルネア特製のジャムパン。
「これぞ、精霊の優雅な昼下がり〜☆」
モフがごろごろ転がり、ナリは警戒気味に辺りを見回す。
「……ルネア様、あれを」
ナリの指差す先、風に揺れる草むらから、
フードをかぶった人影がひとり、音もなく現れた。
「またかぁ……でも今日は、モフの分までパン用意してたのに」
「状況がそれどころじゃないんですが!?」
フードの人物が手をかざすと、周囲の草木がざわりと震えた。
「……マナ干渉、強めですね」
「つまり?」
「真正面からの挑発です」
ルネアはため息をひとつつきながら、立ち上がる。
「まったく〜……ピクニック中に戦闘とか、空気読めてないよね〜」
「貴様が“伝説級”か」
「そうだけど〜、今は“昼食級”だよ?」
その軽口に相手は動揺も見せず、手の中に魔導刃を作り出す。
「逃げろ!」
ナリが叫んだ瞬間、相手の身体が疾風のようにルネアへと突進した。
が、
「はい、そこストップ☆」
ルネアの目がすっと細められた次の瞬間、
突っ込んできた影がその場で硬直。
「な、なぜ……動け……っ」
「ねぇ……ジャムパン、落ちたんだけど?」
ルネアの笑顔から、ほんの少しだけ圧が滲んだ。
「ま、今回は“ちょっとだけ”痛い目みてもらうからね☆」
次の瞬間、風も鳴らさず相手が吹き飛ばされる。
地面に倒れた相手は、呼吸だけは辛うじてしていたが、
その瞳にははっきりと恐怖の色が浮かんでいた。
ナリが駆け寄り、魔導鎖で敵の動きを封じる。
「……反応速度、あの方でも回避不能でした。つまり……」
「うん、私の“本気”じゃないけど、“怒ったルネア”はそれなりに怖いってこと☆」
モフがぽそっと呟いた。
「おねーちゃん、ほんとに怒ったらあかんやつ〜」
ルネアはその場に座り直し、パン屑を丁寧に払った。
「ふぅ〜、気を取り直して、お昼の続きしよっか☆」
その笑顔の裏で、ナリはふと空を見上げる。
(……これを見ている者が、また記録をつけるのだろう)
「モフ、まだパン残ってる?」
「うん、でもさ……おねーちゃん、さっきの人、なんか普通じゃなかったよ?」
「たしかに。魔力の波動がちょっとだけ……機械っぽかった気がするんだよね〜」
「それ、つまり……?」
「次に来るの、もしかして“人間”じゃないかもね☆」
ナリの眉がぴくりと動いた。
「……では、早急に本部へ報告を」
ルネアは空を見ながら、パンをもう一口。
「ま、でも今はジャムパンのほうが大事〜♪」
その空の彼方に、ひとつの目が静かに輝いていた。
何が来ても、どうせみんな大したことない。
でも、次はどんな“遊び相手”が来るのかな〜?
楽しみにしてるよ、誰かさん☆




