第十五話:え、私を狙ったの?残念、反射で回避した☆
遺跡(らしき場所)から戻って数日。
のんびりした日々が続く中、ロボくんの様子がまた変だった。
ソワソワと落ち着かず、村の空気もどこかざわついている。
今日は、何かが起きそうな、そんな気がしていた。
「ルネア様……ロボくんの動き、明らかに通常と異なります」
「うーん……確かに今日はプリン要求もしてこないし、妙に真面目だよね」
ナリと並んでロボくんを観察していたそのとき、
ロボくんが突然ぴこぴこと跳ね、地面をスキャンし始めた。
「感知……反応アリ。魔力信号、外部由来。距離およそ二百五十メートル」
「え、外部? ってことは……誰か来てるってこと?」
「あるいは、“何か”です」
ナリの言葉に、私は肩をすくめた。
「まぁ、来るなら来いって感じだし。面倒なら、まとめて片付けるよ~」
「ルネア様、軽すぎです……」
そして、静かだった森の方角から、突然——
ズンッッ……!
鈍い振動が足元を揺らした。
村の子どもたちが遠くで「地震!?」と叫ぶ声が聞こえたけど、私はそちらには目もくれず、森のほうを見つめた。
ロボくんが光を発し、警告を告げる。
「高エネルギー体、接近中。識別不能。マギア反応、戦闘モードへ移行中」
「識別不能って……また未知のやつかぁ」
私は歩み出ながら、小さく息をついた。
「リシャ、ナリ、後ろ下がって」
「ルネア様、単独での接触は——」
「大丈夫だってば。たぶん……いや、きっといける☆」
木々の間から現れたのは、金属質の異形。
脚が三本、胴体には回転する球体、目のような赤い光がこちらを睨んでいた。
「……かわいくないタイプの敵、きたね」
「敵性個体、確認。優先排除対象、設定:ルネア」
「はーい、わたし、また目立っちゃった?」
機体の装甲が開き、魔力弾の形成が始まる。
けれど、その弾が放たれるより早く、私は前に出た。
「——遅いよ」
音もなく、私は機体の側面に回り込み、
指先で軽く“コツン”と触れた。
その瞬間、内部構造が崩れたように、金属の身体がガクンと沈み、爆発することなく崩れ落ちた。
「処理、完了」
「……ルネア様、今の、どうやって……」
「ちょっと力抜いて押しただけ~☆」
「そんな一瞬で……魔力もほとんど感じなかったのに……」
ナリとリシャの呆然とした表情がなんとも気持ちよくて、私はウインクを一つ。
「ふふん、これでもまだ本気じゃないけどね?」
ロボくんがカタカタと近づき、解析結果を読み上げる。
「この個体は旧型マギアタイプ。自律行動可能。遠隔指令痕跡あり」
「つまり、誰かがこれを送り込んできたってこと?」
「その可能性が高いです。内部データには“収集対象:精霊”との記録」
「……ふーん、やっぱり狙われてる感じ?」
私は肩を回して、軽く首を傾けた。
「やれやれ……ま、そんなに気になるなら、もう少し真面目に遊んであげようかな♪」
ナリが不安げにこちらを見る。
「ルネア様……本当に、大丈夫なんですか?」
「大丈夫。だって私、伝説級の精霊だもん☆」
またひとつ、よく分からない敵を倒しちゃった。
だけど、これってもしかして……まだ序章?
ま、次も来るなら、また遊んであげるよ☆
それがどんなにやばいやつでもね。




