第十話:本部が動いた日。精霊の真実に迫る——?
のんびりお風呂掃除のはずが……まさか“あの人”が現れるなんて〜!?
「よーし、今日もぴっかぴかにするぞ〜!」
私は袖をまくって、桶とタワシを手に温泉へと向かっていた。
森の中にあるこの温泉は、村の人たちにも大人気。
だからこそ、しっかりお掃除しておかないとね!
「ふんふんふ〜ん♪」
鼻歌交じりで浴槽のふちをゴシゴシこすっていると——
「……ルネア様、また“そういう格好”で作業されて……!」
ナリが後ろから飛んできて、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「え? タオル巻き? だって濡れるじゃーん」
「そ、それは分かりますけど、もうちょっと布面積というか、慎みというか……!」
「いいじゃん、この村みんなゆるいし〜」
もふが石の上からぴょこんと顔を出す。
「おねーちゃん、ちょっとセクシーかも〜」
「へへん☆ サービスだよ、サービス!」
そんな他愛もないやり取りをしていた、その時だった。
——ガサッ。
「……?」
浴場の入り口の茂みが、ほんのわずかに揺れた。
「ん? 動物かな?」
私は魔力を少し込めて、周囲に探知の波を流してみる。
「……あれ、誰かいる?」
数秒後、湯気の向こうに黒い影が現れた。
「——“精霊”の風呂場に、これほどの設備とはな」
静かに現れたのは、あの黒ローブの男。
「うわぁ!? 覗き!? 変質者〜〜!?」
「違う。任務中だ」
「は、は、はぁ!? お風呂で任務!? おかしいでしょ!?」
私はとっさに桶を構えた。超音速で投げれば、相当効くはず。
ナリは顔を真っ青にして叫んだ。
「ま、まってくださいルネア様! この人、精霊本部の観察隊長“ナハト”です!!」
「え、ほんと?」
「はい、本物です。私の上司です」
「うわ、マジか。桶投げるとこだった〜」
私はゆっくりとタオルをもう一枚肩にかけながら、警戒を解いた。
……というか、なんで今来るの? タイミング悪くない!?
ナハトは平然としたまま、言葉を続けた。
「君の行動は、本部に大きな影響を与えている。“技術的影響”が特に顕著だ」
「……つまり、私がヤバいってこと?」
「正確には、“君の技術がどこから来たのか”を明らかにする必要がある。協力してもらう」
「うーん……話し合いは服を着てからにしよっか☆」
私はにっこりと笑い、湯気の向こうでナリが絶望的な顔をしていた。
「はあああああ〜〜……なんでこんな、よりによってこのタイミングなんですかぁあ……!」
急展開すぎ!? まさかお風呂で観察隊長に会うなんて聞いてないよ!?
次回は……着替えてからお送りしますっ☆




