第1話:え、死んで転生?しかも精霊で無能力!?……なのに瞬間移動できちゃう私って!?
朝起きたら……木の上だった。
ふわふわの羽もないし、魔力もゼロ? これ、もしかして異世界転生ってやつ!?
いやいや、冗談でしょ……と思ったら、モンスターに睨まれてますけど!?!?
私の名前は……えーっと、たしか“ルネア”?
いや、前世ではサラリーマンやってた普通の男だったんだけど……?
「……うわ、声高っ!? っていうか、身体軽っ!」
目を覚ました瞬間、自分の声と身体にびっくり。
ふわふわの白銀の髪、肌は透けるほど白くて、鏡もないのに“自分がやばいくらい綺麗”ってわかる。
「なにこれ、美少女転生!?いや違う……性別、どっちでもない感じ?」
周囲は森。風が心地よくて、鳥の声も……なんか、やたらクリアに聞こえる。
「うわ……耳が良くなってる!? しかも、地面の下の虫の音まで聞こえるんだけど!?」
完全に“普通じゃない”。これはもう、認めざるを得ない。
「……私、異世界転生してるわ」
そう納得しかけたその時、背後から“ゴゴゴ……”という重たい地響きが。
振り返ると、そこには二足歩行の魔獣。
熊? トカゲ? いや、どっちにも似てない。
目を光らせながら、こっちを睨んでくる。
「ちょ、まって!? 初対面でその距離感、おかしくない!?」
本能が叫ぶ。逃げなきゃ。
でも、どうやって? 飛べないし、魔法もわからない。
「こ、こういう時こそ……ステータス確認っ!!」
何も起こらない。画面も出ない。音もない。
「うそ、チュートリアルもなし!? 難易度ハードすぎない!?」
パニックになりかけた瞬間。
──ズンッ!
魔獣が地面を踏み鳴らし、こちらへ大きく一歩。
(まずい……次で来る!)
だが、その瞬間。
魔獣の目と、私の目が──合った。
──ピタリ。
魔獣が硬直する。
そのまま、ブルブルと震え、
──バタンッ!!
と、大の字で気絶。
「え? え? 私、なんかした……!?」
戸惑っていると、頭の中に声が響いた。
《転生者認定:精霊体》
《固有能力──『瞬間転位』および『視圧干渉』、発現済み》
「な、なにその中二ワード!? でもちょっとカッコいい!!」
視圧干渉──って、つまり“目を合わせただけで相手が怯む”ってこと?
しかも瞬間移動!?
「いやいや……逆に怖くなってきたんだけど!?」
とりあえず、その場から離れようと森を歩く。
足取りは軽い。浮いてるみたい。
けど、まだ不安は拭えない。
「……なんで私、“精霊”になったんだろう」
その時だった。
木の陰から、小さなモフモフした何かが顔を出した。
「……え? きみ、もしかして喋れる?」
「うん。おねーちゃん、やっぱり精霊だったんだね」
「おねー……いや、ちが、性別フリーなんだけど!?」
モフはくすっと笑い、私の肩にぴょんっと乗った。
「ぼく、ナビするね。こっちの世界のこと、全部教えるよ」
「ナビキャラ!? ついに来た!!」
そして私の、“伝説級精霊ライフ”が始まった。
……たぶん、ゆるく楽しく生きていけるはず!
いや〜、初回からけっこう濃かったね!
モンスター気絶させて、ナビキャラ登場して……これ、のんびりライフって言える?
次回、「精霊のくせに歩いて登校!?異世界ライフ、ちょっと面倒スタート☆」でまたね!




