乙女ゲームの世界の攻略対象の私が【鑑定スキル】を取得してしまったらなんだか悪役令嬢が可愛く見えてきた件
なんかぶっとんでいる話書きたくなったのです ワハハのハ!!!
ホップステップジャンプ王国の次期国王とされている私だが、ひょんなことから【鑑定】スキルがつかえるようになってしまった。
さてお話は2日前までさかのぼることになる。王立図書館(宮殿の中)で大魔法使いの忘れ物と思わしき魔導書を見つけた私だが、珍しくも時間があいていたので妙に気になって中身を読んでしまった。
なかなかに難解な内容だったものの、どうやら適正があるものがこの方法を使えば【鑑定】が使えるらしい。
方法というのはこの魔導書を最後まで読み本を燃やした後、右目、左目、もう一度右目でウインクをするだけだそうだ。
早速ものは試しというわけで、魔導書をその場で墨も残さず【地獄の業火】で処分して、近くの棚の前に飾られている壷を【鑑定】した。
<<ホップステップジャンプ王国創立から伝わる威厳のある壷。歴史に名が残らない巨匠の作品。名前はまだない。あるとすれば・・・。君が決めてね☆>>
だそうだ・・・。物凄い精度である。
これは。。。お昼下がり王族の義務で婚約したあのご令嬢へ【鑑定】してみても良いのではないか。どうしようすごく楽しみになってきた。このように心が浮ついたのはいつぶりだろうか。すぐにでもしたかったが。好奇心を抑え、応接間で一時間前から彼女を待ち続けた。
*****
「殿下、このような尊いお時間を頂戴し、誠にありがとうございます。お目通りを賜り、大変恐縮に存じます。」
貴婦人のようなお愛想笑いで挨拶をしてきた。
「殿下? どうなさいましたか?」
「な、なんということだ・・・。」
彼女クロチェッタ嬢は確かに唯一無二の個性的な髪形をしている。だがまさかここまでとは。
<<悪役令嬢 装備麗しの髪LV1,000 オリハルコンより強いよ最強だよ☆ちなみに本人は死んでも知られたくない情報だよ☆☆>>
ドリルレベルだとおおお? なんだそれは。私は今まで必死に魔法も座学も習得してきた。だがそんな私でさえ、ドリルレベルなぞ知らぬ。
ついお茶を吹き出しそうになったが、王族の威厳でなんとかこらえた。
「実はクロチェッタ嬢。。。君の秘密を知ってしまったのだが。話を聞かせて貰っても良いだろうか。」
「私に応えるれるものでしたらなんなりと。」
怪訝そうな顔をしてそう答えた。
「麗しの髪LV1,000とはいったいどういう意味なのだろうか。私の情報だと君は闇属性だということだが。」
「・・・。」
ふ。だんまりか。ちなみに凄腕の伝説級の武器職人がなんかすごい技術で作り出した、とってもスーパーなURなミラクル神の武器のレベルが999である。
クロチェッタ嬢の麗しの金髪はその武器より硬く、そして強い。きっと風で流されるとブオンッて擬音が聞こえてくるに違いない。
「あ、あの……。殿下。なんでもしますから。どうか誰にも言わないでください。」
もじもじと可愛くお願いされてしまった。滑らかな美肌の美少女がうつむいてそのアメジストのような淡い紫色の瞳にいっぱい涙を浮かべ上目遣いで、だ。
なんでもしますから
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”。
その時私の心臓は確かに止まってしまっていた。享年18歳。大往生であった。
だがしかし! そこはご都合主義というかさすがは攻略対象みたいなひとって感じで。
前世社畜だった私は致命傷を負ったものの、一命をとりためた。
社畜スキル発動【忍耐】*致命傷をおった場合自身の髪の毛一本を犠牲にして生き返ることができる。
確かに私はチートスキルを持っていた。だがそれがどんな意味がある? 王太子として約束された安定の日々。将来はこの国のトップ。
全部投げ出して逃げたいと何度だって思った。だが、物語の強制力というかそんなものが働いたのか、現国王は尊敬ができる方で王妃は慈愛に満ち溢れた真の国母・・・!!!
この国は素晴らしい。だから見捨てるという選択肢がそもそもなかった。
そんな己のプライドも夢も捨ててでも守りたかったこの国・・・。これから来るであろう尻軽ヒロインに国母を将来任せられるだろうか? 無理である。おれは知っている。妹からいろいろ話だけは聞いていたのでな。
そしてこんなことも知っている。おれのことをそれなりには大事に思っていた彼女は、ヒロインがおれに近づいていたのに嫉妬にかられるものの寂しい想いをしながら王妃教育を長年し続けてくれていたこと。
婚約破棄をされ、一人寂しく涙を流し、誰に聞かれるでもなく。”殿下のことお慕いしておりました”と 呟くこともさえもだ。
こんな良い娘他にいる? いや婚約者がおれなんてもったいなさすぎるほどの心優しい女性である。
いつもなんか無表情で怖く見えるから誤解されやすいそんな彼女だが、誰よりも素敵で美しい乙女なのである!!!
クッ・・・。なにをためらうことがある。なんでもして良いらしい。ほうほう。
女の子がそんなこと言っちゃいけません!まったくこの婚約者さまのご両親はなにを教えてくれていたのだろうか。いや・・・。今さら考えるまでもないな。
公爵家夫人は穏やかな人でのびのびとした子育てをしているようだったし。何回も訪問させられて自分の目で得た情報だからこれは確かだ。公爵ご本人は仕事人間で寡黙で背中で語るタイブを本人はしているつもりのようにみえたが、愛娘を見つめる瞳が優しいことこの上なかった。
つまり溺愛されて蝶よ花よとこのご令嬢とその御髪はすくすくと育ったのであった。本音を言えばこんなにもまっすぐで可憐なご令嬢を婚約破棄するやつなんて3回は地獄に落ちてしまえって思うし、何より私がそんなことをするわけにはいかない。
「クロチェッタ嬢。いつも気持ちを伝えられなくてごめん。私はそなたを愛しているのだ。だから、どうか私の側にずっといて欲しい。」
そう言ってあげるとこの状況どうにかなるのではないだろうか。彼女の手を優しく包み込んだ。
真っ赤な顔して刻々うなずいてくれたクロチェッタ嬢。
おれはドリルに気を付けながらそっと彼女を抱き寄せた。その日私たちはそのまま結ばれた。
*****
それから3年・・・。あのとき婚前交渉してしまった私たちは翌日こってり絞られた。若気の至りというやつだ。そろそろ時効だと思うのだが、いまだに公爵はその話を持ち出して娘を実家に連れ帰ろうとし、クロチェッタ嬢に怒られている。本音と現実をいうと王妃になる娘が実家に帰るなんて国が傾く大騒ぎになるからやめて欲しい。
お父さまなんてもう嫌いよ! と言われたときの顔があまりにもかわいそうだったので今となってはもう公爵彼を責める気にはなれない。王太子としての仕事がようやく評価され、子宝にも恵まれて彼女のような玉のように可愛らしいお姫様が誕生した。
「あなた。りっぱな王になってくださいね。私も精いっぱい支えさせて頂きますわ。」
「ああ。この国を。そしてクロチェッタあなたをなにがあっても守る。守らせてくれ。この世界のだれよりもクロチェッタのことを愛しているよ。」
「私もお慕いしております」
コクリとうなずきドリルがドルるるるんとうなっていた。
ちなみにおれと彼女以外のことだとおれの前世の妹がヒロインに転生してクロチェッタのご学友として仲良くなり、そのまま彼女の補佐官として就職していたり、前世の知識チートが使えないものの、クロチェッタを抱きしめているとき、電動ドリルを突然思い出し、この国の道路の整地に役立てたりして、インフラが圧倒的に飛躍し国力がぐぐーんと成長したりした。(おれが王として認められるきっかけとなった政策の数々。)
感の良いおれはみんな(現場の末端の国民にまで)クロチェッタの目に電動ドリルが目に入って傷つかないように頭を下げてまわった。
そうすると誰もが言うのだ。滅相もございません。私たちは彼女に命を救われたのです、と。それにこの話をはとても有名で知らないひとはこの国にはおりません殿下。あの時あなたは一度ぼろをだしてこうおっしゃったじゃありませんか。
「魔獣よ。命が惜しくはないのか。まったくお前ごときが敵うわけがないだろう。世界最強のドリルが来るぞ」と。
なぜそれをとか思う前におれは彼女が国民に大事にそして慕われてるのが嬉しかった。だからこそ・・・。おれは彼女の麗しき御髪ごと全部が好きなのである。
今朝も髪にキスをしたら真っ赤になって(何回やっても同じ反応で可愛い)も、もうなんて言っていた彼女。そろそろ公務が終わるので迎えにいこうと思う。
王宮の通路2階西側でクロチェッタの気配がした。
読んでくれてありがとう♪