3話 家族との特別な日になるはずだった…
そして学校が終わって帰るとリビングで両親が待っていた。
「ただいま。今からご飯だよね?」
「ああ、だから早く着替えて行くぞ」
いつも何かの記念日や祝い事の時には外食をするというのが恒例になっている。そして今日は寿司屋に行くらしい。
前に入学式の日に何が食べたいか聞かれており、正直なんでも食べれたら良いのだがなんでもいいと言うと素っ気なく聞こえてしまうため、一応寿司を食べたいとだけ言っていたのだ。
そうして来た寿司屋の雰囲気は落ち着いていて高級そうなところだった。
いわゆる回らない寿司屋と呼ばれるようなところであまり来ることが無いようなところなのでなんでもいいと思ってはいたものの実際は少し楽しみになっているのだ。
そんなことを思って寿司を注文していると次の瞬間ドアがガラッと開き、そこに目を向けると驚くべき人物がいた。
「おっ!一色一家!」
そこにはなんと俺と同じく入学祝いで来たのであろう陽葵とその両親がいた。
「 おや、一色さん方じゃないですか。もし良ければご一緒しませんか?」
と話しかけてきたのは陽葵のお父さんで大きめの体で少しゆったりした性格だ。対照にお母さんはとにかくよく喋る陽のオーラをまとった人だ。
「ほら、こっちこっち」
「こんな偶然あるんだな」
「ねっ!あっ、何これ!?聞いた事ない名前の寿司だ!これ1つ!」
と子供の様にはしゃぐ陽葵を見て微笑ましくなった。
「よくそんな元気でいられるよな」
「違うよ、秀斗が静かすぎるんだよ。昨日だって私以外の人と話してないでしょ?」
「静かなのは否定出来ないがお前がうるさすぎるだけなんだよ!」
「私がうるさい!?よくもそんなことを!うりゃ〜」
「ぎゃっ、やめろ〜!」
「男の癖にどんな声出してるの?(w)」
「お前がくすぐってくるからだろ!」
そんな会話を横で聞いてる双方の両親は仲がいいね〜とでも言いたそうに見つめてくる。
「はぁ、絶対こんなところでやったら迷惑だろ」
「確かにそっか、ごめんごめん」
「で、話を戻すけどほんとに静かなのが悪いとは言わないけどもっとコミュニケーションは取らないとダメだよ?後々困るのは自分なんだから。」
「うっせ、今の流行りはクールな男なんだよ」
「えー、秀斗はクールって感じの人じゃないでしょー。前まではもっと元気な子だったのに〜」
そう、俺は中学の途中まではそれなりに活発に喋っていた。少なくとも陰キャとは呼ばれないような性格をしていたのだ。あの出来事があるまでは……。
「別に話そうとしてないだけで話せるから大丈夫なんだよ」
「そんなこと言って自己紹介では……」
「おい、それ以上言うな。傷口をえぐるな!」
「ん〜〜、ん〜〜〜〜!!ぷはっっ、なにをするんだ!」
口を押さえて話を中断するとぷんぷん怒ってきた。見事にさっきの仕返しを出来たため満足だ。
そうしてその後寿司が来たため食べ始め最後まで話が止まることなく楽しい時間がすぎた。
「は〜〜、いっぱい食べた〜」
「思った以上に美味かったな」
「それにいっぱい話せたし楽しかった!」
「そうか、それは良かったな」
「え〜、秀斗は楽しくなかったの?」
「いや、楽しいと言えば楽しかったけど別に話すくらいいつでも出来るしな」
「もー、すぐそういうこと言う!」
「いや、だって家隣だし話したければすぐ来れるだろ」
「え!?それはいつでも秀斗の家に行ってもいいってこと?」
「許可取らなくても割と勝手に部屋に入ってきてないか?」
「ん?いつも秀斗のお母さんから許可を得てるけど…。」
は?じゃあもしかして今まで知らない内に部屋に上がってたのって……。
「お母さん何してくれてんの!?いつも勝手にいると思ったら俺の知らない所で許可が出てたのかよ!」
流石に良くないだろと思いお母さんにそう言った。
「まあまあ、そう熱くならないで。過ぎたことは仕方ないじゃない」
「仕方ないじゃない…じゃねーわ!お母さんはもう少し反省をしてくれ!」
まったく、何を考えているのやら。
「まあ、最後に秀斗の面白い所を見れたところで家に着いたし、また明日!」
「よくも勝手に締めくくってくれたな、まあちょうど家に着いたし、じゃあな。また明日」
そうして家に帰るとすぐにお風呂に入って、上がるとすぐにベッドへ向かい、今日あった出来事を思い出している内に眠りに落ちた。