2話 高校生活最初の壁
入学式が終わり1年生は自分の教室へ移動させられた。
（俺の席は窓際の1番後ろか）
自分の苗字に感謝をしながらその席へ歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「秀斗！」
呼ばれた俺は振り返るとそこには幼馴染の陽葵がいた。
「もうっ、置いていくなんて酷いよ〜」
「お前はスピーチあったんだから別の場所にいただろーが」
そう言って頭に軽くチョップをしたら「痛〜」と大袈裟に頭を抱える陽葵に苦笑した。
「周りに喋れる人いないし1年生も私だけだったし頑張った方だと思うんだけどな〜」
「まあ、1人は寂しかったですね〜よしよし」
「頭撫でんな！子供扱いするなっ！」
そういい俺はまたも苦笑した。
そんな様子をクラスメイトは見ていた。
「入学初日からめっちゃイチャつくじゃんw」、「あの二人付き合ってんの？女子の方は可愛いけど男の方は……」など様々な声が聞こえたが実際は付き合っていない。
（確かに陽葵とこんな陰キャが話してたら目立つよな〜）
そう思ったのも束の間、ひとまず落ち着こうと席に着き隣を見るとそこには陽葵がいた。
「なんでお前がそこにいるんだよ」
「なんでと言われましてもここが私の席だし」
そうは言いつつも話せる人が近くにいて少し安心した。
そんなことをしていると担任の先生がドアをガラッと開けた。
「お前ら席に着け〜」
第一印象は若くてフレンドリーそうな先生という印象だ。
「今年1年このクラスを担任をする多谷拓人です。多谷先生と呼んでください。これからよろしくお願いします」
印象通り優しそうなではあるけど少し響くような声で話が始まった。
「じゃあまずは配り物をするけど終わったらまずは皆のことを知るために自己紹介をするから何話すか考えとけよ〜」
陰キャにはキツいことランキングトップ5には必ずと言っていいくらい入ってくる自己紹介に直面してしまった。
だがこんなこともあろうかと昨日の夜に1時間程考えたので大丈夫だと思い深呼吸した。
そして配り物が終わり先生の指示により出席番号順に自己紹介が始まった。
「私の名前は相川……」
そして始まった自己紹介だが皆のを聞く暇はなく、考えた自己紹介の言葉をしっかり話せるように頭の中で繰り返していた。
そう思っている内に陽葵の番が来た。
「私の名前は佐伯陽葵です。最近の趣味は可愛い猫の動画を見ることです。皆と楽しい学校生活を送るために仲良くしたいです！よろしくお願いします！」
と流暢に自己紹介をこなし周りからも好印象のようだ。この後の自己紹介はやりづらいな〜と思いつつ自分の番を待っていた。
そうしている内に自分の番が来たのでとりあえず席を立って自己紹介を始めた。
「一色秀斗と言います。1年間よろしくお願いします…」
そして自己紹介を終え、すぐに座り思った。
(完全にクラスのモブ的存在になるやつ〜！)
自己紹介前に色々考えてはいたが、いざ言おうと思うと自分の今までのキャラと違いすぎて恥ずかしくなり言うことを躊躇ってしまった。
「周りからもそれだけ？」というような目で見つめられ恥ずかしくなって目を外へ向けた。
すると視界に陽葵が入って来てクスクスと笑ってきた。
(こんにゃろっ)
内心ゲンコツの1発くらいかましてやろうかと思ったが皆がいるため、また目立つのはごめんだと思いとどまった。
そして様々な自己紹介が行われ自己紹介が終わったタイミングでちょうどチャイムが鳴った。
